宇宙(ソラ)を翔る・後篇

 

 

薄暗いコクピットの中で様々な計器に目を走らせる男。

そんな彼の機体に近づく一機のアルサレア製のPF。

『博士、今回用意された試作品のテストは全て済みました。幾つかは敵に鹵獲されかけましたがその全ては命令どおりに自爆、または此方で撃墜しておきました。それと敵機の鹵獲は想定よりも若干下回る数ですが概ね完了しました』

報告を聞いた男、暗部の№Ⅳ:ゲイツ・バーンズは計器に向けていた視線を上げる。

「宜しい。ならばスコアに達した、または損傷率が高い機体から順次帰還」

『はっ、了解しました。―――各機に通達、撃墜スコアをクリアした者、または損傷が酷い機体は順次帰還せよ』

スピーカーからは幾つもの応答の返事が響く、それらを聞き流しながらゲイツは目の前の報告をしてきた友軍機に目を向ける。

そのPFは既存のアルサレア製のPFに比べ重圧な外見をしており、なにより特徴的なのはJファーと同タイプのヘッドに左右のサイド―――丁度人で言う耳の辺り―――にバルカンを取り付け、またメインフレームもJファーと同じ物だがメインフレーム上部に取り付けられている小型機関砲が拡張されより攻撃的になっている。

「Jファーバルカンの調子はどうだ?」

『はっ、宇宙での戦闘も十分です。ただJファーバルカンのレッグフレームに搭載されている低高度上昇機能は流石に宇宙ですので意味はありません。が、癖がない分宇宙での方が運用はしやすいです』

「まあ仕方ない。所詮その機体は試作機だからな、仮に正式にロールアウトしても作られるのは小数だろう。寧ろその機体は他とのカスタマイズ次第だな」

Jファーバルカンのテストパイロットの報告を聞きゲイツはゲイツは自身の考えを述べ、再度計器に目を向ける。

と、計器に目を向けた直後センサーに友軍機の存在を知らせる。

「№ⅩⅢ…あの小僧か」

ゲイツは各種センサーを使いゼロの周りをサーチする。

その先にはヴァリムが一個中隊規模が展開している。

更にセンサーはもう一機感知する。

「こいつは……例の、今作戦のキーパーソンの一人、ブレッド・アローズか。ふむ、面白い。観察させてもらおうか」

ゲイツはその鋭い眼差しをゼロとブレッドの二人に向ける。

Jファーバルカンのパイロットはやれやれと観察される二人に軽く同情する。

 

 

カタパルトの勢いを利用してゼロはフルスピードで戦場を駆け抜ける。

加速によるGが体をシートに押し付けるが、それをものともせずゼロはフットペダルを強く強く踏み込み、感圧スティックを巧みに操る。

自機の高いステルス性能を駆使して戦場のど真ん中を駆け抜けていく。敵が気づく頃には既に振り切られた後か至近距離まで接近されたところである。そしてそれに気を取られたヴァリム兵は別のアルサレア兵に容易く撃墜される。

『ゼロ、もうすぐ敵の最終防衛ラインだ。その先にはザーベイルの中央司令本部施設がある。そこの防衛戦力は強大だ、ヘタに近づこうものなら即効で蜂の巣だ! だから敵母艦との位置取りに注意しろよ! それと味方には殆ど期待すんなよ。隊長や姐さん達は黒夜叉の部隊と交戦中、他の味方も防衛ライン近辺の敵部隊との戦闘で手が放せん!』

「わかっ―――ッ! クソ」

アクセルの通信を聞きながら最終防衛ラインに差し掛かった途端一気に攻撃の密度が上がる。更にアクセルからの通信にもノイズが混じり始める。

『ゼ、ロ敵部…接近…中……気をつ、けろ。幸運、を祈…るぜ』

「了解」

真正面からは幾十ものミサイル郡が飛来してくるがゼロは右手に握られたサブマシンガンをフルオートで薙射する。

マズルフラッシュが瞬き吐き出された弾丸は大量のミサイルを撃ちぬき爆発を起こす。その爆発は近くのミサイルを巻き込み連鎖的な爆発を生む。

ゼロと敵部隊は爆炎を引き裂き接近する。

スティックを小刻みに動かしながらゼロは相手が装備している銃やミサイル系の兵器を狙う。全部が全部というわけではないがしかし確実に装備を撃たれ、内蔵している弾薬に火が付いた敵機は簡単に足を止める。

