Artifical Line Ⅰ

 

 

 

ゼロとナー。
二人の出会いは一年前で、まだお互いに施設でトレーニングを始めた頃だ。

ゼロが初歩中の初歩のLV.5のATACKトレーニングをしているとき、彼はかなりの高得点を叩き出した。
だが、自分の横で同じトレーニング内容をしていたレイヴンが自分よりも更に高いハイスコアを叩き出した女がいた。
翌日、ゼロは直ぐにそのハイスコアの内容を塗り替えた。
が、その次の日にはそのスコアが更なる高得点に摩り替わっていた。

それからである。

二人は常に競い合い、無意識の内に互いを好敵手と認め。
各種トレーニングではスコアを追い越し追い抜かれを幾度となく繰り返し。
アリーナでも同じくである。

型や、女で強化人間そして唯一つの機体構成のナー。
型や、男で真人間そして多種多様の機体を扱うゼロ。

見事なまでに正反対の二人。

もはや二人の出会いは偶然ではなく必然。

運命ではなく宿命。





カーテンの隙間から差し込む朝日が室内を明るく照らし、ベッドでシーツに包まっている裸体の女性がその朝日を浴び身動ぎする。

女性、ナーはもそもそと気だるげに体を起こし、暫し目を瞬かせる。
「ん~~」と体を伸ばし彼女は眠気を覚ます。
と、誰かの気配を感じて彼女はそちらに目を向ける。

「起きたか」

そこにはトランクスだけを穿き、髪の水気をタオルで拭っているゼロがいた。

「ん」

ナーは眠たげに静かに頷く。
ゼロは彼女のそんな姿に苦笑を浮かべながら冷蔵庫を開け中からミネラルウォーターのペットボトルをを取り出し口に含む。

「……今何時だ」

ゼロがペットボトルを半分以上を一息に飲み口を離したとき、漸くナーは口を開く。

「8時前。正確には7時57分だ」
「…ぁりがとう……」

彼女の頭はまだ眠そうに揺れている。
ゼロはそんな彼女に近づき、飲み干したペットボトルでナーの頭を軽く小突く。

「ほら、眠いなら熱いシャワーか冷たいシャワーを浴びて来い」
「んぅ~~」

ゼロのその言葉にナーはふらふらと立ち上がり、その芸術とも取れるほどのプロポーションを誇る裸体を朝日に惜しげもなく晒しながらペタペタと足音を立てながらバスルームに向かう。

ゼロはそんなナーの姿に再び苦笑する。

それから二人は試合に響かないようにゼリーやヨーグルトなどの軽めの朝食を取り、それぞれのガレージに向かう。






そして午前11時。

アリーナドーム内には多くの人がごった返している。
各所では席の取り合いが起こり乱闘騒ぎが頻発する。その度に警備員が右往左往とする。
VIP席も満員御礼と席が埋まっている。
各レイヴン達や関係者用の特待席もこの日ばかりは全席埋まっている。
オッズもうなぎ上りである。

『あ~テステス~マイクテストォ~~。
 ―――――コホン。よーし! お前等、朝早くからオハヨウ!! そしてご苦労なこっただな!! 取り敢えずコレだけは言っとく! 許可も無しに施設内で寝泊りスンナッ!! 警備員共がキレてたぞ。違法滞在者が200人以上も居るってどうよ!? まぁ、そんだけテメェ等が今日の試合を待ち望んでたんだろう。分かる。オレも分かるZE! だってオレも待ち望んでたモン! 前回はひっじょ~~うに残念な結末だったが、今回はそうはならないから安心しな!! 今回はちゃんと運営側も選手とお客様方の為に典型的な屋内アリーナ会場を用意しといたッ!! さぁ、そんじゃッ! 選手の入場と行こうかッ!!!』

いつもの司会のカーニバルメイカーの実況により会場の熱気は加速度的にヒートアップしていく。

『赤コ~ナ~~、ッ!? サーセン!! ふざけたオレが悪かったって! だからスタッフの皆さん物投げんといてっ!』

そんな馬鹿なやり取りが繰り広げられる中アリーナの端の方の床が開き一機のACがリフトによって上がってくる。

『あ~~そんじゃ、今回は悪ふざけ無しの大真面目モードで行くぜ。まず、最初に現れたのはランク1の女帝、イツァム・ナー! 機体名はプロトエグゾス! 今回は本気モードらしく武装が若干変更されている模様!!』

