漆黒の虚空、それは全ての生命の起源であり、あらゆるものの始まりであり終わりの地でもある。
ゼロは輸送船の防護ガラスの窓から外に広がる宇宙を見続ける。
「な~に黄昏てんだよっ!」
背後から行き成りゼロを叩いたのは本来この作戦に不参加であるアクセル。
「なっ! アクセル?! 何で居るんだ!」
ゼロは突然の事に驚き、アクセルは笑いながらゼロの質問に答える。
「ああ、今回の作戦じゃあ俺が暗部のオペレータを務めるからな」
「アクセルが!! ……有り得ない」
確かに有り得ない、彼は本来のPFパイロット、到底オペレータをするような人間ではない。
「言うなよ……オレだって自分でも似合わないと思ってんだからよ。それに今回の作戦は姐さんが戦場に出るだろ。で、必然的にお前さん等を補助する人間が居ない。流石に一般将校のオペレータに任せる訳には行かない、そこで俺が選ばれたって訳だ」
「理屈としては分かるが………アクセル。お前、オペレータなんて出来るのか?」
「任せとけよ、これでもオレはオペレータの基礎講習を受けたことがある。まっ、本業には遠く及ばんがな」
それでも無いよりはマシだろ? とアクセルは言う。
確かにアクセルの言うことは間違いではない。ここが地上なら話は違うが今彼等がいるのは宇宙。宇宙では明確な作戦領域など存在しないしPFのレーダも気休めにしかならない。その為、宇宙ではオペレータ等が搭乗する輸送船や衛星基地に搭載されている超広域のレーダを頼るしかない。もしそれらのサポート無しで宇宙空間を彷徨うモノなら確実に遭難するだろう。
そうなれば全然笑えない。
徐々に無くなっていく酸素とPFのエネルギー、そして最悪は惑星Jの引力に引き寄せられ大気圏へと突入してしまう。どんなに高機動力を施したPFでも星の引力に逆らう事など出来ないし単体で大気圏を離突入など不可能。
だからこそのオペレータ要員である。
「あぁそれとお前さんに渡すモンがある」
アクセルは数枚の資料らしきものをゼロに渡し、受け取ったゼロはそれらに眼を通していく。
ゼロが受け取った資料の内容は、ショットライフルとジャマーウィングのバージョンアップ――ショットライフルなどの一部のパーツなどは定期的に戦闘時に得たデータを反映して色々と改良されている――と、天を装備したときの各種BURMシステム情報、それと相手側の武装などのスペックデータである。
「機体の方はちゃんと宇宙用に調整される。それと今回は実戦形式に沿った演習だが当然メギドの使用は禁止だ、だから代わりに爆風範囲の広い高熱照明弾を3発搭載してある」
「了解」
各種資料の重要な項目をチェックし終えたゼロは左腕の時計を確認する。
「時間だな」
「おう、精々頑張って来い! もしグレンリーダーに勝てたらオレの財布が空になるまで奢ってやってもいいぜ」
アクセルの挑発的な声にゼロは手を振って答える。
輸送船内の一室の大型モニターを前に5人の人物がこれから開始される演習に注目している。
「さて、彼が何所まで喰らいつくか見物だな」
最初に声を発したのは暗部№Ⅰのゼムン中佐。
「№ⅩⅢはアンタの教え子の一人なんだろう。ゲンジ」
「まぁな、色々と問題の多い奴だったが光るモノを持ってるのは確かだ」
そしてゼムン中佐の向かいの席で言葉を交わすのは、右目に眼帯を付けカウボーイハットを被った壮年の男、暗部№Ⅲのホーンド・バレル大尉と、嘗ての教え子を見守る此方も壮年の男、暗部№Ⅴのゲンジ=センドウ特務准佐。
「ふむ、中々の味だ、お茶に良く合う」
「そう言って頂けると私も嬉しいです」
一人だけモニターに注目せずテーブル上のセシリアが用意したお茶とお茶菓子に舌鼓を打つ目つきが悪く肌の色が不健康そうな一人の男、暗部№Ⅳのゲイツ・バーンズ技術准佐。
そして一人で全員分のお茶やお茶菓子を用意し今はモニターを見ている暗部№Ⅱのセシリア少佐。
此処に居る5人が最初期の暗部のメンバーで、後のゼロやアクセル、デニスなどを含む8人が後々暗部に入隊したメンバーである。
ちなみに今回の演習は他の部隊の人間達も観戦しているがゼロのことは知らず――キース達グレン小隊は知っている――何処かの特務部隊の人間としか知らされていない。
「む! どうやら始まるようだな」
「さてさて、お手並み拝見と行こうか」
「あれからどの程度成長したか楽しみだな」
「ふむ、興味深くはあるな」
4人がそれぞれの反応を見せる中、セシリアだけが険しい表情でモニターを見詰る。
重力も何も無い虚空に於いて二機は対峙する。辺りには少数のデブリや隕石しかない。
ゼロのJファー・カスタムのモニター上に映るのは空気抵抗を考えられた流線的なフォルムに青空を思い起こさせるような群青色の機体。
目の前の機体が次世代機エースパイロット向けのPF【Jフェニックス】
と、そこにグレンリーダーからレーザー回線による通信が入る。
『こちらグレンリーダーのクロード・シュヴァリエ少佐だ』
「暗部所属の№ⅩⅢゼロ・エグジス准尉です」
モニターに映るグレンリーダーの姿は精悍な青年でその瞳には強き意思を宿している。
また、クロードの方から見たゼロの印象は、まるで研ぎ澄まされた刃のようだ、とクロードは感じた。
『お手柔らかになゼロ准尉』
「それは聞けませんね少佐。悪いですが全力で行かさせて貰いますよ」
それを聞いたクロードは一瞬目を見開きすぐさま苦笑する。
『ふっ、確かにそうだな。全力を尽くさないのは失礼だよな、分かった。ならば私も全力で行こう。ああ、それと少佐というのは止めてくれないか? 正直いつまで経っても慣れないんだ』
「分かりました。……ではグレンリーダー……いざッ参る!!」
『来いッ!!』
その瞬間、二機は背中のウィングを大きく広げ激突する。
後書き
チャプターⅠ-ⅧA終了
後書きは次回に持ち越し
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