接触

 

 

仮想の砂漠上に対峙するはレイヴンズネスト所属のレイヴン、白銀武とその乗機ホワイトセラフ。向かい側に立つのは国連軍横浜基地副指令香月夕呼直属の部隊A-01第四中隊フェニックス所属の衛士で衛士でありながら武と同じくACに搭乗している人物、鳴海孝之。

『双方準備はいいですね?』

A-01のオペレーター涼宮遙が呼びかける。呼びかけられた二人はそれぞれ返事を返す。

「いつでもどうぞ」

『こっちも大丈夫だ、遙』

『了解、それでは始めてください』

「『了解』」

その宣言とともにそれぞれ行動を開始する。

孝之が先制と右肩の小型ロケットを放つが武はそれを右に回避しお返しとばかりに腕部上部から覗いた基部からナパームロケットを撃つが孝之はすでに武から大分離れている。

(さて孝之さんはどう出る? 彼の機体構成は両手のマシンガンに左肩のプラズマキャノンと右肩のロケット、エクステンションの部分には戦術機の短刀を左右に一つずつ、それにあのコアは格納機能付きだ、ならブレード辺りを仕込んでるはず。俺が勝つにはどうすればいい? 簡単だ)

「機動性で押せばッ!」

武はOBを起動し一気に距離を詰め背後を取ろうとする。孝之からみて左の位置に居る武に左手のマシンガンを撃つも直にかわされる。

孝之は直にその場から離れようと右にステップを踏む。その瞬間孝之が居た位置に青白い光が翳める。それが孝之の機体エタニティが左手に持つマシンガンを斬り落す。

『クッソ』

反撃とばかりに右手のマシンガンを撃つも武はジグザグに回避する。

武が離れたその瞬間に孝之は思考する。

(危なかった。なんて機動性の高さだよ! クッソこれじゃあプラズマキャノンを使う暇が無い! いや! 使ってもかわされるのがオチだ。なら早々にパージして機動性を上げるしかない! 相手はこの基地の部隊を一人で全部倒したんだ一瞬の判断の遅れがこっちの敗北に繋がる!)

そう判断した孝之の行動は早かった。プラズマキャノンは早々にパージしコアのハンガーからレーザーブレードを取り出す。

また武も思考していた。

(避けられたか、条件はある意味五分、孝之さんはプラズマキャノンをパージして左手にレーザーブレードを装備した。なら必然的にドッグファイトになる! 気を付けるべきは右肩のロケットだあとは気にしない!)

そして二人は同時にその判断を下す。

((なら!!))

武は足元のペダルを思いっきり踏み込む。そして右手のレーザーマシンガンを構えZANGETUの高周波機能をいつでも使えるようにする。

孝之は右のエクステンションに付けられている短刀を順手で抜き、右手のマシンガンを構えロケットもいつでも発射できるようにAIに設定させておく。そして孝之も一気に足元のペダルを踏み込む。

((接近戦で全て決まる!!))

二人は同時に飛び出す。

「『はああぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!』」

 

「すっげぇ」

そう漏らすしたのは孝之の親友の平慎二、そしてA-01の殆どは頷くが何人かはほんの少し首を傾げる。

「……少佐」

「言わんでも分かるさ伊隅」

二人は頷き、草薙はフェイトを見る。

「少し聞きたい」

彼の目は戦場に居る時と同じく真剣だ。

「なんだ?」

フェイトは何となく彼が言いたいことが分かった。なにせホワイトセラフは元々フェイトの機体だ。あの機体については自分が誰よりも知っていると自負している。

「あの機体、他とは何か違うだろ?」

「よく分かったな」

何人かは矢張りという表情と驚いた表情をしている。

「あの機体だけじゃない、アンタ達の機体全部が…っくっそ、言葉にするには適切な表現が見当たらんがなにか違うだろ」

「全部じゃない、俺以外の機体だけだ。最もシロガネはある種特別だがな」

「特別?」

「あの機体と他のヤツラが乗る機体は特別だ。いや、パイロットも特別だな」

「それは…」

「話は最後まで聞け」

そう言われたため彼等は黙ってフェイトの話を聞く

「俺とシロガネとあと一人以外の全員はある特殊な手術を受けている」

「特殊な手術?」

「強化人間」

『!?』

その言葉を聞いた瞬間、室内は凍りついた。

「強化人間…だ…と…、まさか人間の体を弄ったのか!」

「ああ」

はっきりとした肯定の言葉を聞いて衝撃を感じた。

「なぜ!」

「簡単だ、力が手に入るからだ」

そしてフェイトは彼等に強化人間のことを説明する。

「馬鹿げてる。正気の沙汰じゃないぞ!」

そこで草薙は一度大きく息を吐き出し黙考する。

「………よっし、分かった。アンタ等の仲間にそういった人種がいるのは理解した。が、まだ何かあるんだろ」

「へぇ、もう少し感情を露にするかと思ったが、意外と冷静だな」

「茶化すな、それにこれでもオルタネイティヴ4直轄部隊であるA-01を纏めてんだ」

「ふぅ、悪かった。で、今シロガネが乗っている機体のことだが、あれは特別だ。あの機体、ホワイトセラフには強化人間の能力を擬似的に再現するものが組み込まれている」

「おい、それじゃあ中の人間は……」

「ああ、普通なら内臓がやられる。以前は俺があれに乗っていたがピーキーな機体のお陰で一年近く戦場に出れなかった。だがシロガネはあれを苦もせず乗っている」

戴したもんだとフェイトは言う。だがやはりそれは武にホワイトセラフの全ての能力を教えたわけじゃないからだ。もしリミッター解除を教えたら武は間違いなくあの時の自分と同じ末路を辿るだろう。いや、最悪死ぬ。

