VSグレンリーダー後編

 

 

背中の機甲の翼を広げ、ゼロのJファー・カスタムは今回のバージョンアップで発射時の反動と連射速度が向上した右手のショットライフルを撃ちながら接近する。

対するクロードもJフェニックスの左手に持つサーマルプラズマライフルを撃ちながら接近する。

(レーダにノイズが多いな、あの機体が装備するウィングの能力か)

クロードはそのまま、サーマルライフルと同じく左腕の前腕に取り付けられているMガントレットを放つ。

Mガントレットから放たれる3発のミサイルがサーマルライフルの光弾と一緒にゼロを襲うがゼロはそれらを全て回避する。だが回避すればまた次のミサイルが襲い掛かり、遠距離攻撃の手数が少ないゼロにとってはジリ貧にしかならず弾の数にも差があるためこのままでは自身の勝機が無いことを理解しているゼロはどうすればいいか模索する。

(クソッ、接近できない。どうすればいい? 向こうは遠距離を維持しているから攻撃の濃度は高くても回避には問題ない。でも、こっちの遠距離武装はショットライフルのみ、手数も弾数にも差がある。いや! 待て! もう一つあるじゃないか、遠距離武装が!)

ゼロはそのことに気づくと一旦後退し近くにあるデブリに身を隠す。

『成る程、いい判断だ。遠距離時の武装に差があるなら障害物を盾にとってこちらに無駄弾を撃たせるか。だが!』

クロードはそのまま攻撃を継続しゼロが隠れたデブリを破壊する。身を隠すものを無くしたゼロは今度は隕石に身を隠そうとする。それを見たクロードは再び隕石を破壊しようとした瞬間、ゼロが身を隠そうとした直後、2発のミサイルが飛んでくる。突然現れたミサイルをクロードのJフェニックスはそれをWCSがロックしサーマルライフルで撃ちぬく。

ミサイルが撃ちぬかれた直後、二つの熱源が宙域に広がる。

『なに!?』

クロードは自分が迎撃したのが高熱照明弾だと気づく。爆風によりJファー・カスタムの姿を見失ってしまい直にレーダや光学センサー、WCSのロックオン機能を活用してゼロを探すが、それら全てにゼロのJファー・カスタムの反応は見られない。

だが、熱源センサーに切り替えた途端、レーダに反応が出る。

『3時の方向! 右かッ!』

クロードは直に反応し右手に装備する軽量タイプの実剣:カタールを構える。

「はぁッ」

クロードが構えた直後、右からゼロのJファー・カスタムが現れる。そしてその左手に持つレーザーソードで斬りかかるもJフェニックスが構えたカタールによって防がれる。クロードはレーザーソードを強引に撥ね退け至近距離からMガントレットを放つ。だが至近距離から放たれた3発のミサイルは明後日の方向に飛んでいく。

『なッ! WCSが機能していないだと! そうかこれが原因か!』

そうレーダやセンサーに引っ掛からないのも全てはJファー・カスタムが装備するジャマーウィングのお陰である。

2発の高熱照明弾をワザと迎撃させ、高熱照明弾の広範囲による爆発とそれに伴う高熱はPFが発する熱を遮り一時的にだが相手を誤魔化す。更にゼロのJファー・カスタムはジャマーウィングを装備しているのでそれを使用すれば相手の各種センサーから自身を隠すことが可能にし更にここは宇宙、周りは薄暗く目視による機体判別がし辛いゼロの機体自体、機体色が蒼色なのでそれが迷彩の役割を果たし余計に視認し辛い。

「これなら!」

ゼロはショットライフルを手放し右手にもレーザーソードを装備して斬りかかる。だがクロードも歴戦の戦士であり特務小隊の隊長。そう簡単にはやられない。

ゼロが二刀流を持って斬りかかれば、クロードはカタールで防ぎ機体を巧みに扱い斬撃を回避する。だが全てを防ぐことは出来ず徐々にだが機体にダメージを負う。

『クッ、やるな!』

「接近戦に持ち込んだ以上このまま押し切る!」

ゼロの攻撃はより苛烈になる。二刀を巧みに使い、袈裟懸け、逆袈裟懸け、唐竹、突き、昇竜、一文字、十字、逆十字と強烈な連続斬りを行う。勿論クロードもそれらを先程と同じようにカタールで防ぎ機体を左右上下に振りながら回避するがゼロの攻撃の前に防戦一方になり今度はクロードがジリ貧になる。

更に今度はPFによる蹴りやレーザーソードを持ったままの殴打も行う。

『うっ! このままではッ!』

ゼロのラッシュの前にJフェニックスの損傷率は徐々に上がる。

 

