反撃開始
それを聞いたこの場に居る全ての衛士、全ての砲撃隊員、全てのHQに居るCP将校は目を耳を疑った。
だが、事実。
故に多少の時間を要するもそれを理解した途端、あちこちで喝采、咆哮などが飛ぶ。
『アイツ等! 本当にやりやがった!!』 『すげぇ! すげぇぞ!!』 『こいつ等本当に人間なのかよ!』 『これが…これが! レイヴンズネストの力』 『は、はは、はっはははは!』 『おいおいおい!! 夢じゃねぇよなっ!!』
たった2機の活躍によって戦場で尤も脅威が高い光線種を排除したのだこれで浮かれるなと言うのが無理な話である。
されども排除したの光線種のみ、まだ他のBETAが残っている。戦闘はまだ終っていない。それを理解しているアフリカ大陸の英雄は全部隊に指示を飛ばす。
「貴様等! 浮かれるのもいいが、戦いはまだ終った訳じゃないぞッ! 最後まで気を緩めるな!! この場にいるBETA共をぶっ潰すぞッ!!」
『Yes,Boss!!』
「HQ! 前方に居るレイヴンズネストを下がらせて戦車隊に支援砲撃を慣行させよ!!」
『了解!』
アーロン中佐からの指示は同じくHQに居るシーラ達も聞いている。
「ジノーヴィー、聞いたわね。砲撃に巻き込まれたくなかったら急いで離脱して」
『了解』
ジノーヴィーに通信を繋げて急ぎ離脱するように伝えると今度は別の方に通信を繋げる。
「こちらレイヴンズネストのオペレータのシーラ・コードウェルです。聞こえてるかしら? グロリア・ファーロング大佐」
ルシフェルを抱えて安全圏まで下がる途中もグロリアは逐次報告される情報を整理しながら各所に指示を飛ばす。その途中、抱えているルシフェルから接触回線でグロリアに通信を繋げられる。
『こちらレイヴンズネストのオペレータのシーラ・コードウェルです。聞こえるかしら? グロリア・ファーロング大佐』
グロリアに通信を繋げてきたのはレイヴンズネストのオペレータのシーラ。
「こちらイギリス・ロイヤルガードのグロリア・ファーロングです。何か御用でも?」
『貴女に頼みたい事があります。聞いてもらえますか?』
グロリアは一瞬逡巡するも直に答える。
「構いません。助けられた恩もありますから何なりと」
『では急いでルシフェルの中にいる人物の介抱をお願いします』
ルシフェルと聞いて何の事か一瞬分からなかったが、今抱えてる機体を指しているのだと理解した。
「分かりました」
『ありがとう。……コクピットの開錠はこちらで操作します』
「了解」
シーラからのお礼の言葉が述べられた後通信が切れる。
そして最後方に投棄されている補給コンテナの前に着き、ルシフェルを静かに下ろし急いでグロリアはブラフォードから降りる。ルシフェルの足元に辿り着くとコクピットが開く。グロリアはそこへ猫科の動物のようにひょいひょいと手を使わずに上っていく。そしてコクピットに辿り着いたときグロリアは驚愕する。
「な、貴方はっ!!」
グロリアはシートにぐったりともたれ掛かっている人物がゼロだと気づき驚く。ヘルメットを被りバイザーが降ろされているが間違いなくレイヴンズネストの一人ゼロだ。
『聞こえてる?』
「えっ、ええ。それで私はどうすればいいの?」
シーラの声にグロリアは平静を取り戻す。
『まずヘルメットを外して』
グロリアはゼロに近づき顎の辺りを探り止め具を確認するとそれを多少四苦八苦するもパチンという音と共にヘルメットのホルダーが外れ、そのままヘルメットを外すとゼロの蒼く長い髪が踊る。
グロリアはゼロの顔を見てその美しい表情を歪める。
ゼロの顔は青白いを通り越して土気色で口・鼻・耳からは血が流れている。
『次にシートの脇の方に医療キットがあるからそれでまずガーゼとかで血を拭いて、その後はキットの中にある無針タイプの注射器を首筋に刺して』
