ルシフェル

 

 

ゼロは戦場で二つの誓いを立てる。

一つは何が何でも『生き残る』こと。

もう一つは、ある一人の『女性レイヴン』と共に誓った約束。

それはどんな時でも『誇り』を持つこと。

その『彼女』とは共に『最強の称号』を目指して鎬を削りあった。

だが共に誓った『彼女』はもうこの世にはいない。

『彼女』は特攻兵器を迎撃中に突如暴走した対最終総合プログラムで対峙した特殊AC――名を『ナインボール』――の攻撃に遭い死亡した。

『ナインボール』はその後、姿を晦ましゼロはなんとか息のある『彼女』を助けようとするが『彼女』の負った傷は到底助かるものではなく『彼女』は途切れそうになる意識を必死に繋ぎとめてゼロに最後の約束をする。

ただ一言『どんな時でも誇りを失わず生き足掻け』と。

そこで『彼女』は息を引き取った。

それがゼロと同じもう一人の『最強の称号』―――『ナインブレイカー』の称号を持つレイヴン、『イツァム・ナー』との誓いである。

だが、ゼロはあえてルシフェルのサタンモードを発動するとき、その誓いを破る。

それはまるで悪魔に魂を差し出すかのように………

 

「行くぞッ!」

ゼロはOBを発動し、BETAに一気に突撃する。

勿論、光線級はそれをお墜そうとするが、ゼロはそれを悉く回避する。今のルシフェルの速度は音速に匹敵する速度――凡そ1150km――で進む。

だが、そんな速度でいれば当然のようにゼロに殺人的なGが掛かる。そしてそのGはゼロの内臓器官を傷付けるが、その傷をナノマシンが急速に治癒する。

「―――ッックッグウゥ。と、捉えたーッ!」

ゼロは光線級と重光線級をロックオンサイトに納め、ルシフェルのS型装備の武装の一つ右手のハイ・レーザーライフル【KRSW-Mk2】を光線級に目掛け連続して撃ち続ける。

要撃級がルシフェルに前腕を振るうがゼロはその攻撃を左手に装備した盾と一体化した大型レーザーブレード【MOONLIGHTⅡ】で周辺にいる他のBETA諸共斬る。

それらを幾度も繰り返し光線種を片付けたゼロは別方面の光線種がいる方向に向けて再度OBを発動させる。

再び殺人的なGがゼロを襲う。そのGによって臓器が悲鳴を上げるがゼロはそれを無視する。

 

「お願い持ち堪えて…」

その状態をモニターしているシーラは唇を噛み締め悲痛な表情と共にゼロをただ見守る。彼女は本当は今すぐにでもゼロをルシフェルから降ろしたいがそれをなんとか自制する。そうしなければ今の状況を覆せないということを理解しているからだ。そしてそれを隣にいる純夏も心配するが今の自分には他の皆をサポートする役目があると強引に意識をそちらに向ける。

『純夏、ゼロさんは?』

と、そこに武からの通信が入る。

「タケルちゃん……」

『純夏?』

武は純夏の様子がおかしいと感じるが純夏は必死に泣き言を言わないようにする。

「なんでもないよタケルちゃん! ゼロさんは今物凄い速度で光線級を倒してるよ、ホントタケルちゃんなんかよりも全然カッコイイんだから!」

だがそこは幼馴染、武は簡単に純夏の心情を見抜く。

『純夏、嘘つくなよ、何年幼馴染やってると思ってんだ? それでまさかゼロさんマズイ状態なんじゃねえだろうな!?』

(敵わないなタケルちゃんは)

純夏は少し視線を落す。

「ううん、ゼロさんはホント凄いよ。でも、でもっ、ルシフェルがBETAを倒す度にゼロさんの体は酷い状態になってそれをモニターしているシーラさんの表情がっ!!」

純夏の声は段々涙声になり次第に声にならなくなる。それを聞いた武は顔を歪める。

『そうか……』

「ねえ、タケルちゃん」

『ん?』

「見てるだけって結構辛いよ」

『ごめん』

「どうしてタケルちゃんが謝るのよ」

純夏は少し微笑しながら武に言う。

『なんとなくかな』

「タケルちゃん」

『今度はなんだ?』

「私ね、こんなことしか言えない自分がヤダだけど言うね」

純夏は顔を上げ真剣な表情で告げる。

「頑張ってね! タケルちゃん!」

『ああッ!』

 