「おいおい、マジかよ」

その様子を見るキースは顔を引きつらせる。

「そんな隊長が押されるなんて……」

同じくアイリもその光景に呆然とする。

「ねえアイリちゃん。私、詳しくないからよく分からないけど、相手の人の腕ってどうなの?」

クロードの戦いを見ながらフェンナも顔に悲壮感を漂わせるもクロードを信じて戦いを見守る。そんな中ふと感じた疑問をアイリに投げかける。

「え? 相手の腕? う~ん、そうねぇ、とんでもないってのが素直な感想かな。正直、格闘の腕だとアタシの方が上だけど剣の腕や近接時の判断とかかなり上手いよ」

「それだけじゃねぇ」

アイリの言葉を引き継ぎ今度はキースが話す。

「相手さんの射撃の腕や隊長に接近しようとした時の機転などの状況判断もかなりのもんだ。ありゃぁかなりの戦い慣れしてるぜ。まあ、ぶっちゃけて言うととんでもなく強いってことだな」

「そう…ですか」

それらを聞いて表情を歪めながらフェンナは再びモニターに顔を向ける。

「まっ、大丈夫だろ! 隊長はいつもピンチを潜り抜けてきたんだ。なら今回も大丈夫さ。俺等が信じてやらねえでどうすんだ」

だがそんな空気を吹き飛ばすようにキースが明るい声で諭す。自分達の隊長なら大丈夫だと。

「そうだよね、隊長ならどんなピンチでも大丈夫だよね。フェンナも隊長を信じて上げなきゃ!」

「うん、そうだよねアイリちゃん、ありがとう」

「おいおい! フェンナちゃん、俺っちには?」

キースのムードメーカーとしての気質が周りの空気を和らげ、三人は自分達の隊長を信じて再びモニターを凝視する。

 

またこちらも動き出そうとしていた。

(流石にこれ以上はマズイか、仕方ない。本当なら奥の手としてまだ取って置きたかったがそうも言ってられんな)

クロードは決断する。そして一つのコマンドを入力し勝負を賭けようとフルブーストで接近する。ゼロもそれを理解しレーザーソードを振り被りJフェニックスのカタールを受け止める。

2機は互いに拮抗し鍔迫り合いの状態になる。

Jフェニックスのカタールは徐々にレーザーソードの熱によって刀身が赤く赤熱しだし徐々にだが刀身が溶け出す。だが、この状態こそがクロードが待ち望んだ瞬間。

『貰ったッ!』

クロードが叫んだ直後、Jフェニックスのウィングの3つの大型の羽が分離し、左右合わせて6つの羽がJフェニックスの肩越しに滞空する。

変形兵器:3連ショット

そう呼ばれる新型の兵器カテゴリーの一つである。

「なッ!!」

ゼロは突然目の前に現れた銃口に驚き目を見開く。

『行けえぇぇ!!』

クロードの声に呼応するように両翼合わせて6つの銃口から弾丸が放たれる。

「ぐぅッ!」

それを至近距離で全弾受けたゼロは急いでJフェニックスから距離を離すが、距離を離した直後、Jフェニックスから3連ショット、サーマルライフル、Mガントレットの波状攻撃が襲い掛かる。その高密度の攻撃にゼロは追い込まれ今度はゼロのJファー・カスタムの損傷率が跳ね上がる。

『逃がすかッ!』

「ちぃッ、機体のダメージが!」

(ああ、流石だよ! 流石アルサレア随一と呼ばれるだけはある。だが、俺も負けるわけにはいかねえんだよっ!)

「だから使わせてもらうぜ」

ゼロは決断する。

レーザーソードの光剣を切り元の場所に仕舞う。そして遂に今まで左腰に挿していたカタナ:天(アマツ)を抜く。

それを見たクロードは目を細め攻撃の手を一旦止める。

(カタナを抜いた。つまりは本気と言うわけか……)

「斬る」

ゼロは呟くと同時に天を両手で構えクロードに突撃する。対するクロードもまたそれを迎撃しようと攻撃を再開する。だがそれらの攻撃は全てかわされるか天で切り払われる。

『何だとッ!』

「はあああぁぁぁぁぁッッ!!」

烈火の咆哮と共に振るわれる斬撃は3連ショットの弾丸を斬り裂き、サーマルライフルの光弾は弧を描くようにして斬り払われ、Mガントレットのミサイルは元々余り誘導性能が高く無いので機体を左右に振るだけで容易く避けられる。