シートの脇の方を探ると言ったとおり医療キットが出てきたので言われたとおりガーゼなどでまず血を拭う。血を拭った後、こちらも言われたとおりキットの中にあった注射器を取り出しヘルメットを取って幾分か首筋に余裕がある部分にその注射器を刺す。中の液体が何なのか分からないがどんどん注射器内の液体がゼロに入っていく。
「終ったわ、注射器はどうすればいいの?」
『捨てて構わないわ』
言われたとおり注射器を適当に投げ捨てる。そして次の指示を待つがシーラは一向に次の指示を出さない。
「? どうしたの?」
『………ねぇ、今ゼロ気絶したまま?』
「え? え、ええ、気絶したままだけど」
行き成りのことによく分からないがそうだと答えそれが? と首を捻る。
『はぁ、仕方ないわね』
「?」
『貴女、キスの経験は?』
「はっ? え? え? ええぇぇ! な、無いわよ!」
シーラの突然の爆弾発言にグロリアは大声を上げる。しかし無理も無いというか上げるなというのが無理な話だ。行き成り面識の殆ど無い人物にキスの経験を問われたら普通は驚くものである。
ちなみに本人も言うとおりグロリアにキスの経験は無い。ましてやまともな恋愛すらしたことが無いのである。
BETAとの戦争で男性の比率が大きく減少している昨今、女性が戦場に立つ機会が珍しくなくなり恋愛している暇が無いのが米国以外の人類の実情である。それでも別にグロリアに出会いが無い訳では無い。ただ釣り合う男が居ないだけでグロリア自身は人並みに恋愛をしたいという当たり前な想いはあるし彼女自身類稀なる美貌の持ち主であるため男性の人気はかなり高い。
だが何故か男は寄ってこない。
一時期は結構有ったのだが何故か翌日には彼女に交際を持ち込んだ男はぼっこぼこの半殺し状態プラス全裸に剥かれ基地の屋上に吊るされるという事件が多発しそれ以降一切男は寄って来なくなったのだ。ちなみにその理由はグロリアをお姉さまと慕うアリスやクリスを筆頭とする自称“グロリアファンクラブ(別名グロリア親衛隊)”によっての犯行であるのだがそれをグロリアが知ることは無い。そういった背景もあってグロリアは女性にはやたらとモテルのだが男性には全然モテナイのである。
勿論それ以外にもどこぞの貴族の御子息とやらや軍や政府の高官が彼女に色々と迫った事があったが下卑た下心が見え見えなので全く相手にしなかった。ただそんなことをすればやたらと高潔(笑)な自尊心やプライドなど色々刺激された者達が何かしてきそうなのだがそういった手合いは全て女王による鶴の一声で消し飛ばされる。
そおいう様々な理由もあってグロリアは驚きの声を上げる。
『そう。まあいいわ』
「よくないわよ!」
『知った事じゃ無いわよ、それにこっちは彼の命が掛かってんのよ、なら貴女の気持ちを汲むような時間も情状も無いわ。本当なら今すぐにでも私が行きたいのだけどそれを状況が私の役割が許してくれない。だから貴女に頼むのよ』
そう言われればグロリアとしては黙るしかない。確かにシーラの言うとおりゼロの命が掛かっているのだグロリアの気持ちが如何であれ無視するしかない。
「…………分かったわ」
『それじゃあ伝えるわよ、医療キットが有ったシートの脇の反対側に携帯食料にミネラルウォーター、ゼリータイプの栄養ドリンクが有るからその中のミネラルウォーターで口の中の血を洗い流して』
「どうやって?」
『意識が覚めない以上、口移ししか無いわ』
つまりはそういうことか、とグロリアは理解する。勿論、納得した訳でない。
グロリアは一度ゼロの方を向くが当のゼロは一向に目を覚まさない。溜息を吐いた後グロリアは決意を固め口に水を含みゼロの顔を上に向けグロリアも顔を近づける。その頬から耳まで羞恥か或いは別の理由か朱に染まっている。
(うぅ、恥ずかしい。でも仕方ないのよ、そう仕方ない。……えっと、それじゃぁ失礼します?)
