一機の蒼い中量2脚のACが渓谷を進んでいく。
武装は、右手に軽量型のグレネードライフル、左手に強化型のショットガン、右肩には軽量化されたコンテナミサイル、左肩には7発同時発射のマイクロミサイル。
渓谷を進むACは、目の前に現れるトーチカ砲台やVTFを搭載した装甲車を至近距離で放った散弾で破壊する。
それらを破壊した先には複数の武装ヘリが飛んでいる。
ヘリはミサイルを撃つが蒼いACは傍の塀に隠れミサイルをやり過ごし、ミサイルが止んだ直後塀から飛び出し、右手のグレネードライフルをヘリに向かって次々と撃つ。
そしてヘリが全て撃破されると上の方からロックが解除される音が響き、ACに通信が入る。
『周辺の敵の撃破を確認、ゲートのロックを解除する』
相手の通信を適当に耳に流しながら、ACは上空に飛び、上の方にあるゲートを潜る。
『今回は我々が作成した最終ターゲットを配置した』
ゲートを潜ったACは地面に軽い地響きを立てながら着地する。
『力を見せて貰おう。レイヴン』
「了解」
レイヴンと呼ばれた彼は短い応答を告げ、前方を睨む。
すると正面のAC用の輸送ヘリの向こうからブースタ音が聞こえる。それは高速で此方に近づいてくる。
高速で近づいてくる相手はヘリを避けその姿を現す。
ターゲットのACは真紅と漆黒のカラーリングで左肩には特殊なデザインで描かれた【9】のエンブレム。そして武装は、右手にリニアライフル、左手に一番最初に開発されたレーザーブレード、左肩にグレネードランチャー、右肩は5発同時発射するマイクロミサイルという構成だ。
レイヴンは、右肩のコンテナミサイルを相手に撃つ。
発射されたコンテナは敵ACの頭上で展開し中から多数の小型ミサイルが飛んでくる。だが相手は持ち前の高機動性をもって容易く振り切られ、もう一発発射されたコンテナも同様に回避される。
レイヴンは早々に撃ち切ったコンテナミサイルをパージし機体を軽量化させ、今度は左肩のマイクロミサイルを展開する。
そこに敵ACからマイクロミサイルが飛んでくる。
レイヴンはそのミサイルを回避し、逆にマイクロミサイルを撃つ。
だが
「クッ! 速い!」
敵は猛スピードでミサイルを振り切り、蒼いACのロックオンサイトから消える。
お世辞にも優れた性能とは言えない頭部に搭載されているレーダを頼りに敵を追う蒼いAC。
相手に振り回されながらもレイヴンは再び敵をロックしミサイルを撃つ。
相手の行動を予測し、敵と自分との軸を計算されて放たれたミサイルは全弾とはいかなくとも確実に命中する攻撃である。
しかし
「なっ!? ミサイルが!」
敵ACへと向かったミサイルは何故か相手の目前で不規則に動き、その全てが逸れていく。
それを見たレイヴンは舌打ちする。
「チッ、ミサイルジャマーか…ならミサイルは死荷重でしかな…グゥウッ!」
敵にミサイルが通用しないとみるとレイヴンはミサイルをパージするが、その行動が僅かな隙となり敵に攻撃を許してしまう。
まず飛んできたのは三発のリニア弾で、それが連続で襲い掛かる。
「有り得ん…だろ!」
更に今度は重々しい砲撃音が響く。しかも2回連続で。
一発目はなんとか避けるも続いて飛んできた榴弾に被弾する。
その一撃により蒼いACの熱量は一気に上がり、更に行動が鈍る。
「おかしいだろうが!」
次々と被弾する状況にレイヴンは、ただ愚痴を悪態を零す。
―――――だが確かにレイヴンの言う事は正しく、敵の武装はおかしい。
まず、右手のリニアライフルだが、敵ACが装備してるのはCR-WR93RLというものだが、本来このライフルは単発でしか撃てない。確かに三点バースト撃ちができるリニアライフルもあるがこのライフルで3点バーストという撃ちかたは不可能である。
次に左肩のグレネードランチャーだが、こちらも外見はCR-WB78GLだが、性能はこのグレネードの軽量型のCR-WB87GLLというものに近い――このグレネードランチャーはマガジン機能を持ち短い間隔で2連射が可能で短期間のラッシュが売り――が、近いのは連射速度だけで破壊力はCR-WB78GLと同じである。
そしてなによりこのACの挙動などの総合的な性能は“通常のAC”や“一部のレイヴン達のAC”とも明らかに違う。
つまりこのACは完全なワンオフという訳だ。
ただACという兵器のカテゴリー上ワンオフという概念には疑問が付くが今は無視していただきたい。
とまあ閑話休題―――――
驚異的な性能を持つ相手に振り回されながらもレイヴンは持ち前の集中力と腕で補足し攻撃するが、機体の方は既に各所から火花が出ている。
そしてグレネードランチャーが前述の通り2発連続で飛来し、満身創痍の機体の状態ではそれを避けることは叶わず、2発とも被弾する。
《防御力低下、作戦中断帰還します》
機体の耐久力が許容値を超え蒼いACは煙を上げながら機能を停止する。
AIの音声を聞いたレイヴンはシートに身を預けただ一言、零す。
「色々とおかしいだろ……」
ゆったりとしたクラシックが流れ、室内にはアルコールの匂いと煙草の臭いが充満している。だが不思議と不快なものは感じない。
更に室内にはダーツやビリヤードなどの遊戯があり僅かだがそれらで遊んでいる者達が居る。