強力な力は時に自らをも滅ぼす。

それは彼等レイヴン達が居た世界で実証されている。

「あ」

そう漏らしたのは誰か、武と孝之の戦いに決着が付く。

 

「ぜあぁぁぁぁッッッ!」

ホワイトセラフのブレードが煌く。

『はあぁぁぁッッ!』

エタニティがそれを受け止めようと同じくブレードを振る。

だが両者のブレードには決定的な違いがある。

それは威力だ。

熱の刃が交差し一瞬火花が散るが威力の差によりエタニティのブレードが掻き消される。

迫るホワイトセラフのブレードを孝之は右腕を犠牲にしてかわす。そのまま左手に順手で持っていた短刀で突く。

武はその攻撃を回避しようと機体を左に捻るがコアに掠る。その体勢のまま武は右手に持つレーザーマシンガンをエタニティの頭部に突きつける。

発射されるレーザーの嵐に孝之は回避できず、頭部を破損させるも右肩のロケットでホワイトセラフの左手を攻撃する。ホワイトセラフの左手にはZANGETUが逆手に握られている。それを突きたてようとした瞬間ロケットが飛んできて左腕にダメージを与える。そのお陰で左腕の能力と稼働率は落ちる。

だがそこまでだった。

左手に攻撃を喰らった瞬間、武はブーストを一気に吹かし後退する。勿論レーザーマシンガンを乱射しながら。

孝之はそれを回避できない。

なぜなら機体が稼動限界間近だからだ。フェイト達が話している間に二人は接戦を繰り広げていたが機体の能力の差によりエタニティはぼろぼろ、対してホワイトセラフはマシンガンによる細かい損傷とレーザーブレードによる小さな焼け跡くらいなもんである。

また二人の技量や戦い方にも違いがある。

武は“白銀武”という存在が最も得意とする三次元機動によるスピードを生かした戦い方、孝之は平面機動を駆使した戦いとロケットによるブレードなどを使った格闘戦に出来るだけ持ち込まないようにしてきた。

なにより二人の共通点は機体の挙動制御の旨さにある。

もし中堅クラスのレイヴンが彼等に挑んでも振り回されるのがオチだろう。最も上位クラスには通じないだろう。それが謂わば一流達との差だ。

ならばこそ勝敗を分けたのは機体性能の差だ。

砂上に立つのは武が乗るホワイトセラフ、そして機体を穴だらけにして倒れているのは孝之のエタニティ。

『状況終了。鳴海機重度の損傷により大破判定、よって白銀機の勝利です』

ヘルメットのヘッドセットに付いているスピーカーから遙の声が響く。

「ふぅ~、結構しんどかった~、でもまだまだだな、ここで躓いてたらフェイトさん達がいる場所には辿り着けない」

と、そこに孝之から通信が入る。

『負けたよ、強いなお前』

孝之が関心したように話す。

「いえ、まだまだですよ、それにレイヴンズネストじゃあ俺は一番弱いんですから」

『うわ~聞きたくねぇ~、はあホント上には上が居るって事だな』

「そうですね」

二人の笑い声が機体内とシミュレータルームの管制室内に響く。

 

<SIDE:グロリア・ファーロング>

 

現地に着き、情報によると彼等は私達と同じ基地に居ると判明したので済ますべき事は直に済ませて彼等を探す。基地内を探れば自ずと見つかるだろうと判断したのが正解だった。

基地のPXにいる職員に聞いたところ彼等が居るハンガーが近くだというので辺りを探すと前方に長い蒼い髪を一つに纏めた人物を発見。国連軍の服装じゃないことから察するにレイヴンズネストの人間と判断。声をかける。

「失礼、レイヴンズネストの方ですか?」

私が声を掛けると目の前の人物は一瞬肩をビクと震わせるがそれも一瞬のことで直に此方に、いや表現が正しくない。ゆっくりと此方に振り向く、此方を刺激しないようとする判断は賞賛に値する。

振り向いた人物は男性、身長は痩せ型の長身だが体はかなり鍛えられている。なかなかの美男子。服装は見慣れないが左胸に鴉を模したエンブレムが縫われていることから間違いなくレイヴンズネストの人間