足を止め殆ど動かなくなった敵機の間を颯爽と突破する。勿論被弾していない他の敵が攻撃してくるがその敵は背後から攻撃を受け爆散する。

ゼロは不振に思うが今は気にせず防衛線を突破することに集中する。

ちなみにゼロの援護を行ったのは暗部の遠距離戦のスペシャリスト:№Ⅲのバレルである。

彼はSレールライフルの残った残弾全てをゼロの進路上にいる相手に使っている。

バレルの援護を受けながら、間も無くゼロは最終防衛ラインを突破する。

しかしこの間全くの無傷ではなく機体各所には幾つもの弾痕が刻まれ爆炎による熱で装甲も一部熔けかけている。けどコクピット付近はライトガードのお陰で無傷を保っている。

だが所詮は軽量の特殊装甲材を薄く張り合わせただけの鉄板では機体を完全に守りきるには至らない。

「想定防衛ライン突破! ターゲット確認!」

防衛ラインを突き進んでいた時から敵母艦は視界に入っていたが、最終防衛ラインを突破したゼロの目には更にその巨大さが目に付く。

その大きさに言い知れぬ存在感を感じているとセンサーが警報を発する。

視界には再び大量のミサイル。更にその先には一機のアルサレア製と見られるPFが一機にくすんだ白い装甲にタルカスと同じような重圧な装甲にタルカス以上の豊富な武装を搭載したPFの部隊。

ゼロは直に両者の情報をデータベースから引っ張り出す。

「敵はヴァリムの新型のヴェタール。おそらくあれが母艦の艦載機か?! それとアルサレアの方のは202特務小隊機? あぁブレッドかっ!」

ゼロは目の前に迫ったミサイルをサブマシンガンで撃ち落とし、ブレッドとヴェタールの部隊に接近する。

「はぁ!」

短くも力強く発せられた声と共にゼロは左手に保持しているボロボロのライトガードをフリスビーのように投げつける。

回転しながら飛んでいくライトガードは見事にブレッドにヴェタールが突きつけようとしたパイルバンカーを阻む。

『『ッ!?』』

行き成り飛んできたシールドに両者は怯み立ち止まる。

「せぁ!」

そこに立ち止まったヴェタールの前にゼロが躍り出る。

目の前に現れた相手にヴェタールのパイロットは驚くがすぐに立ち直り後退しようとする。だが勿論ゼロはそれを逃すはずも無く左手で逆手に抜かれたレーザーソードを一撃の元振り切る。

その一閃は相手のメインフレームのコクピット付近を切り裂いたが一撃で相手を斬り捨てれなかった。しかしゼロは間を置かずレーザーソードで斬りつけた部分に今までの徹甲弾から徹甲榴弾にマガジンチェンジしたサブマシンガンを撃ち込む。傷に塩どころか致死性の猛毒を塗られた相手は強烈なスパークを発し小爆発を起こしながら消し飛ぶ。

突然の事にブレッドは怯む。が、すぐに通信を繋げ礼を言う。

『すまない。助かった』

フェイスウィンドウに映ったのは斜めに屹立した茶色い髪に青い瞳の青年で全体的に活発な印象を与える。そうこの青年が202特務小隊の隊長――今はその試験中だが――で、後にグレンリーダーのクロードと並ぶほどのアルサレアのトップエースとなる人物である。

「久しぶりだな、ブレッド」

『なっ!? お前はゼロ!!』

そしてブレッドの方のフェイスウィンドウに現れたのは嘗ての知り合いで同期でもある人物にブレッドは驚くが、ゼロの機体を見て瞬時に理解した。

『その機体……そうかゼロが―――っと!?』

久々の再開に二人は懐かしむが敵は当然それを許してはくれない。

「ブレッド、お前一人か?」

『ああ、さっきまでは一個中隊が共に戦ってくれたが損耗率が酷かったしこれ以上の戦闘行為は危険と思ったから下がってもらった』

ゼロはブレッドの話を聞いている間に彼の機体ステータスをスキャンする。

(一応データベースに登録されている202特務小隊機の装備は右手のフォルテシモという名の2連ビームガンに左手のライトガードだが今のこいつは装備していない。おそらくここに来るまでの戦闘で使い物にならなくなったんだろう。で、両肩はウィングと。貧弱だな、こいつの武装は)

