ヴァリムの資源衛星【ザーベイル】は地表が薄紫の光を発し、常に低重力状態。そして豊富な鉱物資源と研究及び軍事施設が幾つか混同する衛星で、ヴァリムの宇宙での生命線でもある。
「定時連絡。こちら第4510小隊。異常無し」
『了解、第4510小隊は規定のポイントに到着後、引継ぎの部隊が来るまではポイントにて待機せよ』
「了解」
哨戒任務を行っている第4510小隊の隊長はザーベイルの司令部に定時連絡を報告する。
「はぁ~」
『退屈っスねぇ~』
定時連絡を済ました隊長が不意に溜息を付くと部下もそれに同調するように声をかけ、もう一人の部下が不満を呟く。
『ホント、こんな退屈な任務ばっかだと腕が錆びちまいますよ。あ~ぁ~これならアルサレアが攻めてくれば多少はマシになるんだがなぁ』
『はははっ、そいつはいい!』
「ぼやくな、とっとと規定のポイントに行って任務を終らせるぞ。そうしたら、基地で酒盛りするなりナンパするなり好きにしろ」
『『りょうか~い』』
部下の不穏当な発言を軽く咎め、隊長はまた溜息を付く。
暫くして規定のポイントに到着し、後続の部隊に通信を繋げる。
「こちら第4510小隊。規定のポイントに到着した」
『こちら第4506小隊。了解した。こちらの到着まで今しばらく待っていてくれ』
「了解。なるべく早く頼む、部下が退屈と五月蝿いんだ」
『ククッ、そうか、分かった。できるだけ急いでやるよ』
「頼んだ」
通信を切り、一応任務どおりレーダに目を走らせたり、モニターに映る何の変わり映えの無い宇宙を見たりを十分以上飽きもせずにボケ~と眺めていると、センサーに友軍の反応が出る。どうやら引き継ぎの部隊が到着したようである。
『こちら第4506小隊。任務ご苦労。後はこちらに任せてそっちは基地でゆっくり寛いでくれ』
「了か『ギャアァァァー!』何だ!?」
4510小隊の隊長が返事を返そうとした瞬間、行き成り4506小隊のヌエが爆散する。
『何が起こった!?』
『分かりません!! 行き成り、グアァァァ!!』
『なっ!?』
「これは…狙撃か!」
『隊長、ここは宇宙ですよ!』
「じゃぁ、他に…!」
部下の否定の言葉に怒鳴り返そうとした直後、その部下の機体がコクピットに弾丸をめり込ませ、また一つ虚空の空に命の花火が咲く。
『本部! こちら哨戒任務中の第45ッ』
『どうした! 何が起こった? 報告せよ』
司令本部に報告しようとしたが第4506小隊の隊長も狙撃によって命を散らす。それを目にした4510小隊の隊長は機体を反転させ、ザーベイルに戻ろうとする。
が、背中を見せた直後、機体に何かが当たったような大きな揺れがきた。機体のステータスを確認しようとした瞬間、彼は閃光に包まれた。
第4510小隊と第4506小隊が狙撃を受けた地点から5kmほど離れた場所に一機の漆黒のPFが居た。
「こちら、№Ⅲ。哨戒中と思われる敵部隊の殲滅を確認」
『了解した。―――――全機!! 作戦開始!!!』
ザーベイル周辺宙域を哨戒中の部隊を全滅させた暗部の№Ⅲホーンド・バレル大尉の報告を聞いたダグオン作戦司令官は待機している全部隊に合図する。
それに呼応するように各部隊が一斉にバーニアを噴かしザーベイルに向けて一直線に進む。
一方、哨戒中の各部隊が相次いで通信途絶に機体のシグナル消失などあってザーベイルの基地は騒然としている。そして広域レーダを見ていた一人のオペレーターが基地司令に向けて室内に響くほどの大声で報告する。
「司令! レーダに反応が! アルサレアの部隊です!!」
「矢張りアルサレアかッ! 規模はどのくらいだ!!」