その彼は先程からじっと此方を見ている。恐らく向こうも此方を観察しているのだろう。

すると左右の後方から同時に声が上がる。

「「お姉さまが聞いてるんですよ。答えたらどうなんです」」

はぁ、この子達は……私のことを尊敬し敬ってくれるのは嬉しいのだけどもう少し落ち着いて欲しいわね。

「二人とも落ち着きなさい。もう一度尋ねます。貴方はレイヴンズネストの方ですか」

二人を軽く宥めもう一度聞く。但し今度は疑問ではなく確認の為。そして目の前の人物が口を開く。

「そうだレイヴンズネストの一人だ。アンタは?」

そう聞き返されたので返答する。勿論相手に失礼の無いように、ここで相手の機嫌を損ねるのは空気の読めない者や馬鹿な貴族の人間くらいだ。

「失礼、私はイギリス王室騎士団の海外派遣部隊の隊長のグロリア・ファーロング大佐です。お会いできて光栄です」

そう私が返すと目の前の人物は納得したように頷く。

「成る程、香月博士が言っていた連中か、さてどうしたもんか」

彼の口から出てきた名前、香月博士。

確かレイヴンズネストのスポンサーは香月博士というのは去年の冬に行われた横浜ハイヴでの戦勝式で聞いたけど、そういうことね。

つまり私達が来るということは事前に知っていると。まあ私は私の役割を果たそう。

「少しよろしいでしょうか?」

「ん? ああ、すまない。なんだ?」

「折り入ってお話があります。我が国の女王陛下が貴方方レイヴンズネストとの謁見を望んでいます」

「えっけん? ああ、会談みたいなものか」

「はい」

さてどう出るのかしら?

「悪いがそれは俺の一存では決められん。聞くのなら俺達のボスに相談しないといけない。最終的な決定はそいつが下すから」

成る程

「直接会う事は…「ゼロ」」

通路の向こうから別の男性が現れた。今度は黒い髪で鋭い銀の瞳の人物、銀の瞳ということはロシア人系列の人間? でも目の前の人物、ゼロと呼ばれた彼は全く別の人種だ。これは一体?

「ジノーヴィー?」

「ジャックが至急全員を集まれとのことだ」

「ミッションか」

「分からんがその可能性は高い。それで其方は?」

「ああ、彼女等が例のイギリスの騎士団のようだ」

彼等の会話が一区切りついたところで此方も会話の輪に入る。

「初めまして、イギリス王室騎士団の海外派遣部隊隊長のグロリア・ファーロング大佐です」

「此方に何か用が?」

「はい、我が国の女王陛下が貴方方レイヴンズネストとの謁見をお望みです」

「謁見か、流石にこれはジャックに判断を仰ぐしかないな」

「ああ、俺もそう思う」

先程から彼等の口から出てくる人物ジャックというのは恐らくレイヴンズネストの主宰であるジャック・Oなのだろう。そして目の前の私が最初に話しかけた人物はゼロと言う名前で途中から現れた人物はジノーヴィーという名前なのだろう。推測でしかないが多分彼等の名前は偽名だろう。

と、そこに基地内のアナウンスが流れる。

『緊急事態が発生した。整備班などの一部職員以外は至急第一ブリーフィングルームに集合しろ。なおレイヴンズネスト及び極東から派遣された部隊に先程到着したばかりイギリス王室騎士団の方々にも来て貰いたい』

「この声は確かアーロン中佐だっけ?」

「ああ、先日白銀が倒した部隊の隊長の声だな、恐らくジャックの呼びかけもこれに関係する事じゃないか?」

「成る程把握した」

彼等はそのまま立ち去ろうとする。が私は引き止める。

「すみません。少し待って貰えませんか」

「「お姉さま?」」

二人に問題ないと促す。

「なんだ? というかアンタも行かないといけないんだろ」

こんな事を言うのは恥ずかしい、でも今言わないと後悔する。

「ええ、実は私達も連れて行ってもらえないかしら?」

「「「「え!?」」」」

ほら、だから恥ずかしいんじゃない。

第一私達が来たのは遂さっきよ知っているはずが無いじゃない。

「まあ、行き先は同じなんだしいいんじゃないか?」

「断る理由もないしな、それ行けばジャックも居るだろうし、その時に先のことも話せばいいしな」

「「ですね」」

どうしてそこで話が纏るのよ。

 

 

後書き

 第三章第八羽終了

ジノーヴィーをロシア系列と思うのはジノーヴィーという名前の元ネタにあります。

 というかジノーヴィーという名前自体がロシア語での男性の名前だったりします。ちなみにジナイーダやジノーヴィーの恋人であるアグラーヤもロシア人の女性名でもあります。

 名前の由来を探すのは結構面白い。ちなみに元ネタの出典先はACのwikiからです。勿論ロシア人名で探しても出てきます。

キャラクターの名前を考えるて結構しんどかったりします。

それと最後グロリアが地を出しちゃってます。彼女はとても可愛いく強く美しくカッコイイ女性です。(力強く言うな

まあこのグロリアは自分が理想とする女性像ですからね。強くてカッコイイ女性は大好きです。まさに戦乙女って感じの人が(そんなもんリアルにいねえょという野暮な突っ込みは無しで^^;)

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