それでもここまで持ちこたえているのは紛れも無いブレッド自身の実力なのだろう。

ゼロは思考を止め、ブレッドに伝える。

「ブレッド、俺の機体の装備を使え!」

Jファー・カスタムの左手に持ったレーザーソードを投げ渡す。ブレッドはそれを右手に持ったフォルテシモを左手に持ち替え、レーザーソードを右手で受け取る。

『すまないゼロ』

「いや、それよりもお前、一時的だが俺とコンビを頼む。正直俺だけじゃあの母艦には取り付けん」

『分かった。任せろ!』

そして二機は敵部隊に吶喊する。

ゼロのJファー・カスタムがまず左手に持ち替えたサブマシンガンを乱射し接敵した場合は右手に持ったレーザーソードでいなす。ブレッドはゼロが捌きいなした敵を一機一機着実に撃破していく。

その行動・速度・連携は的確・迅速・確実。

即席急造のコンビだが二人はまるで長年組んでいたと言うほどのものを見せる。

「目視で約一時の方向、仰角-20度の方角から増援だ」

『いやバック、レイドからも新手だ!』

「百機斬りでももう少し優しいぞっ!」

『ビビッタか、ゼロッ! 士官学校のときは色々と無茶やっただろ! お互いにさ!!』

「誰に言っている! まだ腹八分目にも満たねえよ!!』

もはや全方位から敵部隊が襲い掛かる状態、それらから放たれる殺意の意思を受けながらもゼロとブレッドの二人は互いに引きつった笑みを浮かべているがその目には諦めの意思は感じられず、むしろより高揚としたものを感じられる。

それに二人はダメージは負ってはいても決して致命傷には至らず、攻撃を喰らう頻度よりも攻撃をする、当てる頻度の方が高い。

そんな二人に絶対的な優勢の立場であるはずのヴァリムの方が尻込みしてしまうほどである。

そんな見敵撃滅状態の止まる事を見せない二人は着実に目標である敵母艦:オーガル・ディラムに近づく。

『護衛の部隊は何をしている!! 早く何とかしろ!!』

通信が混雑しているのか敵からの通信がだだ漏れしている。

『全砲門を開け! なんとしても敵を叩き落すんだ!! 司令本部からの援護はどうなっている!』

『こちらの味方が多すぎて主砲は使えません。それにこの距離からでも味方を巻き込む危険性が高すぎます!!』

『駄目です! 司令部からの射線上に本艦がいるので援護は不可能です!』

二機の接近に対応するように各種ミサイル兵器、近接防御のCIWSをばら撒く。だが多すぎる味方が逆に仇となりその強力な対空火器も味方を巻き込んでしまう。

そして遂に二人はオーガル・ディラムを自機の有効射程内に入る。

「ターゲットインサイト! ブレッド、PFは任せる」

『なるべく急いでくれよ!』

取り付いた二人を落そうとヴァリムは躍起になるが、ザーベイル地表の司令本部はオーガル・ディラムが邪魔で支援ができず、またPF部隊も射線上に母艦があるので必然的に格闘戦を強いられる。

そういった制約が無いゼロとブレッドの二人は好き放題に蹂躙する。

ゼロはオーガル・ディラムのミサイルハッチ、CIWSを優先的に狙い次々と破壊していく。そしてその攻撃の余波は艦内部にまで伝播していく。更に右手に握っていたレーザーソードを敵艦左右の主砲の内、右側の砲門に投げ刺しサブマシンガンの残った全弾全てを撃ち込む。

『左舷PF格納庫損傷率78%、左舷区画を封鎖しま、そんな! 区画が封鎖できません!!』

『出力47%低下! 右主砲が完全に破壊。エネルギーが逆流しています!』

『第3居住区火災発生、右舷破損、艦全ての武装が破壊されました!』

『艦長、もう持ちません!!』

『おのれえぇぇ!! アルサレアァッ! クッソ、総員退か『艦長! 敵機がッ!』…!』

乗組員の悲鳴のような損害報告が幾つも響く、だがそれでも一応はまだオーガル・ディラムは持ち堪えている。後一つ決め手が足りない。故にどれだけ脱出できるか分からないが艦長は退艦を命じる。しかして無常にも艦橋の目の前にはPFが現れ、その右手には黒光りする無骨なモノが向けられる。

