In The Myth God Is Force

 

 

グロリアによって全体の士気はより高まり、現在の戦況は人類側に優勢に働いている。

が、戦闘はまだ始まったばかり。どれだけ戦況が人類側に優勢に傾いても、BETAはそれを赤子の手を捻るかのごとく簡単に今の状況を覆す。

『HQより、全部隊へ! 侵攻してきた全BETAがエリュトゥーラ海より上陸してきました!』

『中佐!! AL弾を全部撃ち切りましたッ! これ以上の重金属雲濃度の上昇は望めません!』

『チィッ、戦車隊は要請が無い限りは砲撃中止!』

新種のBETAへの対処は最初までは良かった。だが、戦場に要塞級が出現したと同時に状況はどんどん苦しくなっていった。

新種のBETAは要塞級と同じ高さを維持し滅多に攻撃を受けなくなっていった。更に前衛では突撃級や要撃級に他小型種多数がいるため満足に攻めれないでいた。

 

「B小隊突撃!」

『『『『了解』』』』

草薙の指示と共にフェニックス中隊のB小隊が突撃するが、そこに一体の突撃級が猛スピードで突進してきた。すぐさまB小隊隊長の牛尾直哉は回避を命じるも一機が砂に足を捕られ回避が遅れる。回避が遅れた不知火――フェニックス07――はそのまま突撃級の強固な外殻に当たり、金属が大きく拉げる音と共に吹き飛ぶ。中の衛士はもはや生きては居ない。

『足立ッ』

『ナオ!』

『!!』

突撃級に殺られた部下の名を叫ぶ牛尾だが木村の声ですぐ近くに要撃級を感知し振り上げられた前腕を機体を右に逸らして回避する。その時右手に持つショットガンを2発、炸裂する散弾全てを要撃級に撃つ。計14発もの散弾を浴びた要撃級は体を少し痙攣させた後地に崩れ落ちる。

『わりぃ、キム』

『いや、それよりもケン! どうするんだ? 正直このままじゃ色々とマズイぜ!』

A-01は先ほどから――初めての砂漠戦というのもあり――かなり苦戦していた。

「分かっている! だが、初体験で慣れんものはしょうがないだろッ」

草薙も先ほどからこの状況をどうにかしようと必死に頭を働かせていたが始めての戦場、新たなBETA等などにより草薙は今、非常にストレスが溜まり。苛立っていた。

(クソ、どうする? 鳴海の機体の荷電粒子砲を撃とうにもこの戦況じゃ扱い辛い。ならいつもどうりの部隊としての連携行動かッ、いや、ダメだ! 先もそうだったが砂地での所為で足を捕られて皆満足に機体を動かせていない)

だがそこに伊隅から通信が入る。

『少佐、私に任せて貰えませんか』

行き成りそう言われた草薙は伊隅の目を思いっ切り睨む。

「お前にこの状況を打破できるのか?」

『可能です。――――それに……』

伊隅はそこで一旦目を瞑り、苦笑しながら

『極東の戦乙女として欧州の戦乙女に負ける訳には行きませんからね』

「ぷっ、はっはっは。そうか、分かった。伊隅――――お前に任せよう」

『了解』

その言葉と共に伊隅達、ヴァルキリー隊は伊隅をトップとした楔壱型(アローヘッド・ワン)で前方のBETA群に突撃する。

それは、今、伊隅が乗る四脚タイプのACの特性を利用した現状の最大効率の戦い方である。

砂漠のように足元が柔らかい局地的な戦場では二脚よりも四脚のような脚部の接地面積が大きいほうが有利である。

伊隅はそのまま猛然と両手に持つバーストライフルを左右それぞれ撃つタイミングをずらしながら突き進み、撃ち崩れた部分に他の部隊員が攻め込み殲滅していく。

『全機、このままBETAに突撃を繰り返していくぞ!』

『『『『『『『『了解!!』』』』』』』』

極東の戦乙女達も欧州の戦乙女に負けじと悠然と突き進む。

 

別の方面ではレイヴンズネストがBETAを殲滅していた。その速度は本当に7機の攻撃かと疑うほどである。

そしてフェイトの精密な射撃がまた一つ新種のBETAを撃ち落す。

だがフェイトの呼吸は荒い。

彼はこの戦闘が始まった時から、否、新種のBETAを見た時から呼吸は荒くなり、手は震えている。その理由は新種のBETAが嘗ての空を埋め尽くさんほどに現れたあの“特攻兵器”を彷彿させるからである。

『フェイト!』

「!?」

ジャックの声に反応し即座に目の前に現れた突撃級の突進をジャンプで回避し、突撃級の背中に火炎放射器から交換したマシンガン・YWH13M-NIXを点射する。そのまま土煙を上げて着地する。

(クソッ、馬鹿か俺は! 素人でもないのになんつう無様を!?)

