新たな技術

 

 2000年2月19日

国連軍横浜基地90番格納庫

一部の人間しか立ち入ることのできないこの格納庫に二人の人物が居る。

一人はこの横浜基地の副指令でありオルタネイティヴ4の責任者の香月夕呼、もう一人はアジア圏でも有名な大企業の社長の有澤秀隆。

二人の目の前には戦術機のパーツと思われる物が鎮座していた。

「やはり一番の問題はジェネレーターのブラックボックス部分か……」

「ええ、どうしても当初の予定スペックに達することができないのです」

そのまま言葉を続けながら有澤社長は夕呼に資料が挿まれたバインダーを手渡す。夕呼はそれに目を通しながら有澤社長の話を聞く。

「それは現在開発が済んでいるパーツなどの詳細なパラメータをまとめた物です」

紙には二脚型の機体の全体像とその機体コード、各種細かいパラメータに新型の推進ユニット、更に新型の兵器についても事細かに記してある。

夕呼はある部分で目を止めた。そこには新型の推進ユニットの項目で、面白そうに目を細める。

(へ~え、跳躍ユニットならぬ飛翔ユニットねぇ)

新型の跳躍ユニットの名称は飛翔ユニットと呼ばれ、これまでの跳躍ユニット以上の推進力を持ち、設置場所も戦術機と同じ場所ではなく背中に取り付けてある。推進剤の消費量も従来の五分の一で、更に擬似的ながらもOBも再現してある。OB時の推進剤の消費量は跳躍ユニットのアフターバーナー全開時の半分しか消費しないという理論値である。

そう理論値なのだ。ジェネレーターが完全状態のシミュレーション上では……

だがそこに至れないないのが現在の状態である。

「しかし…まあ、よくここまでできましたね、正直驚いています」

夕呼は純粋に驚いている。幾ら戦術機を開発していない所だからって正直ここまでとは思っていなかった。

「かなり危ない橋を渡ったんじゃないんですか?」

その言葉を聞き有澤社長は苦笑する。

「ええ、かなり危なかったですよ。各地に新型の兵器を開発する為に各戦術機のデータと設計図が欲しいと頼み込み、出し渋る所には弾薬などの補給物資を渡すなどして、あらゆる場所からデータを手に入れました。それに一部の国からは私達のことを嗅ぎ付けスパイを送り込んできているようですしね」

夕呼の頭の中には先日来た一人の男を思い出して少し不機嫌になった。

鎧左近、帝国情報省外務二課の課長で現将軍からの信頼も厚い油断なら無い人物。

「そういえば香月博士、例のレイヴンズネストの技術者の一人を招くという話でしたが、何時ごろに?」

「もう間も無くです……? ピアティフ、何? そう、分かったわ、直にこっちに通して」

「どうやら来たようですね」

「ええ」

手元の資料には、『コアプロジェクト開発兵器コード』の大文字にその下には『二脚型汎用機・震電』『四脚型突撃機・紫電』『戦車型重武装重装甲機・雷電』の名が記されている。

 

「ひっひっひっひ、久しぶりだな香月博士に有澤社長」

「久しぶりねクレズ博士、と言っても最後に話したのは数週間前だけどね」

「此方は数ヶ月ぶりかなクレズ博士」

夕呼が呼び出したのは、今やレイヴンズネストの整備主任とも呼べるクレズだった。

クレズも『コアプロジェクト』に興味を示し手を貸すことを了承した。

そしてここに天才科学者の香月夕呼と狂気の科学者クレズと大企業の社長でもあり一人の職人の有澤秀隆という異色のメンバーが揃った。

それから僅か二週間、ずっと三人と有澤の社員と横浜基地の整備士、併せて五十人以上のスタッフで最低限の休息と食事しか取らずに急ピッチで作業が進められた。但し全員の顔に疲労は感じられるもののとても生き生きしている。

そして……

 