『よ、よせっ!』

「消し飛べ」

ゼロの無慈悲な一言。その言葉と共に撃ち出される一発の砲弾:メギド。

古代ハルマゲドンの起きた地の名を持つその破壊の極光は艦橋をそこに居た人間をも飲み込んでいき、その爆発は地上で使われるよりも止まる事を知らない。

宇宙には大気は存在しない。

つまり発生するエネルギーは一方的に拡散していき、その勢いが弱まらない限りはどこまでも範囲を広げる。だから爆発を起こすものは地上以上にその力を発揮する。

だから光りに飲み込まれないようにゼロはメギドを発射した直後には機甲の翼を羽ばたかせ急いで離脱する。

「ブレッド、全速でこの宙域から離脱するぞ!」

『了解!』

二機は全速力でブースタを噴かす。またヴァリムは艦が破壊されたことにより戦意を喪失し呆然とする。そして破壊された艦は推力をなくしメギドの質量により下に落ちていく。

 

 

オーガル・ディラムが破壊されたことにヴァリム司令本部は混乱し錯綜としていた。

そして更に飛び込む凶報。

「司令! オーガル・ディラムが! オーガル・ディラムが此処に落ちてきます!!」

「なんだとッ! 急いで破壊しろ!!」

「現在全力でここの防衛兵器と残ったPF部隊で迎撃していますが計算されうる破壊の余波に巻き込まれます!」

「なんとか…」

しろ、と司令があらん限りの声量で叫ぼうとした直後、司令本部を光りが包み込んだ。

 

 

またそれを確認したアルサレア側は、歓声に包まれる。

「よおし! 作戦は成功だッ、全機欲張らずに急ぎ撤退せよ!!」

ダグオン作戦司令官の声が拡声器ごしに盛大に響く。普段なら喧しい声に全員が耳を防ぎたくなるが今回ばかりはそうでもなく、全員待ってましたと歓喜の雄たけびを上げ残った残弾を惜しまずばら撒きながら随時離脱していく。

 

 

暗部の方も

『いよっしゃあぁぁあっっ!!! 良くやったゼロッ! ―――№Ⅶより各機に通達! 作戦成功、急ぎ離脱せよ』

それを聞いたゼムン、セシリア、バレル、ゲンジの四人はそれぞれノイズ雑じりの応答を返す。

 

 

砲弾が飛び白刃が煌くがそれらを回避したセシリアは遠目に確認した光と今入ったアクセルからの成功の旨を聞き、身を翻し撤退する。

後からは追撃が迫るがセシリアは後に目が付いているかのごとく攻撃を次々と回避する。

そうしていると横にゼムンのPFが並ぶ。彼の機体は右足を膝下辺りから無くし機体各所には裂傷が刻まれている。

『そちらは無事そうだな』

横のゼムンからの通信が入る。その声音には相当疲れが滲んでおり、セシリアは薄く苦笑しながら返す。

「そう言う中佐は随分手こずったようですね」

『うむ、なにせ槍が主兵装の私に対して向こうはそれまでの戦術を捨てカタナ一本で挑んできたからな、骨が折れるよ。そういう君はどうなんだ?』

「私ですか? 確かに手を焼きましたが一機を撃墜、一機を中破まで追い込みました。それでも無傷とはいきませんでしたが」

『まだまだ、修練が足らんな。それにゼムンはもう年じゃないか?』

二人の会話に突如割り込んでくるのは№Ⅴのゲンジである。彼の方はというと全く持って無傷である。

『そういうゲンジはどうなんだ?』

『俺か? 俺は一撃も貰わんかったぞ。まぁその分、内部駆動系は悲鳴を上げてるがな』

ゼムンの問いにゲンジは楽しそうに返す。その雰囲気には疲れの気配が一切感じられない。そんな二人の様子をセシリアはただ軽く微笑みながら告げる。

「お喋りも宜しいですが、お二方。急いで帰還しませんと機体のエネルギーが底を付きますよ」

そう言ってセシリアは一人先行する。そんな彼女を追うようにオッサン二人は会話を止め追従する。

 

 

グレン小隊とグリュウとの戦いは現在、グリュウが劣勢に立たされている。

元々三対一かつ、なにより此処にきてPFの性能の差が如実に出始めた。

『ロック! そこ貰ったぁッ!!』

「クッ」

キースが放ったサーマルライフルの一撃はクロードと斬り結んでいた所を狙われ体勢を変える。

『ドリャアァァアアァッ!!』

そこにアイリがその異名の“ロケット”の如く突撃してくる。

振り被られ射出される巨大な拳:スクリューパンチの一撃をカタナで逸らそうとする。

だが刀身は軋みスクリュウーパンチを逸らした直後、カタナは中程からパキンと折れる。

「グゥ、此処にきて機体共々限界が来たか」

顔を歪め、機体ステータスを確認する。それに先ほどの司令部があった箇所で発生した光りが気になり集中力も欠け始める。

『貰った!』

「チィッ」

クロードのJフェニックスの斬撃をグリュウは寸前のところで折れたカタナの鍔元で防ぐが徐々に押される。更に右腕部の駆動系からは火花が散り紫電が駆け抜ける。グリュウは咄嗟に左手のサブマシンガンを捨て、カタナを両手で保持する。だがそれでも機体は悲鳴を上げ機体ステータスは真っ赤になり警告が鳴り響く。