フェイトは冷汗を掻きながら眼前を見据え、そして自身に悪態を付く。

だが

『無事か、フェイト』

『まさかまだ病み上がりなんて言うんじゃないだろうな』

『行けるかフェイト?』

『問題が有るのなら下がったらどうだ』

『こちらでコンディションを確認したけど、少し精神的に良くないわ』

『フェイトさん?』

『兄貴、大丈夫なのか?』

『フェイトさん、無理はしない方が……』

「―――お前等………クっ」

(そうだ、あの時とは違う)

フェイトはふと思い出す。以前、武と仲間や戦友とかの事に付いて話したことを、その時フェイトはよく分からないと答えた。

――だが――

(成る程)

「仲間ってのは良いもんだな、シロガネ」

『『『『『『『『???』』』』』』』』

仲間―――そう今の自分達は仲間だ。共に戦い抜く心強き仲間。

フェイトは目視で遠方に確認した要塞級に向かって極太のレーザーをぶち込む。レーザーで焼かれた要塞級はその巨体を轟音を轟かせながら自身の下に居た他のBETAを巻き込んで地に沈む。

「さあ、お前等、後は気にするな! お前等の背中は俺が守ってやるっ!!」

フェイトのその言葉に全員は小さく笑みを浮かべ。

『頼んだぞ』

『任せる』

『頼む』

『任せた』

『頼みます。フェイトさん』

『頼んだぜ、兄貴』

レイヴンズネストはより強固な絆をもって自分達の敵に相対する。

 

『中佐! BETAがッ!?』

バルナールが叫んだ瞬間、BETAはモーゼの十戒の如く裂けていき―――その先にいるのは光線級と重光線級。

戦場に数多の眩い光が発せられる。そしてその光は多くの命を喰らう。

光線級の攻撃を直感的に判断したアーロン中佐は直に通信で全体に警告する。

『全機、後退!!』

『全機は間に合いません! ――――!! 中佐ッ!?』

『!? グウゥゥっっッ』

バルナールの警告も虚しくアーロンに目掛けレーザーが迫る。レーザーは右腕部を持っていくだけで済んだが戦況は更に悪化している。

『中佐、無事ですか!?』

『クソ、システムが少しダウンしたッ、だが、まだイケル!』

そして此方も

『チクショウッ、涼宮ーッ、損害報告!』

『フェニックス隊、2機大破1機中破、ヴァルキリー隊は3機大破4機軽傷!』

『伊隅!』

『こちらヴァルキリー01! 私の方はまだいけますが部隊の損傷が酷いです』

『隊長、ここはレイヴンズネストに任せて後退しましょう』

『悔しいですが涼宮の意見には賛成です。これ以上の継戦は厳しすぎます』

『クソが、気にいらねぇが仕方ないっ、全機! ここは一旦下がるぞ!』

『少佐! 自分が殿を務めます!』

『孝之! アンタなに言ってんのよッ』

『孝之君!』

『平、貴様の機体の状況はッ!』

『申し訳ありません。もう機体の残弾が余り有りません』

『分かった。なら、殿は鳴海と俺、そしてヴァルキリー隊からは伊隅と速瀬、バックアップにフェニックス隊はショウとキム、ヴァルキリー隊からは宗像と風間だ!』

『了解』

『全員、生き残るぞッ!!』

また此方は

『お姉さま無事ですか!?』

『問題無いわ、他は?』

『ガルム隊、ドラグーン隊、フェザー隊、戦闘続行が厳しいです! 他は戦闘継続に問題無し!』

『戦闘継続が難しい機体は後方に後退して簡易でもいいから整備と補給を! 戦闘継続可能な機体は空いた部隊の穴埋めをしなさいッ!』

『了解! それとお姉さまも補給のために後退すべきです。突撃砲の残弾はもう残ってない筈ですッ』

『必要無いわ、弾が無ければ接近戦で十分!』

『『お姉さま~』』

 

