クロードとグリュウ。
戦場で三度相対するアルサレアとヴァリムのトップエースの二人。
二機は鍔迫り合いの状態から、一旦距離を離し互いに左手に握る銃器を相手に向ける。
クロードはサーマルライフルを、グリュウはサブマシンガンを相手に向け発砲する――だが、両者には決して当たらない。
正確に相手に向けて撃ち続けようとも二機の機動性は一般機よりも速く容易く見切られてしまう――但しクロードの方はサブマシンガンを多少被弾するが、機体のほうは然して問題は無い。
「ほう、以前よりもますますやる様になったではないか」
『俺っちを忘れんなよ!』
グリュウの上からキースのJファー・カスタムがサブマシンガンとAAFミサイルを撃ちながら襲い掛かる。
『アタシもね!!』
更に右からはアイリのJグッラプラーが来る。
グリュウは上空から降り注ぐ攻撃をバックして避け、接近してきたアイリはJグッラプラーが装備するPFの手首までを被せる様に装着された篭手=スクリューパンチを打ち込む。
電磁射出によって打ち出された拳が回転し唸りを上げグリュウを襲うが、グリュウはその攻撃をカタナによって軌道をずらし逆にアイリに肩のAAFミサイルを撃とうとする。が、その攻撃を今度はクロードに邪魔される。
再びグリュウとグレン小隊の三人は距離を離し対峙する。
「全く、楽しませてくれる」
このような状況下でグリュウは喜悦の表情をし口には笑みを浮かび上がらせる。
そしてグリュウたちが再度、激突しようとした瞬間互いのレーダに機影が映る。
それぞれ友軍と敵を示す緑と赤の光点。
『『『隊長!!』』』
ヴァリム側はグリュウ揮下の中隊。
『こちらエクサ、隊長ゼムン・ゼルバだ。援護するぞグレン小隊』
『№Ⅱセシリア。これよりグレン小隊の援護を開始します』
『遅れてスマンなグレン小隊』
対してアルサレア側は暗部の№Ⅰゼムン・ゼルバと№Ⅱセシリア・アーデンヘズルに№Ⅴゲンジ=センドウの三名である。
それを確認したグリュウとクロードの二人はそれぞれ現れた友軍に指示を飛ばす。
「各小隊は今現れたアルサレア側の増援を相手取れ! 但し油断は禁物だ!」
『『『了解!!』』』
『ゼルバ中佐たちは今現れたヴァリム軍の対処を頼む! こちらはグリュウ・アインソードを押さえる!』
『『『了解/承知しました/承った』』』
「全機、突撃ぃぃッッ!!」
『いっけえぇぇぇ!!』
「参ります」
セシリアの氷のような冷たい呟きが発せられる。
『行くぞアルサレアのエース』
対するは3番隊の小隊。
普通なら雑魚と捉えるだろうが、セシリアは油断しない。相手はあの“黒夜叉”の部隊。一般の将兵よりも実力は上だろうと睨んでいる。
3番隊のPFは全機外見は標準的な規格統一されており、隊長機のヤシャにロキが二機という編成である。
まずは先手必勝とセシリアが両手のレーザーピストルとショットガンを撃つ。
3機のPFは散開しできるだけ固まらないように動き他の部隊の邪魔にならないように移動する。
(よく訓練されていますね)
セシリアはまず比較的火力が豊富なロキを落そうと狙う。
だが彼等はそれを読んでおり、それぞれが的確にフォローし互いの隙を埋める。
一機が狙いを定められれば一機が接近戦を挑み残りが援護する。或いは散開し上下左右から三機が交互に攻撃しお互いに射角を補佐するように動く。それによりセシリアはなかなか攻めきれず防戦に徹せられる。
「本当、やり辛いですね!」
そう言った直後一機のロキの右足をレールキャノンで撃ち抜く。
「少し強引すぎましたか、まったく……本当やり辛い」
今の攻撃により3番隊は少々浮き足立つ。
煌く白刃の刃。それに対するは三叉に分かたれた長槍。
白刃を操るは2番隊のヤシャ。但しこのヤシャは他のヤシャと装備が若干ことなりカタナを二本保持し二刀流で挑む。更に左右からは二機のロキがMLRSやレールキャノンで攻撃してくる。
そして距離を離すと今度は3機で砲撃してくる。先の通りロキはMLRSやレールキャノンに本来の規格装備ではないスマートガンで、ヤシャは肩のキャノンとガトリングガンで攻撃してくる。
途轍もない弾幕に三叉の槍を操るゼムンは縦横無尽に動きながら回避する。流石にガトリングガンやスマートガンは幾らか被弾するもMLRSやレールキャノン、キャノンの攻撃だけは的確に見切り避ける。