「んぅ」
そう内面で自分を納得させゼロに口移しで水を飲ませる。そしてグロリアが口を離すと。
「ぐ、かっはっ、ごほごほっ………くぁあぁ、はあっはぁはぁ」
自身の喉を潤し同時に鉄の味が口内を駆け巡る感覚にゼロは咳き込む。だがそれによってゼロは意識を覚醒させ目を薄っすらと開く。それに気づいたグロリアはゼロに声をかける。
「あっ、目が覚めた?」
「はぁはぁはぁはぁ、んぅむぅ。あ、あぁ、アンタか」
「体の方は大丈夫?」
「最悪だ。特に内臓が酷い……二日酔いなんか目じゃねぇ…昼に摂ったサンドウィッチやコーヒーが逆流しなかったのが奇跡だ」
「それだけの口が利ければ大丈夫そうね」
グロリアはゼロが一先ず大丈夫だということを分かり安堵の溜息を吐き、それからシーラにゼロのことを伝える。
「シーラさん、彼が目を覚ましたわ」
『ゼロッ!』
「聞こえてる。コンディションは最悪だが大丈夫だ」
『そう、良かった』
そして幾分か余裕を取り戻したゼロはシーラに現状の確認をする。
「シーラ、戦闘はどうなった? それとルシフェルの状態は?」
『慌てないで。先ず戦闘の方は貴方が気絶した後はジノーヴィーたちが光線種を全て排除したわ、今は各部隊が残存するBETAと戦闘中だけどなんらかの問題が発生しない限りは大丈夫。次にルシフェルの状態だけど、エネルギーのチャージングは終了したけど戦闘レベルまではもう少し時間が掛かるわ。まぁ、その体の状態じゃもう戦闘は無理だから貴方は終るまで大人しくしていること』
「はぁー、了解。今回は大人しくしてる」
『それと彼女にお礼をちゃんと言いなさいよ、貴方の介抱をしてくれたのは彼女なんだから』
それを言われてゼロは初めて気づいた。確かにヘルメットが外されていたり吐いて流した血が拭われていたりと自分をここまで介抱してくれたのは今ここにいる彼女以外居ない。
「あぁ、ありがとなグロリア……さん」
首を少し傾けながら言い辛そうに一応ゼロはちゃんとさん付けで呼び、グロリアは驚くも直に表情を緩め微笑する。
「ふふっ」
「な、なんだ? やっぱ軍人は階級とかで呼んだ方が良いのか?」
ゼロは自分の言い方に問題があったのかと不安になるがグロリアはそれを笑いながら否定する。
「クスクス、ごめんなさい。でも無理にそういう風に呼ばなくても結構よ、貴方が呼びやすいように呼んで構わないわ」
「あ、あぁ、分かった」
グロリアはゼロのその様子に不謹慎ながらも少し可愛いと思い。またゼロもグロリアの笑顔に少し見惚れてしまった。
そうして二人の間に甘い雰囲気が漂うがそうは問屋が卸さない。二人の間にシーラが何時もよりも低い声音で話しかける。
『お話は終ったのかしら?』
「「!?」」
シーラの声に二人は揃って肩を震わせる。
「ああ、問題無い」
『そう、それじゃあゼロ、貴方まだ飲んでない薬があるから急いで飲んで。グロリアさん、貴女は早く補給を済まして戦線に復帰したら?』
「「りょ、了解」」
二人は揃って声を上げ、その声を聞いたシーラは通信を切り、通信が切れたのを確認した二人は大声で笑い合う。
「くっ、ははははは!」 「ふふ、あはははは!」
一頻り二人は笑った後、ゼロはグロリアを見詰め。
「グロリア、もう一度礼を言う。ありがとう。―――そして、幸運を祈る」
グロリアもゼロを見詰め。
「こちらもお礼を言うわ、助けてくれてありがとう。―――また後ほどお会いしましょう」
お互いがそれぞれ相手に感謝の言葉を述べ、グロリアはゼロから離れ急いで自機の方に向かい、ゼロは医療キットから薬を取り出しそれを飲む。そして吐血などで無くした血を補おうと造血薬を取り出そうとしたが。
「む! 造血薬が切れてやがる。ちっ前回サタンモードを使用した後は世界を渡る前だから使わなかったんだったな、その所為で確認を怠ったのツケが着たか…………仕方ない」
そう言ってゼロは医療キットの底の方を漁り冷凍パックに保存されている緊急用の輸血パックを取り出す。
そしてそれの封を切り……………飲んだ。
ごくごくと喉を鳴らす音と共に見る見るうちに輸血パック内の人工血液は無くなっていく。
そして
「ぷっはーー。よっし、輸血完了」
