Overture

 

 

 


ナーの試合の翌日、つまりはゼロの試合がある日である。

フィールドは砂漠で、外気温は高く熱関係に注意が必要である。

そしてゼロの対戦相手は、ランク2のウォーロード。AC名はゴライアス。
典型的なタンク型の重装甲高火力特化機体である。

『さぁ、オフィシャルマッチ二日目の第二試合は、女帝イツァム・ナーと同じランク1のゼロ! AC名はブルーセラフゥってぇッおいおい。何でお前の機体前回とまた違うんだよ! 前回の決勝じゃ中量二脚でその前は四脚だったろ! で今回は逆関かよっ! お前ホントにイレギュラーだなぁ!! んでだ、対するそんな変態野朗のお相手は、ランク2のウォーロード! AC名はゴライアス! ガチガチのタンク。略してガチタンだ! 間違ってもガチムチのタンクトップの兄貴じゃないからな!!』

そんな司会の男、カーニバルメイカーの紹介を聞きながらゼロは口を引きつらせ米神には青筋が浮かんでいる。
「アイツ、後で絶対殴る」

今回のゼロの機体構成
頭部:H02-WASP2
コア:RAKAN
腕部:A05-LANGUR
脚部:LR04-GAZELLE
ジェネレータ:クレストから提供された試作品のCR-G97 
ラジエータ:CR-R92
ブースタ:CR-B81
FCS:MONJU
EX:JIREN
左肩:WB34M-ECHIDNA2
右肩:WB27O-HARPY2
右手:CR-WR88G2
左手:CR-WL88S2

という構成で、正直ヴィジュアル面ではちょっと気持悪い。

そして試合開始の時間が来た。

『さぁ、時間だ。双方準備はOK!? じゃっ行くぞ!! レディイィ・ゴォーーッ!!!』





「さて―――行くか」

ゼロは逆関節特有のジャンプ性能の高さを使い、機体を跳ね上がらせる。
跳ね上がったゼロは左肩のコンテナミサイルを一発放ち、砂上に着地する。

一方、ウォーロードの方はOBを起動し距離を詰めようとする。だがそこにコンテナがゴライアスの頭上を飛び越えていき、その背後からコンテナのハッチが開き中から小型ミサイルがワラワラと飛び出す。

ウォーロードはOBを切り、通常推力で前進する。勿論背後からミサイルが襲い掛かるが彼は敢えてそれを無視する。
再びブルーセラフからコンテナが飛来する。更にパシュンッ! と空気が抜けるような音が響く。

ゼロは撃ち切ったコンテナをパージし、再びジャンプする。
そして跳ね上がったブルーセラフは今度はOBを起動。一気に加速する。
そのままゼロはゴライアスに接近中にエクステンションを起動しジェネレータを回復させ、右肩の兵器:オービットキャノンを複数発射する。
オービットキャノンはゴライアスの周囲に張り付き360度全方位からレーザーを吐き出す。

オービット系の武器は機動力の高い相手には効果が薄いが、タンクのような機動力が低い相手にとってはこれほどまでに厭らしい武器はない。

一発一発の威力はマシンガンやハンドガンのように大したことはないが、それを機体の周囲から淡々とチクチク攻められれば幾ら重圧な装甲だろうとダメージが蓄積されてしまう。

まさにゼロは意図してこの武器を装備しているのである。


基本的に各レイヴン達は、自機が満足いく形で構築されれば余程の事がない限り機体の構成を変えたりはしない。
ゼロのように機体を二脚や逆関節、タンク、四脚とコロコロ変えるのは一般的に見て異常なのだ。
幾ら汎用に構築した機体でも、特殊な状況下では満足に行かないしその逆も然り。
大抵のレイヴンは自分に合った仕事をするし、アリーナでも相性というのがやはりある。
そして大半のレイヴンが機体構成を変えない理由として、操縦時に変なクセが付かないようにするためと、やはりその機体への愛着というものである。

今回のゼロのこの機体構成も態々、対ゴライアス用に構築されたもので、牽制用のコンテナミサイル、対重量機用のオービットキャノン、そして主武装のグレネードライフル、補助用のショットガン、更に急接近・トップアタックの為のOBコア。と、まさに相手に対するアンチアセンである。

ゼロは、巧みに逆関節のジャンプ力とOBを多様しウォーロードを撹乱し、張り付く。

機動性、旋回性が低いタンクにとって尤も相性の悪い戦法だ。

ガシャン! という着地音が右から聞こえウォーロードは右手に持っているバズーカを向ける。

『ぐぅっ!!』

が、突如そのバズーカが爆発した。
その原因はブルーセラフの左手に握られたショットガンの所為である。至近距離からショットガンの八発の散弾が、バズーカに被弾し中の砲弾に火がついたのだ。またそれ以前にオービットのレーザーによってダメージが蓄積されたというのも理由にある。
右腕ごと持っていかれたウォーロードは、反撃しようと左手のグレネードライフルと左肩のプラズマキャノンを放つ。

が、既にそこにゼロは居ない。

『上か!?』

ウォーロードは咄嗟に上を向く。だが上を向いた直後、グレネードライフルの榴弾が飛んでくる。
更にオービットが機体周囲に飛んでくる。
「フィニッシュだ」
6つの子機から針のような極細のレーザーがゴライアスを突き刺していき、グレネードが装甲を焼き内部電装系にもダメージを与え、ショットガンの散弾が的確にゴライアスの各所を穿いて行く。

トップアタックからの強烈なラッシュによりゴライアスは頭部がグチャグチャになり、コアもベコベコに凹み所々装甲が焼け爛れている。残った左手ももはや形を成していない。脚部のホバータンクも随所から火花を散らしもはや動くことも儘成らない。