「埒が明かないな。だが攻め時を見誤れば私の死」
暫く回避に専念しているとキャノンの砲弾だけが飛んでこなくなる。どうやら弾切れしたらしくキャノンとガトリングガンをパージしたヤシャだけが接近してくる。勿論後方からは引き続きロキからの攻撃が飛んでくるが味方誤射を避けるため先よりも攻撃が散発になり多少荒くなる。
「好機か?」
そう思いゼムンは三叉槍を構え突撃する。
突き出される槍を2番隊の隊長機であるヤシャは二本のカタナを巧みに使いゼムンの攻撃を凌ぐ。だがゼムンの怒涛の突きの嵐に対処しきれずヤシャは左肩の装甲を貫かれる。
もう少し対処が遅れていれば左腕ごと貫かれていたがパイロットの実力が高かったお陰でヤシャの左腕は未だ繋がっている。
ゼムンはそのまま強引に三叉槍を振り回し相手の左腕を破壊しようとするが2番隊の隊長は右手のカタナを手放し三叉槍の柄を掴み引き抜かれないようにする。
「くっ!?」
ゼムンは強引に引き抜こうとするがヤシャのパイロットは逆に槍をより深く突き刺す。
この状況に流石にゼムンは焦る。
更にヤシャの後方からはHMを起動したロキが一機カタナを構えて強襲する。
『うおおおぉぉぉ!!』
「ちぃ!」
ゼムンは仕方なく自身の得物を一旦手放しヤシャに突っ込む。抱きつくような形でヤシャとゼムンの機体はザーベイルの地表に激突する。
「『ぐうおぉぉ!!!』」
激しい衝撃に2番隊の隊長とゼムンは苦悶の声を漏らす。
いち早く機体を立ち上がらせたゼムンはヤシャから三叉槍を引き抜き倒れているヤシャを貫こうとする。
『させん!』
が、それを遮るはもう一機のロキ。ちなみにHMを発動した方のロキはHMの発動時間が終了したため動けないでいた。
カタナで三叉槍を止めたロキは至近距離で強引にMLRSを撃つが放たれる誘導式ロケット弾は全部避けられる。そこに一本のカタナがザーベイルの低重力によりゆっくりと落ちてくる。
それは先ほどカタナを手放したヤシャのもので、そのカタナは斬り合うゼムンたちの足元に落ちる。
そしてカタナが落ちた直後ヤシャが動く。
寝ている状態でHMを発動し落ちてきたカタナを素早く掴みHMの恩恵によって上がった腕部稼動速度を利用し超速でカタナを振る。
「!?」
ゼムンはこれには予想できず――だが長年の経験からか咄嗟に上空に飛び上がる。但し右足を犠牲にしてだが。
『これで左腕の貸しは返したぞ』
ヤシャのパイロットの声を聞いてゼムンは苦笑を浮かべる。
「貸しにした憶えは無いんだがな。だが……流石は“黒夜叉”の部隊だ。私も少々慢心していたらしい」
そう言うとゼムンは再び三叉槍を構える。
『オラァァァァ!! 行くぜえぇぇッ!!!』
「血の気の多いボウズだ」
一番隊の隊長と思われる真紅のヤシャは左手に装備するアサシンファングを構え突撃する。
猪の如く突進してくる真紅のヤシャをゲンジは機体を軽く右に逸らしヒョイっと回避する。が、直後に二機のロキが襲い掛かる。
『『ハアァァァァッッ!!』』
「ほんと血の気の多い小僧共だな」
二機のロキは真紅のヤシャと同じく猪突猛進してくる。二機がその手に握るは、真紅のヤシャと同じアサシンファング。
突っ込んでくる三機をゲンジは器用にひらひらと避ける。
『テメェ! 避けてばっかいんじゃねぇ!!』
「そうは言ってもなぁ」
避けてばかりのゲンジにいい加減頭に来た真紅のヤシャがスピーカー越しに怒鳴ってくるがゲンジは頭を掻きながらぼやく。
「仕方ない。行くぞボウズ共」
『誰がボウズだッ! オレの名はダン! ダン・ロンシュタット!! グリュウ隊一番隊隊長だ。この名を良く憶えておけッ!!!』
「はいはい。ボウズ」
『だからボウズ言うなッー!!』
『我が国家の大義を理解しない貴様等には消えてもらう!』
グリュウはクロードにカタナを突きつけ斬りかかる。
カタナによる斬撃をカタールで遮り負けじとクロードもカタールを振るう。
「武力を使った統一に大義など無い!」
『ほざくな! 貴様如きには理解できまい!!』
カタールによる横振りの剣撃をグリュウはバックステップで回避しお返しとばかりにAAFミサイルを放ち、アイリ達に牽制へとサブマシンガンを撃つ。
『この星の海で散るがいい。アルサレアのエース!』
