聖暦21年3月
帝政国家アルサレア首都オルフェン郊外アルサレア軍仕官学校講堂
今現在アルサレアの士官学校の卒業式が行われている。が、彼はそれに出席しなかった。
否、出席する必要が無いと言った方が正しい。彼は仕官学校では非常に優秀な成績を叩き出し、軍はその成績を認めて彼だけをいち早く卒業させた。
同じ訓練部隊の仲間達は彼を羨ましがりはしたが不満は持たなかった。寧ろ自分のように喜び彼を祝った。
「ふぅ、さてと行くか……皆、機会が有ればいつか必ず会おう」
そう言って彼は3年間住んでいた兵舎に別れを告げ、部屋から出て行った。
講堂ではおそらく彼が所属していた訓練部隊の仲間の内の誰かが訓示を宣誓しているのだろう。彼の所属していた部隊は彼を含む4人のメンバーは皆あくの強い連中だがそれぞれが非常に高い能力を有していた。
士官学校での成績で彼等は常にトップだったが、同時に教官達にとっては問題児でもあった。
色々な事を思い出しているうちに彼は正門まで来ていた。そして目の前には一台の黒塗りの車が止まっている。
その傍には一人の美麗麗しき女性が立っていた。
軍の制服を着てはいるがそのかもし出す雰囲気は間違い無く歴戦の戦士だった。
「ゼロ・エグジスですね、私はセシリア・アーデンヘズル少佐です。準備は出来てますね」
発せられた声は凛としていながらも力強き意思を持っている目の前の女性、セシリア・アーデンヘズルは正面にいる少年…否…青年に声をかける。
そして彼、ゼロはその問いに敬礼と共に答える。
「はっ、ゼロ・エグジスであります。準備の方は問題ありません」
「そうですか、では助手席へどうぞ、これからアルサレア要塞に向かいます」
「はっ」
彼女はそう言って運転席に乗り込む、それに続いてゼロも助手席に乗り込む。
ゼロが助手席に座りシートベルトをしたのを確認するとセシリアは車を走り出させる。
アルサレア要塞へと向かう途中、セシリアは隣のゼロに様々な質疑応答をする。
「貴方が配属される場所に付いてはどの位説明を受けました?」
「いえ、殆ど何も……ただ部隊名を聞いただけです」
「貴方が配属されるのは暗部です」
「詳細な説明を聞いても?」
「勿論教えます。暗部はその名の通り裏側の任務をします。まあ、隠密部隊と認識して構いません。但し他の部隊のように別の部隊との共同などは殆どありません。有るとすれば重要事項による護衛部隊との共同くらいです。例えばグレン将軍の直属の特務部隊『グレン小隊』との共闘などですね、また本部隊は基本的に単独任務が主な任務となります」
「何故です?」
「暗部のメンバーは貴方と私を含めてまだ13人しか居ません。その中には歴戦の将兵もいますが、そう言った方は普段は軍学校などで教官をしています。また何より暗部の最大の一番の特徴は各々があらゆる事へのスペシャリストばかりだからです」
「成る程、ちなみに自分がその中の一番の新人ですか?」
「ええそうです。そして貴方のナンバーはⅩⅢです。ちなみに私は№Ⅱですから、憶えて置いて下さい」
「了解」
「さあ、間も無く要塞に着きます。要塞に着いたら先ずは参謀本部長と我が暗部の隊長と共に簡易的にですが着任式を行い。貴方に正式に階級章を渡します。その後は貴方が搭乗するPFの案内と説明、そして翌日の深夜3時に最初の任務を与えます。それにより貴方の評価が決まります。何か質問は?」
「有りません」
車は巧妙に隠された山岳地帯に入り、人口で出来た車両の搬出路に入っていく。
アルサレア要塞は山岳部に巧妙に隠された要塞で、それは山自体が一つの大要塞とも言えるもので地下数百メートルもある。
ゼロはセシリアの案内の元、これから自分の搭乗機になるPFを確認する為に格納庫に向かう途中。そしてゼロの服装はPFのパイロットスーツに着替えており、胸と首筋の階級章には准尉が記されてある。
ゼロは先程の簡易的な着任式を思い出す。
先程の着任式にはアルサレア兵団参謀本部長ツェレンコフ・ゴルビーと本来は参加しない筈であったアルサレア軍作戦司令官ダグオン・ゲーニッツ、そして暗部の隊長ゼムン・ゼルバ中佐と極少数で行われた。
これだけ少ない人数でありながらその場にいたゼロ以外の人間は皆高階級の佐官と将官であることから暗部がホントに一部の人間しか知らないということだ。
「着きました。これが貴方の乗機です」