「規模は……レーダに感知しただけでも100機以上!」
「伏兵が居ないか直ちに監視衛星に調べさせろ」
「駄目です。アルサレアが侵攻している宙域の全監視衛星の反応がありません!」
「なんだとッ!! おのれぇ! クソ、急いで全PF隊を発進させろ! 奴等をザーベイルに近づけさせるな!!」
「司令、【オーガル・ディラム】は!?」
「オーガル・ディラムは準備ができ次第、発艦! 護衛は積載してある部隊にさせろ! 但し、基地からあまり離れないように艦長に伝えておけ!」
「了解!」
オペレーターや司令の怒号が響く指令所に通信が入る。基地司令はその通信を開く、通信ウィンドウには実年齢よりも少々老けた一人の青年が映される。
『指令。グリュウ・アインソード大尉であります。我が部隊の発進準備は整いました。発進許可を』
「グリュウ大尉か! 発進を許可する。アルサレアども蹴散らせしてこい!!」
『承知!』
「全機、準備はいいな?」
グリュウの声に応じるように各所から了解の声が上がる。
「よしっ、全機出撃! アルサレアに我等が大儀を示すのだ!!」
基地のハンガーから一機の黒いヤシャが虚空の空へ向け飛び上がる。
グリュウのヤシャに続いて彼の揮下部隊の多数のヤシャとロキが飛び上がる。またそれに続くように基地の他の部隊が発進する。
程なくして両軍はぶつかり合う。
ヌエで構成された部隊にJキャノンがMLRSを撃ち込み、その隙にJファー・カスタムが切り込む。別のところではJグッラプラーで構成された部隊が持ち前の装甲と機動性で斬り込み、その背後からJキャノンやJファーの遠距離カスタム機などの支援砲撃が飛ぶ。
ロケット弾、ミサイル、徹甲弾、榴弾、レーザーなどの光学兵器の光、PFのブースタ炎が飛び交う。
現在の戦況はほぼ互角。
アルサレアは精鋭部隊の投入により撃破数を多く重ねているが、ここはヴァリムの宇宙での本拠地であるため撃破しても一向に敵が減る様子は無い。
『貰ったぁッー!』
一機のJファー・カスタムが右手に持つレーザーソードの強化タイプ“フォースソード”で2機のロキを撃破する。
『テメエェェェ!』
だがそこにHMを発動した3機のヌエがレーザーソードを構えて斬りかかって来る。Jファー・カスタムのパイロットは回避しようとブースタを噴かす。
だが
『グゥッ! なんだ!?』
ヌエのレーザーソードを持つ右腕が行き成り吹き飛ぶ。そのヌエのパイロットが声を発した直後に残りのヌエも足を止めてしまう。突然の自体に唖然としてしまう3機のヌエとJファー・カスタムのパイロットたち。
遠くから何かが煌く。傍目から見ればそれは星の輝きに見えたかもしれないが、それは間違い。
何かが煌いた直後、光速で何かが飛来する。それは瞬く間にヌエを撃ち抜いた。
『おい!?』
『隊長! ウアァァ!!!』
一機のヌエが爆散した、数瞬も待たずまた一機のヌエが光速で飛来した何かに撃ち抜かれ宇宙の塵となる。
『チクショウ! 一体なん……』
二の句も発する暇も無く、隊長機であるヌエもまた宇宙の塵と化した。
『一体何が……』
あっという間に3機のヌエが撃破されたことにJファー・カスタムのパイロットは呆然となる。
「ひゅ~。今日も絶好調だな」
3機のヌエを撃ち抜いたバレルは口笛を吹かす。
現在彼は右目の眼帯を外している。代わりに右目は義眼となっているがその義眼に一本のケーブルが延びている。
彼は普段左目しか見えてないがPFを乗るときはこのケーブルを繋げることによって視界をPFと同調させる。右目に映るのはPFと同じ視界であり、彼はその視界を通して狙撃を行う。そして左目はコクピット内の計器類を見る。