司会の言葉が響く中、次にナーの真正面直線上側の床が開き新たなACが同じくリフトによって現れる。

『そしてお次はッ! 同じくランク1の熾天使、ゼロ! 機体名はブルーセラフ! こちらもマジモードのようだ!!』

今回の試合はお互いに本気でそれぞれ機体の特色が若干変わっている。
施設内各種のモニターにそれぞれの簡易プロフィールとACが表示される。



レイヴン:イツァム・ナー

機動力と瞬間火力の双方を備えた機体を駆るレイヴン。
機体性能だけではなく、彼女自身の潜在能力が強さを絶対的な物としている。
機体制御や捕捉、回避等全ての面で他のレイヴンを圧倒する。
エンブレムの「I don't know defeat. I don't know fall. therefore I'm No!」という文面からも彼女の絶対的な自信が伺える。

AC名:プロトエグゾス

頭部:YH08-MANTIS
コア:CR-C98E2
腕部:A07-LEMUR
脚部:LH09-COUGAR2
FCS:CR-F73H
ジェネレータ:CR-G91
ラジエータ:ANANDA
ブースタ:B05-GULL
両肩:WB31B-PEGASUS
右手:CR-WH79M2
左手:WH10M-SILKY
インサイド:CR-I78R2

フレームには手を加えず、両肩に補助ブースタを装備し更に機動力を上げることでより短期決戦仕様へとなった。
両手、インサイド、EOによる瞬間火力は馬鹿にならない。



レイヴン:ゼロ

柔軟な思考と驚異的な集中力を持ち常に最適な機体を構築するレイヴン。
特定のアセンブリを持ち入らないその多様さはACという兵器の可能性を見せ付けてくれる。
ある意味で尤もレイヴンらしくレイヴンらしくない。
その有り様は「イレギュラーの再来」と呼ばれあらゆる所から注目されている。

AC名:ブルーセラフ

頭部:H11-QUEEN
コア:CR-C84O/UL
腕部:CR-A92XS
脚部:CR-LH89F
FCS:MIROKU
ジェネレータ:CR-G91
ラジエータ:ANANDA
ブースタ:B04-BIRDIE2
右手:CR-WR93RL
左手:CR-WL88S2
エクステンション:JIREN
右格納:WH09H-WRAITH
左格納:WL14LB-ELF2

高機動タイプの中量二脚で、肩には何も装備せず両手と左右の格納のみの武装。
切り替えしと燃費が良いブースタに攻撃と回避の両立の為のOBタイプのコアで限定的なエリア戦闘を行う。



『二人とも準備は良いか!? それじゃッスリーカウント開始!』

両者の紹介が終わり。激突の時が進む。

『3!』

ブルーセラフ、プロトエグゾスの二機は機体の重心を落とし構える。

『2!』

ALL SYSTEM:GREEN
FCS...ALL WEAPON......LINK......CONECT.OK
BOOSTER:STANBY

『1!』

―――MAIN SYSTEM ENGAGE IS COMBAT MODE―――

『GOooooo!!!』

背中から巨大なフレアを撒き散らし飛び出す二つの鋼鉄の巨人。

ここは限られた者しか立ち入れない聖域。

王者達の限定的な舞踏会。

さぁ踊ろう。

その手を銃を互いに差し出そう。






後書き

act.4終了。

今回は前後編でお送りします。

いや、ホントは一本に纏めようとしましたがなんか切りがいいのでここで区切りました。

ちなみにact.0からact.4までのサブタイトル全てはACのBGM名です。

このAC LRCのサブタイトル全て(一部例外がありますが)はACのBGM名から引用するつもりです。

ちなみにプロトエグゾスのアセン変更はゲーム中ではありません。これはLRのフォックスアイ、オラクル、ファシネイターのラストミッション仕様と同じモンだと思ってください。

誤字脱字、感想等は掲示板にてお願いします。