イギリス領首都ロンドン
この地はイギリスの首都でもありそして現在ではEU連合諸国の一部がここに本部を置いている。
そして此処ロンドンの中央に位置するのはイギリスの政庁でもありイギリス軍が誇る最強の戦力、王室騎士団の本拠地でもある。
そしてその建物の部屋の一つ、イギリス女王の執務室で二人の人物が対面している。
一人は執務用の机に座っている女性で、現イギリス女王で、もう一人は王室騎士団海外派遣部隊の隊長のグロリア・ファーロング大佐。
「グロリア、準備は出来ましたか?」
「はい、陛下、新人達の準備も問題無く、いつでも出立出来ます」
女王からの問いかけにグロリアは問題無いと優しい口調で答える。
この二人は比較的歳が近く、公の場以外では形式ばったやり取りはしない。
元々騎士団はイギリス内の貴族達のみが入団できる特別なものだったが、BETAがユーラシア大陸を侵攻して以来、欧州各国は徐々に人手が足りなくなり、それは騎士団も例外ではなくその為1995年に貴族以外、つまり一般人の採用を認めた。
その事に不満を持つ者は居たが現状を理解し渋々認めたらしい。
騎士団の採用基準は訓練校の成績に順ずり、それは一般だけでなく貴族達にも同様の処置が取られた。その為家柄等を貴ぶ者達も自らの名を守る為に懸命に訓練を行う。そのお陰で騎士団の実力は世界でも屈指の存在となっている。
そしてその中でグロリアが若いながらも海外派遣部隊の隊長を勤め、そして大佐の階級にあるのは彼女が民間の出で選ばれた最初のメンバーの一員の中でも特に優秀な実力を持っていたからだ。
そしてそんな彼女を目に掛けていたのが今のイギリス女王である。
女王はグロリアの才を認め重宝した。グロリアもその期待に答え、今では女王に取って尤も信頼する一人である。
「そう、それは良かったわ、向こうでの武運を祈っているわ」
「ありがとうございます陛下、帰ってきたら現地でのお話を聞かせましょう、では私はこれで」
「あっ待って、グロリア」
「?」
グロリアは退室しようと背を向けるが女王が呼び止める。
「貴女に伝えとかないといけない用件があるの」
「何でしょう」
「グロリア、レイヴンズネストを勿論知っていますよね」
「ええ」
グロリアの返答は速かった。
レイヴンズネスト、知らない筈は無い。今や各国が注目している傭兵集団で、たった7機の謎の戦術機で横浜ハイヴ攻略戦に参戦して多大な戦果を上げている。
そしてその半年後に行われた戦勝式でグロリアは彼等を直で目にしている。
「そのレイヴンズネストがアフリカのエジプトに現れるらしいわ」
「本当ですか!!」
「ええ、諜報部からの情報よ、極東国連軍の香月博士の直轄部隊との共同任務らしいわ、恐らく貴女は現地で出会う筈よ」
「分かりました。それで私に何を?」
「貴女には彼等の戦闘データを観測して収集して来て欲しいの、それと……もし話す機会があるのならば彼等と交渉をして頂戴」
「交渉?」
「内容は私との謁見です」
「……分かりました。他ならぬ我等が敬愛する女王陛下の御下命です。その勤め果たして見せましょう」
「頼みます。グロリア」
インド洋上大型戦術機母艦【八幡】
有澤重工製の大型戦術機母艦にA-01は現在搭乗している。
通常の戦術機母艦は戦術機を最大16機収容できるが、この大型戦術機母艦は最大30機収容可能で、しかも今回は有澤社長の厚意で母艦にシミュレータも設置してある。
そして戦術機が収容してある一角で草薙と伊隅と孝之が話し込んでいた。
「鳴海、お前はその装備でいいんだな?」
「はい、これで十分です」
孝之の機体『エタニティ』はレイヴンズネストから預かった一部のパーツを使い多少の改修を施した。
頭部を万能タイプのYH15-DRONE、右背をレーダから小型ロケットのCR-WB72R02に変更した。
「伊隅も問題無いんだな?」
「問題有りませんよ少佐、それに少佐の方が問題有りそうですしね」
「言ってくれる」
伊隅は夕呼に言われたとおりACのパーツを使い自身の機体を組み上げた。その機体は四脚タイプの機体で、伊隅としては二脚の方にしたかったが夕呼の命令で二脚以外の脚部を使うことになった。