「ぬううおおぁああ!!」

『!?』

鍔迫り合いを止め、クロードを側面にいなし追撃を入れずにグリュウはグレン小隊から距離を取る。

「……流石に潮時か」

ぜぇぜぇ、と呼吸を荒く吐きグリュウはどうしたものかと思索する。

『グリュウ』

そこに通信が入る。それは超長距離からのものでノイズが酷い。だがグリュウは通信の相手が誰かを即座に認識する。

「フェイトか、どうした? 今は少し手が離せん状況でな」

『グリュウ、撤退しろ。ザーベイルの司令本部及びオーガル・ディラムが落ちた。アルサレアは撤退するだろうし、こちらもこれ以上は損害が出すわけにはいかない』

グリュウは先ほどの光りは矢張り本部が落ちたときのものかと考え、更に母艦が落されたのに対して驚きを禁じえない。

「まったく、アルサレアもやってくれる。それでフェイト、私はこれから如何すればいい? なにかプランがあるのだろう」

『ああ。まずお前とお前の部隊はラグランジュポイントR32WZに向かってくれ。そこに地上に降りる為のシャトルがある。もし機体のエネルギーが不安ならシャトルの護衛の奴等に迎えに来させろ、俺の部下だから遠慮は要らんぞ』

「待て。何故地上に戻らねばならん?」

『詳しい内容は道中で話すから今は撤退したら如何だ? 取りあえずこれだけ言っとく……フォルセアが動きを見せ始めた。更にキサラギ研の奴等の動きが怪しい』

正論を言われ、また後半の聞き流せない部分を聞きグリュウは了解と告げる。またレーダーの方にも自身の部隊が写る。

またグレン小隊の方もそれを確認した。

『隊長、敵さんの増援だ。どうする?』

キースの言葉にクロードは迷う素振りも見せず即決する。

『撤退する。本来の作戦目標は達成されたのだ、俺達がこのまま此処にいても他の部隊に迷惑だ』

『『了解!』』

クロードは三連ショットを元のウィングに戻し、機体を戦闘宙域から離脱させる。アイリとキースもそれに続く。

それを態々見送ったグリュウは体をシートに預け、ゆっくりと深呼吸する。

『隊長!』

そこにフレームが歪んだ赤いヤシャが近づく。傍には数機の部下たちもいる。

「ダンか。各自被害はどれくらいだ」

『第一小隊はオレを含め二機が損傷、一人が落されました。第二小隊は機体がボロボロですが全員生存。第三小隊はオレ達の所と同じようなもんです』

「そうか…今回はアルサレアに一杯食わされたな」

グリュウはダンの報告を聞き、身を起こす。

「全機、至急このポイントに向かうぞ! 屈辱であろうと大義のため今は耐え忍ぶのだ!」

『『『了解!!』』』

グリュウの一喝に彼の部下達は声高々に吼える。

 

 

大規模な戦闘により付近には大量のPFの残骸が漂っている。そしてそれらを縫う様にゼロとブレッドが帰路に付く。

だが家に帰るまでが遠足と言うように、拠点に帰還するまでが任務でもある。

二人を追いかけるように猛スピードで迫る一機の毒々しい色をした一機のPF。途中にある残骸は全てその両手に持っているカタナで払う。

『?! レーダに敵機確認。なんだ、該当データ無し?』

「チィ、今戦闘するのは得策じゃない。振りきる…」

振り切るぞっと言う前に既に敵機はゼロ達に近づく。

『シャァァッ!』

妙な奇声を上げながら両手のカタナを同時に振り上げる敵機。その斬撃はブレッドを狙ったもので、ブレッドはなんとかその攻撃をレーザーソードで防ぐ。

―――が。

『無駄無駄あぁ!』

『ぐあぁ!』

突如攻撃してきた相手は防がれた攻撃を強引に弾く。その強烈な衝撃にブレッドは苦悶の声を上げ弾き飛ばされる。

弾き飛ばしたブレッドに追撃を掛けず相手は態々今度はゼロを狙う。

高速で接近し再び両手のカタナで攻撃してくる相手。だがゼロはその一撃に対して。

二剣八式:防逆舞鏡(ぼうさまいきょう)

