―――お前は何の為に戦う?―――
―――自らの矜持を貫き通す為―――
―――その矜持とは?―――
―――誰よりも戦い抜き、生き抜き、その先の世界を見る―――
―――その為にレイヴンとなったのか?―――
―――そうだ―――
―――そして俺は誰よりもレイヴンであることを誇りに思う―――
「レイヴン、依頼を説明するぞ。
君にやって貰いたいのは、この先の崩壊した旧市街地に陣取る敵ACを全機撃破して欲しい。
相手は全部で5機だが、全員元は下位のランカーだ。君の敵では無いだろう?
報酬は十二分に用意した。よろしく頼む。
“蒼の堕天使”よ」
「了解」
極短い依頼内容を聞いた“レイヴン”は了承の言葉を残して武装勢力の小汚い指揮所から立ち去る。
「本当に大丈夫なんですか? 相手は下位とはいえレイヴンですよ。それも5機」
立ち去った“レイヴン”を見て依頼内容を説明した武装勢力のリーダーの傍にいた副官らしき男が怪訝そうな顔で聞く。
「なんだ? お前あの男のことを知らないのか?」
「そんなに有名な“レイヴン”なんですか?」
「まぁ、滅多に依頼を受ける人物じゃないが、それでも現存する“レイヴン達”の中では“あの男”は間違いなく最強の一角だ。
聞いたこと無いか? “蒼の堕天使”の名を」
「―――“蒼の堕天使”……!! まさか! じゃああの“レイヴン”は!」
「そうだ、奴が“イレギュラーの再来”と呼ばれる“レイヴン”だ」
日付は変わり辺りは夜闇に包まれる。
『準備はいいか? というかもう直作戦区域だけどよ』
「問題ない」
『さよか。――――じゃあ! 行って来い!!』
「言われるまでも無い。AI、システムを通常モードから戦闘モードに移行させろ」
《メインシステム戦闘モードを起動します》
そして鴉は飛び立つ。
戦場へ
ボロボロに劣化したビル郡が辺りに点在し、それらの間を縫うように5機のACがバラバラにいる。
『たく。武装勢力の奴等いい加減諦めて俺らに降れってんだ。そうすりゃあいい夢が見れるのによぉ』
一人の粗野な男がぶつくさと文句を垂れる。
元々この廃墟と化した町を住処としていたのは、武装勢力の方でこのレイヴン達はそこを奪い取り彼等に自分等の下に降れと言ってきているのである。
と、そこに別のレイヴンから通信が入る。
『そういやぁ知ってか?』
『何をだよ』
『武装勢力の奴等どっかのレイヴンを雇ったらしいぜ』
『誰をだよ?』
『知らねぇよ』
『ハッ! そんな名も知れない奴等を雇うとかヤキが回ったな』
『ちげいねぇ!!』
男共が下気品にゲラゲラと笑う。
だがそこに別のレイヴンから通信が入る。
『こちらクロック。お前等レーダーに敵反応があったぜ。どうやらACのようだ』
『おいおい。本当に来たのかよ』
『とんだ馬鹿だなぁそいつ』
『丁度いい。待つのも飽きてきた頃だ。そいつで憂さ晴らししようじゃねえか』
『そいつはいい!!』
『じゃぁ殺るか! おいクロック。敵はどっかから来てる?』
『ちょっと待ッ!! グアァァ!!!』
『『『『!!!!』』』』
突然の悲鳴。
『おいックロック! 何があった?!』
『畜生! あの野郎、ロケット当てて来やがった!!』
『おい待てよ、まさか上位ランカーが来たとか言うんじゃねえだろうな!』
『知らね…!! な、なんでもう目の前に居るんだよ!? く、くんじゃねえぇぇ!!』
通信機から聞こえる叫びと戦闘の音。
そして
『ギャアアァァァァ!!!!!』
『おいクロック!! チクショウ! クロックのシグナルがロストした!』
『一旦集結するぞ!』
『『『おう!』』』