そして再度接近したゼロは天を上段から振り被る。

『マズイッ!!』

クロードは咄嗟にカタールを構えて防ごうとする。

だが

「はあぁッ、【一剣一式:鎧断(いっけんいっしき:よろいだち)】!!!」

――【一剣一式:鎧断】、それはゼロが士官学校時代に同じ部隊に居た少女“ナガレ=ジングウ”に教わった【ジングウ流】という剣術をゼロが独自に我流へと昇華させた剣術でゼロはこれを【我剣】と呼んでいる。――

ゼロの咆哮と共に放たれる斬撃。それは見事、Jフェニックスのカタールを一刀両断する。

『なッ!!?』

カタールが両断されたのを一瞬理解出来なかったがクロードは直に意識をゼロに向ける。そして両断され刀身が半分となったカタールを投げ捨て腰部リアアーマーに予備として装備してあるゼロのJファー・カスタムと同タイプの小型レーザーソードを装備する。

「まだだ! 【一剣三式:雷突(いっけんさんしき:らいとつ)】!!」

『クッ!』

近距離から放たれるブーストを利用した高速の突きをクロードはなんとか避けるもゼロはその突進時の慣性を利用して一撃離脱の突進攻撃を続ける。だがクロードもやられっ放しという訳でもなく、突進時は比較的無防備なのでその時を狙って攻撃、またはの擦れ違う直後に斬撃を見舞うなどをして少しずつだがダメージを与える。だが同時にJフェニックスの方にも裂傷が少しずつ増えていく。

そして幾度目かのゼロの突きが襲い掛かる。それを再び迎撃しようとレーザーソードを構えた直後、ゼロはブースタを全力で逆噴射で噴かしブレーキを掛ける。

『!?』

今まで突きしかしなかったJファー・カスタムの突然の動きにクロードは予測できず目を見開く。

「【一剣七式:独楽斬(いっけんななしき:こまぎり)】!!」

宇宙での姿勢制御用のアームフレーム内に内蔵されたサブブースタを思いっきり噴かす。そして独楽のように回りながらゼロは斬りかかる。クロードはその斬撃を鎧断を防いだようにレーザーソードを構えてしまう。回転による遠心力が加わった強烈な斬撃はそのレーザーソードを弾き飛ばす。

『ぐぅぅ。だが! まだだ!』

迫る斬撃をクロードは機体を宙返りする要領で機体を縦に回転させる。そして下から這い上がってくる足蹴りがJファー・カスタムの天を持つ右腕を蹴り上げる。

「なにぃぃッ!」

『これで止めッ!!』

突然のことにゼロは仰天し体制を崩してしまう。そしてその隙をクロードが見逃す筈も無くレーザーソードの斬撃が襲い掛かり、更に3連ショットやサーマルライフルの光弾などが一斉に放たれる。

それらの猛攻撃の前にゼロは成す術も無く機体の損傷率が跳ね上がり。コンピュータにより撃破判定が下る。

 

「…負けた…か、まあ仕方ないのか?」

撃破判定が下りシステムが一時的にダウンし真っ暗になったコクピット内でゼロは自問する。そして少しした後システムが回復しコクピット内が多少明るくなる。それを確認した顔を上げたゼロの目の前にJフェニックスが居た。

相手から通信が入り通信ウィンドウにクロードの顔が映る。それに対しゼロは敬礼をもって返答する。

「グレンリーダー、今回はありがとうございます。お陰で良い経験になりました」

『いや、こっちも良い経験に成った。此方こそ礼を言う』

ゼロの答礼にクロードも生真面目に返す。

「ですが」

『?』

「次が有ったら負けません」

ゼロの言葉を聞いてクロードは目を見開き驚くが直に表情を崩し。

『ふっ、いいだろう。だが次も負ける積りは無い』

二人は言葉を交わしながらそれぞれの輸送船に帰還する。

 

 

 

後書き

チャプターⅠ-ⅧB終了

ゼロVSグレンリーダーですが、勿論勝敗はグレンリーダーの勝ちです。ですがこの戦いでよりゼロの異常さが際立ったと思います。

それと我剣だとかいうのも出てきましたが、まあ自分でいうのもアレだけど痛いっていうのは分かってるさ。

でも自分の拘りとしては主人公ていうのは一定以上の強さが無いと自分としては嫌なんですよね。

てんで無力だったり最初から馬鹿みたいに強かったりするのは論外だけど、ある一定以上の強さを持ち何かしらの過去やその力を持つに至った理由、そしてそんな主人公の前に立ち塞がるより強大な壁が現れより強さを求めようとするそういった登場人物が自分は好きなんです。

さて、この後は今作戦のブリーフィングを行いそして前中後編に分けて宇宙での戦いを描く予定で、それで漸くチャプターⅠは終了しチャプターⅡに入る。という流れです。

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