但し普通の人間にはこのような芸当はできない。人間の目は隻眼でもない限り基本的に両目を持って物事を認識する。片方で上をもう片方で下を見るなんてことはできない。だがバレルの目は変わっており、彼は右目が潰れたときから片目で過ごしてきたので、その所為か左目が異常に発達したのである。そのお陰か彼は文字通り片目で上をもう片目で下を見るなんて芸当が可能になったのである。勿論これはPF搭乗時のみに限ったことで、普段の生活でそのようなことはできない。これは戦闘時にのみに特化したことである。
「んぁ?」
機体が警報を鳴らす。レーダを見ると敵が接近してきたようである。
『こそこそとフザケタ野郎が!』
大量に散らばる隕石群に隠れていたバレル大尉を見つけた6機のヤシャとロキがAAFミサイルとMLRSを撃つが、それらは隕石に当たるだけで一発もバレル大尉に命中しない。
「やれやれ、見つかったかぁ」
面倒臭そうにぼやくが、彼の行動は早い。手に持っていたS(スナイパー)レールライフルを素早く右肩のAWラッチに収め、両腕のMガントレットを変形させる。
変形したMガントレットは西部劇に出てくるようなリボルバー型の拳銃:カウボーイショットになる。更にカウボーイショットを両手に装備することにより特殊BURM【二丁拳銃】が発動する。
二丁のカウボーイショットを構えたバレルのJカスタム:スナイプマスターは、まさに西部劇に出てくるガンマンのように撃ちまくる。所謂ガンカタと呼ばれる撃ち方をし左右の腕は別々の敵を狙う。放たれた弾丸は的確に敵機のコクピットや動力部のみを正確に撃ち抜く。
撃ち抜かれたPFは脱出ポッドを吐き出す間も無く爆発、この間10秒も経っていない。まさに早業である。
カウボーイショットを元のMガントレットに戻し、右肩からSレールライフルを再び取り出し構える。
「さ~ってお次はっとぉ!」
銃口から光が迸り光速で弾丸が飛び出す。
そしてまた一つ戦場で閃光が煌く。
それは命が散る光。
「司令! 防衛線を突破して来た部隊があります!」
「データに無い新型と思われる機体がありますが僚機と思われる機体から照合確認……これは! グレン小隊です!! 防衛線を突破して来たのはグレン小隊と判明!!!」
「なんだとッ!! 防衛部隊は何をしていた! 直に後方で待機している部隊を引っ張り出せ!!」
防衛線を突破したグレン小隊はそのまま基地に攻め込むでもなく、ザーベイル地表に顔を出している鉱石に攻撃をしたり襲い掛かってきた敵部隊の相手をしたりしていた。
だが、そんな彼等に一機のPFが猛スピードで接近してくる。
『オペレータールームよりグレン小隊へ! ヤシャが一機そちらに接近中です!』
『『!!』』
「現れたか!」
フェンナの報告に全員がレーダに映った光点を睨み、体を強張らせる。
「二人とも行くぞ!」
『『了解!/Yea!』』
クロードはレーダから目を離し、モニターに映る相手を見る。
そのモニターの先には一機の黒いヤシャ。
ヤシャは右手のカタナを構える――ヤシャの構えに呼応するようにクロードのJフェニックスも右手のカタールを構え振り被る。
二機は互いに最高速でぶつかり合う。
お互いが構え振り上げた得物が同時に打ち合わせられ摩擦による火花が散る。
『これで三度目だな―――――アルサレアのエース!!!』
「グリュウ―――――グリュウ・アインソード!!!」
後書き
チャプターⅠ-ⅩA終了
次回はグレンリーダーVSグリュウ
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