放たれたミサイルを回避したクロードの目前に映るはヤシャのカタナ。
クロードはヤシャの攻撃をぎりぎりで防ぐが、グリュウはすぐさま距離を取り再度ミサイルを撃つ。クロードは咄嗟にそのミサイルをカタールで防いでしまう。
「うおおぉあぁ!」
『貰った!』
ミサイルの爆風で体勢を崩したクロードに追撃を掛けようとグリュウはヤシャをフルブーストで接近させる。
が。
『隊長は殺らせないわよ!!』
グリュウの上からアイリが襲う。
『甘い!!』
だが、グリュウはその攻撃に反応する。
舞うように機体を回転させJグラップラーが振り下ろしてきたクラブを回避し逆に回転による遠心力で回し蹴りを決める。
『痛ぅっ!』
『アイリ! テメェェ!!』
蹴り飛ばしたアイリを無視しグリュウは次にキースを狙う。キースはそれを理解し相手に近寄らせないように攻撃する。
だが、キースのJファー・カスタムが放つ弾幕をグリュウは機体を巧みに操り次々と避け、時にはカタナで斬り払ったりミサイルなどはサブマシンガンで撃ち落したりする。
『クソォ!』
『如何したッ! その程度か!!』
『まずッ!』
キースに接近したヤシャによる斬撃が走る。それでもキースは何とか紙一重で回避するも右手に握ったサーマルライフルを両断されてしまう。
「キース!」
クロードが叫んだ直後、グリュウは直感で危険と感じ直に距離を離す。グリュウが距離を離した直後、キースとグリュウの間に数発の弾丸が通り過ぎる。
それはJフェニックスの三連ショットで、しかもいつの間にかJフェニックスは右手のカタールを手放しレーザーソードを握っている。
「キース大丈夫か?」
『あぁ、何とかな。隊長ありがとよ。今のは正直かなりやばかったぜ』
「無事ならそれでいいさ。それとキースこれを使え」
キースの傍に近寄ったクロードはJフェニックスの左手に持つサーマルライフルを手渡す。
『いいのかい?』
「ああ、構わない。だが確り援護を頼む。―――正直今の俺ではこの男には勝てない」
『ハッ! 分かったよ。俺に任しときなさいって!!』
「よし! アイリも大丈夫だな?」
二人の間にいつの間にかアイリが居た。
『当然!』
「そうか…ならば……行くぞ!!」
『『了解/yea!』』
グレン小隊は、目の前に立ち塞がる強大な敵へと再び挑む。
自身に挑むアルサレアのエース達を見てグリュウはただ一言。楽しそうに呟く。
『ふふ。このふざけた戦争に置いてこいつ等の様な者達との戦いは唯一俺が俺でいられるモノだな』
そしてカタナを構えたグリュウは武人の顔で告げる。
『来い! アルサレアの精兵達よ!! 我が剣を持って貴様等を迎えよう!!!』
そして此方も準備が完了しようとしていた。
『ゼロ。準備は良いな?』
「問題ない……が、今回の装備は少し重いぞ」
『しゃあねぇだろ』
今回の作戦においてゼロのJファー・カスタムは若干装備が追加されていた。
いつも右手に装備しているショットライフルを右腰に吊り下げ、代わりとして右手にはミサイルや敵機迎撃用のサブマシンガン。左手は最近開発されたばかりの軽量タイプのシールド:ライトガードを装備している。
「だが、重量オーバーしてるぞ」
『グチグチ言ってんじゃねぇよ。どうせ軽量型のシールドなんだから耐久力には高が知れてるから直に投棄することになるし、サブマシンガンはフルオートで撃ち続けとけばいいだろ』
「はぁ。分かったよ」
少々乱暴な物言いだが純粋に自分を心配しているアクセルの心情をゼロは理解しているので心の中で感謝する。
『ゼロ、時間だ』
「了解」
そして開幕の知らせは鳴った。
『進路上に問題なし! カタパルトもご機嫌だ! オッシャア!! 行けえぇッッゼロォォ!!! 行ってデッカイ花火を上げて来い!!!!』
「ふっ、了解だ! №ⅩⅢゼロ・エグジス、Jファー・カスタム! 発進する!!」
ゼロの発進の合図と共にカタパルトは盛大に火花を散らし勢いよくゼロの乗ったJファー・カスタムを虚空の戦場へと送り出す。
後書き
チャプターⅠ-ⅩB終了
次で漸くチャプターⅠが終了します。
そしてチャプターⅡから物語が一気に進行する予定です。
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