バラバラにいた残りの4機が一箇所に集まりだす。
そしてそれに釣られるように向かってくる襲撃者。
『全員集まったな!』
『まだベスタリオの奴が来てない!』
『アイツの機体タンクだからな』
その時彼等の元にノイズ混じりの通信が入る。
『……おま……え…にげ……天使…が……天使が…来た』
『おいベスタリオ!!』
『駄目だ。ベスタリオのシグナル消失した』
『なんなんだよッ一体!』
『待て! レーダーに反応だ。クロックとベスタリオを殺った奴に違いない』
『チクショウ! ぶっ殺してやる!!』
そして遂に襲撃者が彼等の前に現れる。
その襲撃者を見て三人は固まり全身からは悪寒が走り冷たい汗が流れ落ちる。
『お、おい。アレって』
三日月を背にビルの上に立つ一機の蒼いAC。
『笑えねぇ…最悪だ……』
左肩には六つの翼を模したエンブレム。
『なんで…なんでここに居るんだよ!』
三人の心中が、魂が必死に呼びかける。
『元世界ランク9位の“ゼロ”が!!』
目の前の存在には決して敵わないと。
「悪いが仕事なんでな、消えてもらう」
ビルの上から飛び出すゼロのAC=ブルーセラフ。
『う、撃て! とにかく撃ちまくるんだ!!』
一機がブルーセラフに向かって右手のライフルを撃つが、ゼロの動きに付いていけず悉くが明後日の方向に飛んでいく。
別方向からはミサイルが接近してくるが単発でしか飛んでこないのでこちらも容易く避けられる。
『なんで当たらないんだよ!』
「下手糞が、そんなんでよく今まで生き残れたな」
『特攻兵器にすら見向きもされないような雑魚だったんだろ』
ゼロの耳元にエドの嘲笑を含んだ声が聞こえる。
「救われないな。―――――まぁ、俺も人の事は言えんが」
ゼロはブルーセラフが右腕に装備する軽量型のグレネードライフルをライフルを撃ってきた相手に向かって撃つ。
その一撃は面白いように相手に命中する。
『お、おい! カバーしてくれッ!!』
『してるよ! でも当たんねぇんだよ!』
『ちゃんとしてくれッ! こっちは逆関節で装甲が薄いんだ!!』
パイロットが錯乱したのか逆関節の機体はライフルを撃ちながら上空に逃げる。
だがその行動はやってはいけないことだ。
『!!』
「三つめ」
上空に逃げた逆関節機をブルーセラフが追う。その左腕には蒼く煌くレーザーブレードの光剣。
レーザーで出来たツルギは容易く逆関節機のコアを両断。
重力に従い地に落ちる逆関節機をブルーセラフは踏み台とし、そのまま更にジャンプする。
そしてトドメとばかりにグレネードライフルを一発撃ち込み完全に破壊する。
だが、そこへ別の光りが迫る。
「ッ!?」
ゼロは咄嗟に機体を捻って避わす。
が、完全には避けきれず右腕をもっていかれてしまう。
「ちっ、レールキャノンか、やってくれる。だがグレネードライフルに当たらなかったのは運が良かった」
ゼロはコクピットの中で獰猛にほくそ笑む。
対して残り二機となった敵は。
『クソ! 外した!!』
『もっとよく狙いやがれ!!』
『煩えッ!!!』
ゼロは残り二機となった相手にマルチミサイルを撃つ。
残った方の二機――レールキャノンを装備した四脚と、ミサイルと武器腕を装備した中量2脚のACは、必死に避けようとするも全く避けきれず全弾直撃する。
そして次に四脚のレイヴンが見たものは爆炎を引き裂きブレードを展開したブルーセラフの姿。
『く、来るなぁッ!』
絶叫を上げながらレールキャノンを撃つも、発射までのタイムラグがあり容易く回り込まれる。
回り込まれ、擦れ違う一瞬、ブレードが一閃。
その一撃はレールキャノンの砲身と四脚の前足を切断する。