『うわぁ~お。ゴライアスが鉄屑だ……中の人大丈夫か?! まぁアリーナじゃ毎回、人死になんてよくある事だけどよぉ。流石にやり過ぎだぜ、これぇ。まっ! 何はともあれ勝者はランク1のゼロ!! さっすがは、当施設一のへんた―――ッてぇ、ちょ! ま、待って!? スマンかったって! オレが悪かったから実況席にグレネード撃たんでぇッ!!』

「はぁ……」

ゼロは実況席に向けていたブルーセラフの右手を下ろし、会場から去って行く。





機体をガレージに預け、シャワーも浴び、ゼロは空いた腹を満たすため施設にあるアーケードに向かう。

「エドは仕事でどっかに行ったし。ABYSSは迷子、まぁどっかぶらぶらしてんだろ。ミューズは何処かの企業との大層なレストランで歓談っと」

ちなみにゼロもそういったお誘いがあったが面倒臭いの一言でキャンセルした。

「さて、どするか。自炊するか、ファーストフードならGAバーガーかムラクモ屋で丼物。あぁ、そういや喫茶ZIOとインテリオルのサービスポイントが貯まってたな」

と、今晩の夕食を考えていたゼロだが、そのとき彼の耳に何かが聴こえた。
「ん?」

―――ぎゃああぁぁぁ!!―――

―――ひぃぃぃっ!!―――

「悲鳴?」

そう聴こえてきたのは複数の男達の悲鳴である。
取り合えずゼロは悲鳴が聴こえた方へ歩を向ける。

そして辿り着いた先には死屍累々と転ぶ男達の群れである。
そしてその倒れこみ苦痛に呻く男達の中央に立つ一人の女性、イツァム・ナー。
多分、勧誘かナンパだろうとゼロは思っていると、乾いた音、拳銃の発砲音が響く。
よく見ると彼女の右手には拳銃が握られている。それを最後の一人であろう男に向けて遠慮なく撃っている。まるで猫が鼠を嬲って楽しんでるかのように。

「ひいぃぃ!! 悪かったって、アンタを盗撮した俺等が悪かった! データ渡すから命だけは勘弁をおぉぉっ!!」

(あぁ、つまりこいつ等はナーを盗撮したのでその報復を今受けてるのか。阿呆が)

そしてナーは拳銃のマガジンを交換し懐に仕舞いながら失禁し尻餅を付いている男に優雅に歩み寄る。宛ら魔女が近づいてくるような気分だろう。
男に近づいたナーは足を上げ、それを一気に落とす。股間に。

「ひっぎゃああ゛ぁ゛ぁ゛ぁッッッーーーー!!!」

「うっわぁ……」

夜のアーケード街の裏路地に悲痛な声が響く。ゼロも無意識に股間を手で覆う。

股間を踏み砕かれた男は、もう形容するのが躊躇うくらいの惨状で一応幸運?なことに気絶している。
そしてナーはそんな男の懐を弄り極小のメモリーカードを取り出し、それを指でパキッと潰す。
彼女はそれで気が済んだのか、肩を下ろし一仕事を終えたと言った感じで軽く息を吐く。
ゼロはそのタイミングで声を掛ける。

「よう、随分とまぁ派手に殺ったな」
「ん? ゼロか。どうした?」
「いや、なにやら痛々しい声が聞こえたんでちょっとな」
「そう」

ゼロとナーは話しながら裏路地から出ていく。

「そういやお前メシは?」

ゼロの質問にナーは少し考え込むが直ぐに顔を上げる。

「まだだ。うん、そうだな。よし、ゼロ。何か食べに行こう」
「て、おい。引っ張んな!」

ナーはゼロの右手を掴んで走り出す。

「あぁ、それと食事が済んだらどっちかの部屋に行こう。ちょっと昂って来たんだ」
「へいへい。じゃあ精力の付くモン食いに行こう。お前底無しだしな」

ゼロの言葉にナーは口を尖らせながら言い返す。

「む! 失礼だな。私はそこまで淫らな女じゃない」
「一度、腹上死しかけたけどな」
「あの時は、その、ゴメン……」

その時のことを思い出したナーは、しゅんと顔を俯かせる。

「ふふ、はははっ!」
「笑うな」

その様子にゼロは笑いナーは可愛らしく不貞腐れる。

「悪い悪い。お前がえらく潮らしいからな。ま、気にすんな、お前は魅力的な女だよ」

ゼロはそう彼女に笑いかける。ナーは顔を少し赤くする。

「ふん」

二人は七色のネオンに照らされるアーケード街を駆け抜ける。

翌日はオフィシャルマッチの第二試合。

そしてゼロとナーの試合でもある。
 

 

 


後書き

act.3終了。

今回はゼロの試合とナーとの触れ合いです。

それと今回、ブルーセラフに使われているジェネはFF(フォーミュラー フロント)に出てきた物です。

そして次回はいよいよゼロとナーの対戦。

これにはかなり気合を入れて書くところです。

しかし、こう女性を可愛らしく表現するのって難しい。どうも自分は戦闘シーンの方が書きやすい感じです。日常的な描写やギャグを書ける人を尊敬します。

ちなみに全くの余談ですが、小説のネタにと色々と探し物をしていたらACのwikiにも載っていないナーの元ネタを見つけました。

で、その内容は。

イツァム・ナーとは、マヤ文明伝承の火の神で、創造神フナムの息子。太陽と同一視されるという。

またイツァムナとも謂われ、イツァムは「イグアナ」の意、ナは「家」または「女」の意。中央アメリカではイグアナは火の神とみなされることが多いようで。

ちなみにAC名のプロトエグゾスの方も分かり次第掲載します。

誤字脱字、感想等は掲示板にてお願いします。