と、ゼロが考え込んでいる内にどうやら格納庫に着いたようである。
格納庫内は自分たち以外には誰も居ないらしく、わざわざ人払いをしているようだ。また格納庫には他のPFは見当たらない事から見事な徹底ぶりである。と、ゼロは内心溜息混じりの感嘆とした評価をだす。
そして今、自分の目の前にある機体、それは訓練兵や一般兵が搭乗するJファーではなく、指揮官用にチューンナップされたJファー・カスタムである。
「Jファー・カスタム……」
「実際に見た事は有りませんか?」
ゼロは首を振るう
「いえ、カタログ資料や士官学校で閲覧できるデーターベースでなら、何度も見ましたが実機は…」
「成る程、確かにそうですね、ですがこれはただのJファー・カスタムでは有りません」
「と言うと?」
「本機は通常のJファー・カスタムの出力を更に10%も上げています。更に隠密作戦を前提として背中の肩パーツであるウィングユニットに特殊なジャマー粒子を撒布するように改良しています。但しこの粒子を撒布中にエネルギーを消耗するような行動を取った場合エネルギーゲージが減るので注意してください。また両手の武装も試験的なクセの強い武装を搭載しています。勿論従来の兵器は装備可能です。では、作戦時間まではまだ十分あるので、貴方自身で好きな機体色に塗装して構いません、後で整備チームが来ますので彼等に伝えてください。それと自分でしっかりと機体の具合を確かめてください。その機体が貴方の命を守ってくれるのだから確りと確認を、では私は暫くの間失礼します」
「了解」
セシリアが退出したのを確認するとゼロは自機となった特殊仕様のJファー・カスタムのコクピットに乗り込む。そしてOSを立ち上げ各部を確認する。
「成る程、確かに特殊な条件下での使用が前提とされた機体だな。肩のウィングパーツの他には……右手、ショットライフル…なっ! このライフル、オプションとして特殊兵器を取り付けてるのか、特殊兵器メギド、直撃のダメージはそれほどでもないが爆発による超高温による周囲の施設破壊用の武器…成る程、全てを焼き尽くし何も残らないようにするのか、左手は……素手? あ、いや、有った。脚部の左右リアアーマーに小型化に成功した試作型のレーザーソードをそれぞれ一つ装備…か、成る程ね、此方の特性は確り把握済みか、余り気分のいいものではないな……ん?」
ゼロがディスプレイから目を離し足元を拡大すると整備士が数名いた。セシリアが言っていた整備チームなのだろう。なら彼等に機体を自身のパーソナルカラーに塗装して貰おうと決める。
深夜2時55分カシュー草原
『ⅩⅢ、大丈夫ですね?』
「こちらⅩⅢ、全システム及びオールウェポン全て問題無し、何時でも始めれます」
『了解しました。今回は私が貴方のオペレートを務めますので』
「少佐はパイロットでは?」
『確かに私はPFのパイロットですが同時に暗部の各隊員への事務連絡や状況によっては私がオペレートをしたりするのです』
「成る程、至れり尽くせりですね」
『予定時刻となりました。もう一度確認します。今回は貴方の最初のミッションです。作戦目標はこの先にあるヴァリム軍の基地の壊滅、いいですか、決して一人たりとも生かしてはなりません。確実のミッション成功を祈ります。また補足事項として基地破壊にはメギドの使用は構いませんが状況を良く理解した上で使ってください。でなければメギドの爆発範囲に貴方が巻き込まれます』
「了解」
『それではミッションスタート』
セシリアからの作戦開始の合図を聞いた直後、ゼロはフットペダルを思いっきり踏みこむ、それによってJファー・カスタムは猛スピードでヴァリム軍基地に向かう。
自身の蒼い髪と瞳と同じ色に塗装されたゼロのJファー・カスタムは飛び上がり月を背に猛然と突き進む。
to be continued………
後書き
チャプター1-1終了
マブラヴのほうとは打って変わって人間同士の戦争です。
ちなみにまだ最初のチャプターなので秘密な事が一杯あります。
次にはPF同士の戦いを書きます。またヴァリム製のPFの紹介とゼロのJファー・カスタムの武装の紹介などを予定しております。
PF説明にあるコンビネーションバーストの説明は次の話でします。
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