アルサレア要塞・機密部隊暗部隊長室
「まさか、ヴァリムのエースパイロット“フェイト・アークエイル”と交戦し生きているとはな、君はなかなかの幸運の持ち主のようだな」
「いえ、結局のところ自分は任務に失敗しました」
「はは、確かにな、私も暗部設立以来初の任務失敗報告を聞いたよ」
暗部隊長のゼムン・ゼルバ中佐の苦言にゼロは顔を渋くし歯を噛み締める。
そのゼロの様子をゼムン中佐は苦笑しながらゼロに諭す。
「なに悲観することはない。新任である君がヴァリムのエースに出くわしておきながら君は生還したのだ、ならばその悔しさをばねに更に精進すればいいまでのこと」
「はっ」
ゼロは顔を上げ敬礼する。
ゼムン中佐は「ふむ」と一言頷き、ゼロに今後の方針を伝える。
「それでは君の今後のことに付いて伝える。君は今後こちらが指示した人物と二人組みで行動してもらう」
「…了解」
ゼロは二人組みとして行動ということに顔を顰める。
「そう嫌そうな顔をするな、君が組むことになる人物は仮にも上官だぞ」
そこまで話した時、部屋のドアから呼び出しコールが鳴る。
「入れ」
「失礼します。アクセル・グレイス中尉ただ今参上しました」
部屋に入ってきたのは中尉の階級を付けた一人の男、身長はゼロよりも頭一つ分高く瞳の色は燃えるように赤くその目には強い意志が宿っている。また一番特徴的なのはこれも燃えるように赤い髪でそれをオールバックにし項の辺りで一つに纏めている。
「彼も暗部の人間で№はⅦだ」
「アクセルだ、宜しくな新入り。それと始めに言っとくが俺は堅苦しいのは嫌いなんだ、だから気軽にアクセルとでも呼んでくれ」
「はあ、宜しく……」
アクセルと名乗った男は気さくにゼロに自己紹介する。性格はかなり軽めなようだ。と、ゼロはアクセルを分析する。
ちなみにアルサレアは元々は傭兵として国家の生計を立てていたため余り階級については煩くなく上官だろうとなんだろうとタメ口がよくある。が、流石にあまり上の人間にはそのようなことはせず、基本的に同じ部隊でそういった上官や部下のやり取りがあるくらいである。
「彼は君と同じで殲滅、破壊関係の任務を主軸としている。これから暫くはアクセルとともに任務に付いてくれ、アクセルもいいな?」
「「了解」」
二人そろって敬礼する。
そしてゼムン中佐が退室するように伝え二人は部屋を出る。二人が出て行った数分後室内に一人の女性――セシリア――が部屋に入ってきた。
「お話は終ったようですね」
「ああ」
「彼等にはあの事を伝えないのですか?」
セシリアの問いにゼムン中佐は顔を苦々しく歪める。
「ああ、このことは私達一部の人間しか知らされていないし言える筈も無い。グレン将軍閣下が暗殺されたなど」
室内に幾許かの静寂が訪れるが、最初にセシリアが話しかける。
「やはり、グレン将軍暗殺の裏にはギルゲフの陰が?」
「十中八九そうだろう。ギルゲフ・ド・ガルスキーは閣下を邪魔な存在としていたようだからな、今はグレン将軍の遺言通りグレンリーダーのクロード少佐が影武者を務めているが何時かは公表することになるだろう」
実はグレン将軍の暗殺は数ヶ月前の話だが、暫くの間ツェレンコフ・ゴルビー参謀本部長が秘密にして置いたが暗殺から一ヵ月後ごくごく一部の将官に事実を伝えたのである。
ゼムン中佐は視線を自分が座っている執務机に落とし一つの資料を凝視する。
その資料にはゼロに関するこれまでの行動や士官学校時代の成績から様々なデータが記されている。
「セシリア、先の戦闘でのフェイト・アークエイルとの会話をどう見る」
行き成りのその質問にセシリアはほんの少し目を瞑るが直に口を開く。
「そうですね、不可解と言えば不可解ですが、会話から察するにゼロ准尉はフェイトを知らないようですが逆にフェイトは知っているようですし、何より彼等の会話に有った幾つかのキーワード、ゼロ准尉の言う“姉さん”にフェイトが言った“キキョウ”なる人物、そして彼、ゼロという名前は偽名であることを挿す“アークエイル”が自身の名である等等、まあ今は様子見ということでいいでしょう」
「まあな、……それにどうやら彼は度々軍のデータベースにアクセスしているらしい」
セシリアはそれを聞いて眉を顰める。
「何故です?」
「さあな、まあこれ以上勝手なまねをされないように監視の意味も兼ねてアクセルと組ませたのだが……果たしてどうなるのやら」
そのころ退室したゼロとアクセルは何故かPFハンガーにいた。
そして二人の目の前には一機のPFが納められている。
「こいつが俺の機体“Jグラップラー”だ」
「Jグラップラーってまだ一般にはまだ正式配備されてないんじゃないのか?」
「ああ、まだ一般には配備されていない。こいつは先行量産機だ。但し暗部の特権として俺ようにカスタマイズしてある」
「へ~」
ゼロは興味深く眺める。
そしてアクセルは聞いてもいないのに喋りだすが、ゼロは全く耳を貸さず目の前に立つ機体を見続ける。
そのちぐはぐな二人を整備班の何人かは眺めるが直に整備班長の怒声により作業を再開する。
その後、二人はPXの傍にある遊戯場のバーで話し込む。
ちなみにゼロは未成年だがなんの躊躇いも無く一緒に酒を飲む、そして仕舞いには二人で呑み比べをしだすなど初っ端から彼等は意気投合する。
翌日は軽く連携訓練を行う。
そして更に翌日
「暗部№Ⅶ及びⅩⅢの両名に新しいミッションを通達します」
セシリアから二人に新たな任務を言い渡される。
後書き
チャプターⅠ-ⅣA終了
ただし後書きは次回に持ち越し
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