ドミナントは色んな意味であらゆるものを卓越しているのかもしれない。
グロリアが戦線に復帰したときには既に大勢は決していた。
光線種が居なくなったBETAに支援砲撃の迎撃手段は無く。事実上数回の支援砲撃で半数以上のBETAを撃退、その後はフォローし切れない場合のみに限り支援砲撃を行うこととなり、現在は戦術機が残ったBETAを排除している。
「お前等! 残った弾は遠慮無く使い切っちまえッ!」
そしてこちらA-01の隊長、草薙賢吾少佐は今までの鬱憤を晴らすべく震電に積まれている銃火器を大量にばら撒く。その様はフォックスアイほどではないが、かなりの濃度を誇り悉くBETAを挽肉にしていく。
『少佐ー! あんまり撃ち過ぎるとこっちの分が減っちゃうじゃないですか、少しはこっちにも回してくださいよ』
そう言いながら草薙の横に孝之は並びその左背に積んであるプラズマキャノンの発射体勢を取り、BETAに向かって引き金を引く。発射されたプラズマ弾が多くのBETAを焼き殺す。
「はっ! お前も言う様になったじゃないかッ鳴海! だったら付いて来い!!」
『了解ッ!』
二人はそういうと、草薙は擬似OBのスイッチを叩きつけるように押し、孝之はそのままプラズマキャノンを撃ち続ける。
プラズマ弾の間を凡そ時速800kmの速度を出す震電が右手の36mmリニアチェーンガンと左肩のドラムマガジン式のガトリングガンを放ちながらBETAに突撃していく。更に震電はリニアチェーンガン、ショットガン、ガトリングガン、スラッグガンをばら撒きながら一撃離脱の戦法を繰り返す。それはまさに暴風とも謂える所業。
そしてそれに付随するように孝之も両手のマシンガンを撃ちながら戦車級や要撃級を蜂の巣にし時々ロケットで簡易的な爆撃を行う。
二人のその勇姿に触発されるように各員もそれぞれが携行する火器によってBETAを倒していく。
「はあぁぁぁ!!」
グロリアの咆哮と共にブラフォードは右手に長刀を左腕に攻防一体多目的増加装甲【イージス】を使い舞う。その剣舞を縫うようにアリスのカラドボルグが邪魔な小型種を踏み潰し斬り裂いていく。更に二人を補佐するようにクリスのトラファルガーが両手にスナイパーキャノンを保持し援護する。
グロリアは光線種の脅威が無くなった上空を飛び上がり上空にいるUNKNWOUNに今度はイージスを上下反転させ反対側に取り付けられているパイルバンカーを突き刺す。そして更にグロリアは空を駆る。残った空中に居る新種を次々と斬り殺し地へと落とす。更には上空から突撃砲で地上に居るBETAを撃ち抜く。それを見た他の騎士たちもグロリアを真似るように上空に飛び地上に居るBETAを一方的に嬲り殺していく。
「これでラストォォーー!!」
グロリアは最後の要塞級に上空からのパワーダイブを行う。強き力が籠められたその一撃は要塞級の触手がある尻尾部分を真っ二つに斬り落とし更にはそこへ目掛け突撃砲の残った120mmを全弾ぶち込む。更には各部隊のトラファルガーが装備するスナイパーキャノンが火を噴く。それらの圧倒的な力により要塞級のその巨体は地に沈む。
グロリアたちがそれを目にしたときHQから通信が入る。
『各部隊へ通達。侵攻してきたBETAの殲滅を確認、この後は国連軍アフリカ第7基地の部隊が間も無く到着しますので後は各部隊長の指示に従い帰還してください』
HQからの報告により今回の戦闘は事実上終了が告げられる。
後書き
第三章第十五羽終了
今回はゼロとグロリアとの間にフラグが立ちました。後恋愛面ということなので少しギャグというものを意識しました。
何? 恋愛原子核の武ちゃんがフラグを立ててないだと? そこは問題なしだぜ兄弟! 武ちゃんにはちゃんと第四章でフラグを立てまくるから大丈夫だ。
それと作中の震電が使った擬似OBですが、あれはモバイル版のACを参考にしました。
モバイル版のACはどのコアでもOBが可能なので、それを参考に震電などのコアプロジェクトの機体には擬似OBなるものを発動可能としております。
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