『なに!?』

天を左手の逆手状態で居合い抜きをし相手の斬撃を防ぐ、そして火花を散らしながら相手のカタナを流水の如く自然に受け流し、受け流された相手は強引にブースタを噴かし此方もまた強引にカタナを振り回そうとする。

だが、ゼロのJファー・カスタムの右手にはレーザーソードが握られており、右手を順手、左手を逆手に今の体勢で一番斬りやすい斬撃を繰り出す。

このままいけば相手は難なく切り伏せれるだろう。

だが相手は異常だった。

『オオォォリャアァ!!』

その強引な体勢でHMを発動し更にブースタを噴かし自身に掛かる強烈なGなど知らんとばかりに一気にゼロと距離を取る。

「チッ、うざってぇ!」

ゼロはレーザーソードを襲撃者に投げつけショットライフルを抜き撃つ。しかし弾丸は襲撃者を捕らえず、先に投げたレーザーソードを撃ちぬき、更に辺りに散らばるPFの残骸も撃ち抜く。

ショットライフルによって撃ち抜かれたそれらは小規模の爆発が連鎖的に起こりそれは辺り一帯を埋め尽くす。

「今の内に退くぞ! 動けるなブレッド?」

『大丈夫だ! しかし何なんだアイツは!?』

「知らん」

ゼロはジャマーを展開し撤退していき、ブレッドもそれに続く。

 

 

爆発が収まり視界が開ける。

ゼロ達を襲った襲撃者は彼等がいた場所に目を向けるが勿論そこには誰も居らず、襲撃者は大きく舌打ちする。

「チッ、逃がしたか。折角骨のありそうな獲物が居たってのによぉ!」

襲撃者はつまらんとコクピット内で足を上げ計器を蹴る。

と、そこに一機のPFが近づき通信を繋げる。

『全く、何をしているんだ? ヴァレス』

ヴァレスと呼ばれた襲撃者の男は不満そうな表情を消し通信を繋げてきた相手に機嫌良さげに返す。

「ザインか。遅かったな」

『お前が先に突っ込んでいったんだろ。………ふむ、しかし…まさかお前が相手を仕留められなかったとわな』

ザインと呼ばれた男は冷静に、しかし若干の溜息まじりに言う。

「いや、アイツは純粋に強かった。もし相手が万全の状態だったら死んでたのはオレだ」

『…………』

ヴァレスから帰ってきた言葉は真剣なもので、彼としては何時も通り傲岸不遜な態度で返してくると思っていたからザインは目を見開き驚く。

「ん? どうしたよザイン?」

『いや、驚いただけだ。まさかお前が敵に対してそんな態度を取るなんて初めてだからな』

「ハッ! 当然だ。なんせあの野郎、オレの機体に傷を付けやがった。こんな事は初めてだ」

『なに?!』

ザインが本日二度目の驚きの声を上げた直後、ヴァレスの機体の右脇腹の辺りから小さな爆発が起きスパークが走る。

即座にヴァレスは、ジェネレータのエネルギー供給をカットし、一部の生命維持装置と通信装置だけを再起動させる。

「クソ、完全に避けきったと思ったが、オレもまだまだだったな」

『肝を冷やしたぞ…。取りあえず帰還できそうか?』

「無理」

『分かった。それじゃあ急いで戻ろう、神佐がお呼びだ』

「へえへぇ、メンドクセェなあ」

そう言ってヴァレスは再びゼロが撤退していった方角を見詰め、ザインに引っ張られながら撤収していく。

 

 

聖暦22年

アルサレアはヴァリムに対して苦戦を強いられる。

しかし一歩一歩確実に巻き返していく。

だがその水面下では様々な謀略が交差していき、フィアッツァ大陸で起きているこの戦争は新たな局面を迎える。

 

 

 

後書き

チャプターⅠ-ⅩC終了

さて、何故ここまで長くなった?(汗)

正直四つに区切った方がいいんじゃないかって途中で思ったのですが、もうめんどくさかったのでこのまま進めました。

ここまで長々と書いたのは初めてですよ。

まあこれ以降でもこんな長いのは増えそうですがね!(ぇー

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