機体構成は、頭部・YH14-STING、コア・CR-YC99UL、腕部・A05-LANGUR、脚部・CR-LF93A2、ブースター・CR-B81、FCS・KOKUH、ジェネレーター・G02-MAGNOLIA、ラジエータ・R04-LAUREL、エクステンション・BYAKUE、左背・CR-WB69CG、右背・WB14RG-LADON、右手・CR-WR88RB、左手・CR-WH05RLA、右格納・WH09H-WRAITH、左格納・WH11PU-PERYTON
ゼロ達の世界では正直言って過剰なほどの火力を持った機体である。
「しかし鳴海の言うとおりエネルギー兵器は癖になりそうです」
「あっ、分かりますよ伊隅大尉、エネルギー兵器って機体のエネルギーさえ気を付ければ万能ですからね」
「そうだな、しかし何故今になってこんなとんでもないものが現れたのか気になるな」
「確かにな、アーマード・コアが何時、何処で、何処の組織によって作られたのか? それが謎だ」
「あれ、少佐、アーマード・コアを作った組織ってレイヴンズネストじゃないんですか?」
「いや、レイヴンズネストはあくまでアーマード・コアを使う傭兵部隊だ。多分だが作ったのは別のところだろう、それにあるパーツ同士で共通性がある」
「共通性?」
「少佐の言うとおりですね、鳴海、理由は分かるか」
二人に問われた孝之は必死に考える。そして何か思い当たる節があったのでそれを答える。
「えっと………あっ! フレームや武器で特徴が全然違うんですよね、フレームパーツは一部のパーツが角張ったりしたのや曲線的なのがありますし…う~ん…なんて言うか不揃いなんですよね、武器にしたってそうですし……」
孝之は合っているか二人に視線を向ける。
「そうだな、それともう一つ、鳴海、お前、香月博士にパーツのカタログなどを見せてもらったろ?」
「はい」
それが? と孝之は首を傾げる。
「お前の言った一部のパーツが不揃いというのはパーツの名前にもある。例えば角張ったパーツの殆どはアルファベットと数字の羅列だが曲線的なパーツの殆どは最初は角張ったパーツと一緒だがその後はアルファベットで様々な名称が付けられている。後は少数だがローマ字で名前が付いているパーツもある」
「それじゃぁ、まるで三つの別々の所が作ったみたいじゃないですか」
「みたいじゃなくて、別々の…恐らく組織が作ったんだろう」
それを聞いて孝之は目を見開く、そして今度は伊隅が更に信じがたいことを話す。
「もう一つ疑問が残ります」
「なんだ伊隅?」
「角張ったパーツ限定なんですが、頭部CR-H69S、コアCR-C69U、腕部CR-H69SとCR-WA69MGとCR-WA69MSにCR-WA69BZ、脚部CR-LH69SにCR-LT69、と他にも各部位に69と名の付いたパーツがあります。他のパーツも見てみましたが数字の順序的にこの69が一番低い数でした。恐らくはこの69というのはアーマード・コアが開発された年、詰まりは1969年に開発されたんじゃないかと思います」
「成る程」
「でもそれだと余計疑問が残るのですが……」
「構わん、どんどん言ってみろ、言うだけ、疑問に思うだけならタダなんだから、まあ答えを言えって言うなら博士かレイヴンズネストに色々代償を払わせられるかも知れんけどな」
「少佐、笑えませんって……」
草薙はおどけた風に喋り、孝之はげんなりする。伊隅はそれに苦笑しながら続きを話す。
「世界で初めて戦術機が正式配備されたのが1974年、これは明らかにおかしいでしょう。例え初期型の機体と言えどあれだけの完成度を誇った機体が戦術機が配備される数年前に既に完成しているなんて考えられませんし…………」
「如何した?」
「何より、アーマード・コアは対BETA用兵器じゃなく人間などを相手に想定された兵器じゃないかと思うのですが……ただ、正直言ってこんなのは全部私の想像でしか有りませんし………」
それを聞いて孝之は顔を俯かせて考える。