そして同じ頃、ルシフェルの異常さを目の当たりにした者達の反応はというと

『ACにあそこまでの可能性があるとは………』

ジャックはルシフェルのその脅威的なまでの能力を見て感嘆の声を上げるが同時にあれを作った人間という種とそれを扱うゼロに恐れすらを感じる。

『馬鹿な! あんな物に肉体が耐えられる筈が無い!』

『くっ』

エヴァンジェはただ驚愕し、ジナイーダは歯を強く噛み締める。

『お前の弟は凄いな、私達とはもはや別次元だ』

『だが、あんなのを人の身で制御できるはずが無い』

ジノーヴィーはゼロを純粋に褒め、フェイトはルシフェルの異常な性能を恐れ弟を心配する。

『う…そ……』

『『涼宮?』』

『『『?』』』

CPの遙かはただ愕然とする。それは彼女以外のほかのオペレータも同様。

『レイヴンズネストの一機がBETAの群れに突撃した瞬間から一気にその周辺のBETAの一部が駆逐されてます』

それを聞いたA-01の全員はただ愕然とし暫くまともな思考ができないでいた。

『嘘だ………有り得ない……』

『これが……レイヴンズネスト最強の力………人知を超えた力』

バルナールは他の衛士たちの気持ちを代弁するかのような言葉を吐き、アーロンはその圧倒的な暴力に魅入っていた。

『凄い……なんて……なんて、素敵なの』

グロリアは頬を紅潮させ潤んだ瞳でルシフェルを見つめる。そしてそれに触発されるようにグロリアもBETAに向かって突き進む。

今、ゼロはこの戦場に居る全ての者達を釘付けにしている。

だが、ルシフェルのコクピットの中のゼロは…… 

 

「うっ! ぐむぅぅ! ぐううぅぅうぅぅう! くうぅぅおおおおおぉぉぉっっ!!」

OBと各種ブースタの併用によるとんでもないGがゼロを襲い、その衝撃でゼロは喉に込み上げるモノを感じそれが口元に来るが強引にそれを飲み込む。

その間にもゼロは確認した光線種をKRSW-Mk2と両肩のハイ・レーザーキャノンで倒す。それはまさに魔王のごとき所業。

進路に邪魔となる要塞級をレーザーブレードで斬り捨て、更にそのまま直進する。

「し、シィーラァー! あとどの位だッーー!!」

肉体に感じる痛みを堪える為にゼロは声を張り上げる。

『あと3ブロック! もう少しよッ持ち堪えて!!』

「AI、残り稼動時間はッ!」

[リミットタイムまで残り30秒]

ゼロはAIに残り稼働時間を聞くがそれは到底時間までに光線種を排除できる時間では無い。

ゼロは歯を噛み締める。

「クソォォッ、間に合わんかッ!!」

ゼロは光線級と重光線級と未確認種のUNKNOWNを両肩のハイ・レーザーキャノンで焼き、KRSW-Mk2で他の小型種を巻き込みながら光線級を撃ち、残った重光線級や近くにいた要撃級に要塞級をレーザーブレードで薙ぎ斬る。

『ゼロッ! もう退避して時間が無いわ! 後はジノーヴィーに任せましょう!』

「クッ、分かった! 後退する」

シーラの警告に従いゼロはOBを発動して後方に下がる。

[リミットまで残り15秒]

『お願い間に合って!』

ルシフェルは猛スピードで離脱するがルシフェルに向かって要塞級の触手や光線種のレーザーが幾本も迫る。ゼロはそれを悉く回避するがゼロの意識はもう限界に近かった。

[リミットまで残り10秒。カウントダウン入ります]

「俺はッ! 俺はッ! 俺は死なんッ!! 絶対に生き足掻く!!!」

(そうだろう? ナー!)

そこにゼロの視界に映る一機の戦術機。それはグロリアのブラフォードだ。

彼女の機体は上空を飛びUNKNOWNのBETAを手に持つ長剣で斬り殺していた。

だがそこに2方向から他のUNKNOWNが迫る、グロリアは攻撃時の僅かな硬直で態様できない。

[リミットオーバーまで残り5秒]

ゼロの体は動く。ルシフェルをグロリアの方に向け二体のUNKNOWNに目掛けKRSW-Mk2を撃ち、カイルスフィールドを展開する。

[4…3]

高速で飛んできたレーザー弾をその身に受けたUNKNOWNは落ち、ゼロは直線状にいるグロリアの目の前に飛び込み襲ってきたレーザーをカイルスフィールドで防ぎ、ブラフォードと衝突しかけるがそれを右腕のマルチブーストで避ける。

[1…0]

ブラフォードを通り過ぎたルシフェルは猛スピードで砂地に突っ込む。

[リミットオーバー、SatanMode終了します]

そしてルシフェルのAIはタイムリミットを告げ、ルシフェルはその場に膝を着く。

「悪い……皆、あ…とはた…のむ……グ、ガハッゴホ…くぅぁ」

そこでゼロは再び喉にせり上がってきた血を吐き、ゼロの意識はそこで落ちる。

 