「流石にマズイか……」

ジャックの言葉通り、今の戦況は良くない。

「光線級をどうするか……」

ジャックの頭脳はこの状況をいかにして切り抜けるか高速で演算する。

(A-01は後退する心算…か、それは構わない。彼等の損害が広がるのは私としても望むことじゃないし、何よりも白銀君のメンタル面に問題が出る)

『ジャック』

だが、そこにゼロから通信が入る。ジャックは思考を止める。

「何だ、ゼロ?」

『光線級は俺に任してくれないか』

「理由は?」

根拠の無い理由はジャックは求めていなかった。今求めるは確りとした誰もが認める理由。

『ルシフェルのリミッターを解除して出来るだけ素早く光線級を排除する』

『ゼロ……使うのね』

『ああ』

彼のオペレータのシーラは何か思うところがあるのだろうが、ジャックは考える。人間には出来ない強化人間だからこそできる超高速演算で

(ルシフェルのリミッターを解除した力、クレズからは一応データは見せてもらったが、確かにその力は今の状況では有効だ。―――――問題はパイロットの肉体への負荷とリミッター解除終了後は機体が暫く行動不能になる点。前者はこのさい無視するとして―――本来は無視するべきではない、今ゼロを失うのは問題だ―――後者はどうする? 誰かにバックアップあるいはフォローをさせるか、だが誰に………)

と、そこでジャックは思い出す。

(そうだ!)

「ジノーヴィー、デュアルフェイスの“システム”は使えるか?」

『デュアルフェイスの“システム”? ああ、“システムプラス”か問題無い』

ジャックの疑問にジノーヴィーは答える。ジャックが求めた最良の答えを

(行ける)

ジャックは確信する。そして全機に伝える。

「ゼロ、許可する。急ぎ光線級を排除してくれ」

『任せろ』

「ジノーヴィーは頃合を見て“システムプラス”を使用してリミッター解除終了後のルシフェルの援護を。それまではイギリス騎士団の援護だ」

『了解』

ジャックは次々と指示を飛ばす。

「白銀君はA-01の後退支援を、行けるな? 白銀君」

『―――!! ッ了解、任せてくださいッ!』

「ジナイーダもジノーヴィーと共にイギリス騎士団の援護、エヴァンジェとフェイト、そして私とでクセ連隊の援護をするぞ」

『『『了解』』』

(頼んだぞ、ゼロ! 私にドミナントとしての君の力の全てを見せてくれ)

レイヴン達はそれぞれの指示の元、行動する。

 

「こちら、レイヴンズネスト、ホワイトセラフ! 援護します。速く後退を!」

武は孝之に攻撃しようとしていた要撃級をレーザーブレードで斬る。

『白銀!』

『白銀、どういうつもりだ!?』

草薙の質問に武は周りのBETAをレーザーマシンガンで撃ち抜きながら草薙に答える。

「貴方達に倒れられるのは俺達にとっても得策じゃない。だから援護をする。ジャックさんはそう判断しました。これでいいですかッ」

武の答えに草薙は

『まあ、確かにな…分かった。白銀! 感謝するッ』

「いえ、それと俺の仲間が今から光線級の排除を開始しますから、それまでに補給を済ましといてください」

『はあぁ!!??』

武のその言葉にA-01の全員がすっとんきょな声を上げる。

『ちょ、ちょ、ちょっと待てよ! 白銀ぇッ、どういうことだよ!!』

「それでは俺はこれで!」

孝之の言葉を無視して武はBETAの海の中に飛び込む。

「純夏ッ、バックアップ頼むぜッ!」

『任せてよ、タケルちゃん!』

 

アーロン中佐は今の光景を正直信じたくなかった。

『無事か?』

目の前の外見、A-6イントルーダーのようなずんぐりむっくりな重装甲でいて戦術機よりも小型な機体が圧倒的な火力をもってBETAを蹂躙する光景。

『無事か?』

もう一度問いかけられる相手の声。レイヴンズネスト主宰ジャック・Oの声だ。

「あ、ああ、問題無い」

アーロン中佐は少しどもりながらも答える。

「救援感謝する」

アーロン中佐の礼にジャックはほんの少し苦笑し

『礼には及ばない。何より―――』

ジャックはアーロン中佐の乗機、F-15Eのカスタム機に向き直り。

『何より、今、そちらに倒れられると此方は追加報酬が貰えなくなる』

それを聞いたアーロン中佐は笑う。このような戦況だというにこの男はそんなことを言うか。

「くっあっはははははは。そうだな、私が今倒れたら君達に報酬が払えんな! 良かろう、生き足掻いて見せようぞッ、鴉よ!」

歴戦の英雄は再び立ち上がり、人類の仇敵に再び刃を向ける。

 