(確かに俺も伊隅大尉の言うとおりのことを考えたことがある。どの装備も確かに多種多様の仕様に答えれるように設計されているようだけど、でも実弾武器の弾数が異様に少ない気がする。いや、アーマード・コアの大きさを考えたらあれ位が普通かも知れないけど…やっぱりどこか違和感を感じるんだよな)
そのまま孝之と伊隅は自分の世界に浸って考え込んでしまう。が、その空気を良くないとみた草薙は二人を引き戻す。
「そこまでだ二人とも、今俺達が幾ら考え込んでも答えは得られんさ、なら今は自分たちに課せられた役目を果たそうじゃないか」
「「そうですね」」
彼等にとって謎は深まるばかりだった。
国連軍横浜基地
夕呼は今自室で考え込んでいた。
内容はA-01が日本を発つ三日前にクレズと彼等の世界のことについてを話した事だった。その事を思い出し顔を顰める。
『ひっひっひっひ、香月博士、もし人が人を超えるとするならば如何すればいいと思う?』
話の途中でそんな質問をされ意味が分からず夕呼は『さあ』と答える。
『ひっひっひっひ、人が人を超えるには化け物になるしかないのだよ』
それを聞き夕呼は眉を顰める。そしてクレズから貰ったデータの中にあった一つの単語を思い出す。『強化人間』
『人には固体それぞれの差がある。そしてその差すらも越えるには人は化け物になるしかない。だがその化け物さえも超える存在を私は知った』
『ドミナント』
夕呼はまたもう一つの単語を思い出す。
【ドミナント】
彼等の世界のある科学者が提唱した理論だが確証も無く、殆どの人間が興味を示さなかったらしい。
だがジャック・Oはそれに目を付け、世界の危機的な状況を救う為、その可能性を信じてドミナントの可能性があるレイヴンを集めて、様々な計略を使いレイヴン同士を戦い合わせその中からドミナントを探そうという分の悪い賭けをした。
『そう、香月博士、ドミナントだ。ラストレイヴンと呼ばれるゼロ、あいつの戦闘データを取った時は震えたよ』
クレズは目をテーブルの置いてあるコーヒーモドキを覗きながら答える。夕呼から表情は見えないがその声はどこか喜色に満ちていた。
『私は仕事柄様々な人間のデータを取って見てきたが、あれ程の物は見た事が無い。だが、どれだけ素晴らしい数値を出そうともあいつの体は人の体のままだ。ルシフェルを完全に扱いこなせなかった。だから私は施したのだよ、あいつを人のままで人には無いものを取り付けた』
『何を?』
『ひっひっひっひ、ナノマシンだ』
【ナノマシン】
夕呼も科学者であるためその言葉を聞いたこともあるしどの様なものかも知っている。この世界ではまだ研究段階だが夕呼の姉もそのナノマシンの研究をしていると聞いた。
『効果は?』
『ひっひっひっひ、効果は治癒促進と痛覚の麻痺だ……』
それを聞いた夕呼は正気かと疑った。
つまり、痛覚を麻痺させ身体に掛かるGを無視しそしてダメージを負った内臓系をナノマシンで治癒するという正気を疑うものだった。
『まあ、ナノマシンを作動させる為の制御系の決定権はあいつのオペレータが持っているがな、だから戦闘中以外、日常生活ではナノマシンの活動は停止している為問題は無いが、それでも自命は縮めるがな』
正直言ってそれ以上は聞きたくなかった。自分も外道となる覚悟はあるが彼等には人道や道徳的感情がないのかと疑う。
「白銀、アンタは何処に向かうのかしら? アンタも人を超えると言うのならアタシはそれを………」
魔女は決意する。
別の世界と言えど教え子には変わりない、そしてその教え子が望むのなら自身もそれに付き合おうと……
「……博士………」
そしてそれを見つめる一人の少女
後書き
第三章幕間終了
あんまり関係ないけど、どれくらいの人が知っているか分かりませんが伊隅大尉の中の人は実はAC・MOA(マスターオブアリーナ)に出てきた人物ラナ・ニールセンと同じで更に某カエル軍曹やV○ンのカ○ジナさんとも同じ人です。
声優さんって凄い。
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