そして室内にある壁際にはバーカウンターがあり、そのカウンター向こうには多種多様な酒が並び、二人のバーテンダーが立っており、一人がグラスを丹念に磨き、もう一人はシェイカーを振ってカクテルを作っている。
現在そのバーカウンターには一人の青年が座っており、傍には琥珀色の液体が注がれ氷が浮いたグラスが置かれている。
そんな青年の手元には一つの携帯端末があり、青年はその端末に映るモノと睨めっこしながらブツブツと独り言を呟いている。
「あれを倒すには、ある程度の火力と機動力が必要。防御はこの際中途半端でいいや。となると必然的にタンクは却下。四脚と逆関は防御力と実弾に対する懸念があるからこっちも却下。フロートはスピードはあるが脆いから却下。となると後は軽中重の二脚系になるか、なら……ブツブツ」
側から見たらただの怪しい人物でしかないが、この施設を利用する者達にとっては特に珍しいものではなく、寧ろ日常的なものである。
そんな彼の前に綺麗な色をしたカクテルが置かれる。青年は視線を上に向ける、そこには先までシェイカーを振っていた初老のバーテンダー。
「どうぞ、美味しいですよ」
「いいのか?」
「サービスです」
「そうか…」
バーテンダーは青年にそう微笑みながら言い、青年は苦笑しながらそのカクテル・グラスを手に取り軽く口に含む。
「…ギムレットか」
「おや、お酒に関する知識が御有りで?」
「なに言ってんだ。教えたのはアンタだろ…マスター」
「そうでしたかな」
二人して口から静かに笑いを零す。
一頻り笑った後、マスターは昔を懐かしむように喋りだす。
「私も昔はレイヴンでした。ですから貴方の事には色々と共感できるのです。懐かしいですね、私もよく悩みましたよ、機体はどんな構成にしよう? どんな風に戦おう? かって」
「初耳だな」
「年寄りの戯言ですよ。私はアリーナでも下位の方に彷徨っていたような男でね、ただレイヴンという存在に憧れてレイヴンになったんです……もう五十年くらい昔の話ですが」
「それでも今まで生き残ったのは紛れもないマスターの実力だろ」
「恐縮です」
マスターの話に耳を傾けながら青年はカクテルを飲む。
「貴方にお客さんのようですね」
「ん?」
マスターは視線を動かし、青年もそれに釣られるように視線を動かす。
視線の先には、一人の女性。
その外見は美しく、均整の取れた肉体に、スカイブルーの瞳には力強い意思を宿し、淡い赤髪を靡かせがら青年とマスターの方に近づいてくる。
「負けたそうだなゼロ」
「煩えよナー」
近づいた女性は青年=ゼロに開口一番皮肉交じりに告げ、ゼロは苦笑しながらナーという女性に返す。
イツァム・ナー。
それがこの女性の名前で、ここレイヴンズアーク主催の特設施設のアリーナ一位でもある。
そして青年の名前はゼロで、同アリーナでは彼女と同じく一位で、二人は常に互いに競い合い高めている。
ちなみにレイヴンズアークには、複数地域でアリーナを開催しており、それら全てを総合的にランク分けした“世界ランク”というものがある。
ゼロの世界ランクは9位、ナーは8位と隣接しており二人は余計に互いを意識している。そこに男女の関係があるかは別だが。
ゼロの傍に近寄ったナーは、ゼロが飲んでないほうの酒を勝手に飲む。が、別にゼロはそれを気にせず自身も手に持っているギムレットを飲む。
「それで、何の用だ?」
「ああ、互いの次のオフィシャルマッチが決まったぞ。私は丁でお前はウォーロードだ」
「成る程、ならアリーナ用にもう一機用意しておくか」
「で、それぞれの試合の勝者が次ぎのオフィシャルマッチの相手となる」
「そうか。まぁ以前の試合みたいにお互いエリアオーバーしないように注意しないとな」
「言うなそれを」
ゼロとナーは以前の試合で互いに白熱しすぎて両者共にエリアオーバーするというミスを犯してしまい。その試合では観客も含めて不完全燃焼で多くの人々が二人の再戦を強く希望している。
「ご馳走様」
ナーはゼロに伝えるべき事を伝え、酒を飲み干す。
そしてゼロに顔を近づけ耳元に囁く。
「じゃあな。アリーナで待ってるから」
そう言って最後に頬に軽くキスをして立ち去る。
ゼロは立ち去る彼女を見ずただ呟く。
「大丈夫さ、お前以外に負ける気は無い。次は必ずあの赤いACを倒す」
そう言ってゼロも温くなったギムレットを飲み干し、代金を置いてバーカウンターから立ち去る。
「またのお越しを」
マスターはそんな女帝と天使を横目に二人が飲み干したグラスを手に取り洗い出す。
後書き
act.1終了。
正直詰め込みすぎたかな? っと思ってます。
そしてNBトップランカー、イツァム・ナー。通称ナーたん、初登場です。
それと最初のほうの⑨戦はほぼ自分が最初に戦った時と同じような状況です。
正直あの性能差を見せ付けられたときはマジで
(д)゜゜
こんな感じでした(笑)
また世界ランクというのは小説AC BNWをモチーフにしてます。今後もこの世界ランクというのは重要なキーワードとなります。
ちなみにバーテンダーのマスターは過去作に出てきたとあるレイヴンがモデルで、彼が歳を取ればこんな感じになるんじゃないかなっという想像です。
全くの同一人物かは永遠に秘密です。
その辺りは皆さんのフロム脳に委ねます(笑)
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