『お姉さま、レイヴンズネストが』

『何故我等の援護を』

アリスとクリスの疑問にジナイーダが答える。

『この混戦だ、なら一々右翼だとか左翼だとか気にしていられんだろ』

ジナイーダのファシネイターは巧みに光線級のレーザーを回避しながらレールガン、レーザーキャノン、ショットガンをBETAに撃ち込む。

『そういうことだ、それにこのままじゃ色々と不味いからな我々が各部隊を援護するということになったのだ』

ジノーヴィーのデュアルフェイスは左肩のグレネードランチャーを足元の戦車級に撃ち込む、そしてそこに向かってエクステンションの補助ブースタを起動し地面に着地する。その頭上に幾本のレーザーが通過する。

『さて、こちらも使ってみるか』

ジノーヴィーはデュアルフェイスの左肩のグレネードランチャーを畳み、そして右肩のグレネードランチャーを展開する。それに積まれている砲弾は有澤重工製の近接信管式の榴弾。

通常のACが装備するグレネードランチャーの砲弾はただの榴弾だがこの有澤重工製の近接信管式の榴弾は撃ち出すと敵の近くで爆発するもので直撃時のダメージは余り望めないが、その分多くの相手を爆発範囲に巻き込めるものである。

ジノーヴィーは要塞級の横に右肩のグレネードランチャーを撃つ。

撃ち出された砲弾は要塞級の横の空間で爆発、その爆発は要塞級の巨体に隠れていた新種のBETAを焼く。

『ふむ、悪くない』

ジノーヴィーはコクピットの中でほくそ笑む。

「凄い、これがレイヴンズネストの力、そして彼等が乗る戦術機の力」

ACの力を間近で見ているグロリアはただ彼等の力に魅せられていた。

 

そのころゼロは

「シーラ、頼む」

『分かったわ、でも無理はしないで』

「分かっている。こんな所で死ぬかよ、それも自分の機体に殺されてたまるか」

『ナノマシン起動』

シーラの合図と共にゼロの体内に仕込まれたナノマシンが起動する。その感覚はお世辞にも気分の良いものではない。自身の体内に異物が蠢く感覚、まるで許容できない。

「ふぅ」

ゼロは深呼吸しながらなんとか慣れようとする。と、そこに別の通信が入る。

『ゼロ』

「なんだ、アマギ?」

通信して来たのはアマギ。

『リミッター解除後のルシフェルの状態をこちらでシミュレートした結果を知らせます』

「頼む」

『リミッター解除後の稼働時間は3分、但し3分過ぎたらその後凡そ4分間はチャージングし一切の行動が出来ません。だからリミットが近づいたら場所を考えて下さい。シーラ、ルシフェルの各状態は?』

『武装及びジェネレータも各部位全てオールグリーンよ』

『分かりました。では、ゼロ、御武運を』

『了解』

そしてゼロはプログラムを起動させる。

「ルシフェル、SatanMode Stanby」

ゼロの要求にルシフェルは応える。

[承認。ルシフェル、全システムオールグリーン、SatanMode Stanby、システム連続稼動時間3分]

「確認、さあ目覚めろ」

ゼロの目覚めの言葉と共にルシフェルは、否、サタンはその全て力を解放する。

ジェネレータは今まで以上に回転数を上げ、各種センサー光は今まで以上の輝きを放つ。その様はまるで生物の血液が流れ躍動するかのように。

「さあ、Show Timeと行こうか!!」

天使は堕ち、そして堕天使が魔王が目覚める。

 

 

 

 後書き

第三章第十二羽終了

あ、あれ? なんでここまで長くなってんだ? 予想以上に詰め込み過ぎたかな?

さて、遂にルシフェルがその全てを開放しました。次回はゼロ無双です。

それとジャックとジノーヴィーが言っていた“システム”とは元々ネクサスに使われる予定だった強化人間専用の能力?です。多分読者の中には思うところは色々とあると思うでしょうが許容してください。

ちなみにルシフェルは元々あるACを元ネタにしています。次の後書きでそれは暴露する予定であります。

後、タイトルの和訳は「神話において、神とは力である」です。

多分、多くの方がこれの出所を知ってると思います。それと神は神でもこっちの(´神`)ではないので注意すること! (身内ネタでごめんなさい)

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