『ゼロォ!』

シーラが叫ぶように呼びかけるがゼロは気絶したので返事を返さない。そこにジノーヴィーとジナイーダに向けてエヴァンジェから通信が入る。

『くっ、ジノーヴィー頼むぞ! ジナイーダは急いでルシフェルを下がらせろ!』

「『分かった!』」

ジナイーダは急ぎルシフェルに駆け寄る。そこにグロリアのブラフォードが近寄る。

『待ってください』

「何だ!」

ゼロのことが心配なジナイーダは突然割って入ってきたグロリアに怒鳴る。

『彼を戦線から下がらせるのは私に任せて欲しいの。先ほど助けられたお礼としても是非』

「何を言っている」

更にジナイーダは不機嫌そうに答える。

『それに私の機体はそろそろ弾薬や推進剤の補給の為に下がる予定だったし貴女の機体はまだ十分戦えるでしょう? それならここは私に任せてくれたほうが良いと思わないかしら?』

「むっ、そ、それは…」

ジナイーダは何故かそこで詰まる。というか反対する理由が無い。グロリアの言うとおりジナイーダのファシネイターはまだ十分戦えるため明らかにジナイーダがこの場に残るほうが有り難い。

更に追い討ちをかけるようにシーラとエヴァンジェ、ジャック、フェイトから通信が入る。

『何をしているの! 急いで!!』

『ジナイーダ、私も彼女の意見には賛成だ』

『私もだ、ジナイーダ。今君に抜けられるのは正直喜ばしくない』

『どっちでもいいから急げ!! ゼロが心配だッ!!』

四人から一斉に言われジナイーダはたじろぐ。

「う、うぅ……」

ジナイーダは目の前の女を睨みつける。それこそ穴が開く位に人を殺せるぐらいに睨むがやがて

「くそっ、分かった。仕方なくお前に任せる!」

『ええ、ありがとう』

グロリアはルシフェルを両腕で持ち上げる。

『『お姉さま~』』

と、そこに補給の為後退していたアリスとクリスに他の中隊が戻ってくる。

『良いタイミングね。二人とも、私は彼を連れて補給に行きます。またガルム隊、メビウス隊、ドラグーン隊も補給を。アリス、クリス、貴女達が暫し私の代わりに指揮を取りなさい』

『『了解しました』』

グロリアの部下達は一斉に了解の旨を伝え、一部はグロリアと共に補給のため下がる。

 

ルシフェルが後退したのを確認したジノーヴィーは今だ目の前に広がるBETAの海を睨む。ジノーヴィーの右目は何時もと違いデュアルフェイスと同じ真紅の色をしていた。

「ゼロ、良く頑張った。後は私に任せろ」

ジノーヴィーは苦笑しながらデュアルフェイスにプログラムを走らせる。

「再びこの“力”を使うことになるとわな、人生何が起こるのか分からないものだ」

最後にこの“力”を使ったのはフェイトとの決戦の前の前哨戦。

ジノーヴィーはこの“力”が嫌いだった。否、この“力”と同じような“力”を持つレイヴン達は殆どがこの“力”嫌っていた。

ジノーヴィーを含む多くのレイヴンがこの“力”を使わない理由の一つがプライドや誇りが許さないからである。

同じ人間同士の戦いでこの“力”は邪道すぎた。

だが目の前にいるこいつ等はヒトではない、バケモノだ。

ならば躊躇う必要は無い。

存分に使おう、この邪道な力を

だからジノーヴィーは告げる。

「デュアルフェイス、“システムプラス”発動」

デュアルフェイスのAIは応える。

[了解。システムDual face起動]

「行くぞ」

ジノーヴィーは低く告げる。

そこにいるのは嘗て最強と言われていたトップランカーの男。

 

 

 

後書き

第三章第十三羽終了。

ルシフェルは能力こそネクストACに匹敵するほど最強ですが欠点としてパイロットには優しくないことです。

一応当時の企業の持てる全ての技術を持ってナノマシンなどの様々な耐G処理はしていますがそれでも抑え切れないほどの殺人的なGがパイロットを襲います。

自分は最強設定は嫌いではありませんが安易な中身の薄い最強は嫌いです。

それと前回の後書きで書きましたがルシフェルの元となったものを教えます。

ルシフェルの原型となったのはプロジェクトFORCEという初期のAC4の企画名でその時のPVに出てきたACが元です。

ちなみにそのACはノブリス・オブリージュで、当時はそのPVは色々賛否両論でした。何故なら今でこそ一般的なクイックブーストやプライマルアーマーもACにそいつは無いという意見がありましたし、faのホワイト・グリントのPVやOPでの変形がそのPVですでに行っていたのです。

しかし我等が(´鍋`)は雑誌のfaのインタビューでこう話していました(うろ覚えですが)。

「ACシリーズは常に新しい試みと共に進化しています」

でもfaを見る限りやりたいことがありすぎて明らかに次世代機のスペックを超過してると思うのだし色々と問題点など改善すべきところが多すぎると思うのだが?

うん、フロムにはもっと頑張ってもらいたいね。あとソニーやMS(モ○ルス○ツじゃ無いぞ)もね。

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