そして背後に回ったゼロは比較的装甲の薄い背中にマイクロミサイルを撃つ。
前足を失い動く事もまま成らない四脚のACは、その背中にミサイルを全弾当たり撃沈する。
「標的撃破」
『あと一機だ!』
最後の一機となった中量2脚は必死に逃げようと肩の装備をパージし機体を軽くする。
だがその行動が致命的だった。
「逃がさん」
ロケットを放つゼロ。その一撃は棒立ち状態の相手の右足に命中。
『ヒィィ!! チクショオォォオオォォ!!!』
目の前に迫る死の恐怖に最後のチンピラレイヴンはマイクロミサイルを放つ武器腕のCR-WA91MSMをロックもしないで滅茶苦茶に撃ちまくる。
飛んでくるミサイル郡はまるで触手のようにうねうねと不規則な動きをしながら散らばる。
そして流れ弾に被弾しないようにその中を進むゼロのブルーセラフ。
「なっちゃないな、載星の奴の方がマシだ」
『アリーナランク3位と比べるほうが間違ってると思うがね』
「はっ、同感!」
短い会話ながらゼロは的確に流れ弾を回避しながら接近する。
そして会話しながらもゼロは集中力を絶やさず機会を窺う。
その時幾つかのミサイルがブルーセラフに迫る。
ゼロはそのミサイルをギリギリまで引きつけ、当たる直前で回避する。そして回避した直後放たれる一発のロケット弾。
その一撃は相手の左腕に命中。
一発の小型ロケット弾は武器腕内に収まっていた残りのミサイルを巻き込み盛大に爆発する。
そこに響き渡るは爆発音と耳にかすかに届いた敵レイヴンの悲鳴。
「ッ! はぁ~やっぱたまんねぇな、先の瞬間は」
『こっちは冷や冷やもんだアホ。お前のそれは病気だよ』
張り詰めた神経をほぐす様にゼロは一息吐き苦笑を浮かべる。そんな彼の耳に届くのはエドの愚痴。
『そんで、そいつサッサと楽にしてやれよ』
「ああ忘れるところだった」
まったくとエドの苦笑を混じりの声を聞き流しながらゼロは左腕が吹っ飛んだ相手に近づく。
横転し立ち上がる気配のない相手に近づいたゼロの耳に相手から通信が入る。それは酷く衰弱し弱弱しい声。
『こ、の…化け物…が』
「化け物? はは、悪いがそいつは褒め言葉ってヤツだ」
そう言ってコア部分にレーザーブレードを突き刺す。
ブレードが突き刺さった直後敵機の頭部カメラが数回明滅しやがて完全に光を失う。
「依頼達成だ」
『お疲れさん。今依頼主に連絡した』
《作戦目標クリア、システム通常モードに移行します》
ゼロはAIにブルーセラフのシステムを戦闘モードから通常モードに切り返らせる。
「さて、右腕を交換しないといけないな」
『まあ、まだまだ旧ナービス領には遠いから気楽に行こうぜ』
「ああ。それにお前の紹介してくれるオペレータとの合流地点もまだ先だしな」
エドとゆっくり会話をしながらゼロは荒廃した街だった場所を去る。
全ては一ヶ月前の話。
世界は旧世代の遺産【特攻兵器】によって変わった。
後書き
Act.0終了
さてこの作品ですがマブラヴの方とのクロス前の話で、まあ所謂過去話ですね。
それでもある種、別作品の意味合いもありますが(^^;)
そしてこの作品のコンセプトは旧作のACらしさを残しつつ人間臭いACというのを目指してます。特にゲーム中は台詞も無いようなキャラもピックアップしていく所存です。
また話の時系列としてはネクサスのナービス紛争からゼロ達がマブラヴの方に行く前までです。
ちなみに一部を除いて基本的にはゼロの視点で進みます。
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