2000年3月6日

「さて今度はどんな任務が待っているのやら」

そう言ったのは今やA-01のエースの一人鳴海孝之でその横には何時ものメンバーの平慎二に涼宮遙と速瀬水月がいる。

また、周りには他のA-01の隊員もいる。但し一つの集団を除けば……

「ヨシキタ!! ツモ! リーチ、役牌1にドラ4の跳満!」

「クッソー!/またか!/少しは加減しろ」

阿鼻叫喚とはまさにこの事か、という感じでそこだけが何故か盛り上がっている。

彼等は何故か麻雀をしている。先程からじゃらじゃらと何故かちゃぶ台の上で音を立てながら。

無論こんなことをしていたらあの人の逆鱗に触れることになる。

「少佐達、いい加減にしてください!! 毎回毎回、賭け事をするなとは言いませんが、時と場所を選んでください」

伊隅が説教をしだすが彼等、草薙少佐と浦松大尉に木村大尉に牛尾大尉の四人は何処吹く風と気にせずちゃぶ台の上の麻雀牌を崩してじゃらじゃらならす。

「少佐達も相変わらずですね」

あははという感じに遙が苦笑する。

「伊隅大尉も不便だな」

孝之も自分達の隊の隊長陣の無茶苦茶ぶりを知っているから冷めた風に見ている。

「それにしても副指令まだかな~」

「落ち着きがありませんね、速瀬少尉は、落ち着きの無い女は嫌われますよ」

「なっ、宗像! あんたね!」

「駄目ですよ美冴さん、例え本当でもそんなことを言っては」

「あんた達そんなにアタシをおちょくって楽しい!」

もはやなんとも言えない状態のA-01であった。

「みんな~おまたせ~」

と、そこにブリーフィングルームの扉から入ってきたのは夕呼とクレズに有澤社長の三人で三人の目元には見事なまでの隈が出来ていて、物凄く人相が悪くなっている。

夕呼の来訪を認識した伊隅は直に敬礼をしようとするが直にやめる。理由は今の夕呼が物凄く機嫌が悪そうに見えたからだ。だが同時にどこか達成感のある顔でもあった。それは他の二人にも言えることでもあった。

「おっと、ようやく博士のお出ましか、仕方ない続きはこの後だな」

そういい草薙達も麻雀をちゃぶ台と共に部屋の隅に置き、席に着く。それを確認した夕呼は話を始める。

「さて、アンタ達には新型のOSのテストをやってもらったけどここでまた新型のテストをしてもらうわ、しかも実戦でね」

その言葉を聞き全員の顔が変わる。

新型のOS『XM3』、それは夕呼と一人の少女が作り上げた次世代OSである。A-01は今までそれを使い訓練、そして九州での実戦証明(コンバット・プルーフ)も済ましている。

彼等はこのXM3の力を目の当たりにし実感して更に強くなっている(若干一名だけ体験できなくて凹んでいたが)。

聞くところによると、これもまたレイヴンズネストからの協力があったからこそらしい。

そして今回もそうなんだろう、なら大丈夫だと彼等は考えている。

「細かい説明する前にアンタ達に紹介しとくわね、レイヴンズネストの整備主任のクレズ博士よ」

夕呼に紹介されてクレズが前に出てくる。

「ひっひっひっひ、諸君よろしくな、私がクレズだ」

このときA-01の全員は思った。

(大丈夫なのか、俺/私達!!)

 けどそんな事は知らんと夕呼は話を進めていく。

「まずアンタ達にはこれを教えるわ」

モニターには設計図らしきものが映される。そしてモニターの上部には『コアプロジェクト』の文字。

「コアプロジェクト?」

「そうよ伊隅、アンタ達も知っているでしょう。レイヴンズネストが保有している戦闘兵器『アーマード・コア』を」

その言葉に全員が頷く、というよりもA-01では一人だけそのアーマード・コアに乗っている人物が居るので当然ではある。

「『コアプロジェクト』はそのアーマード・コアを此方が扱いやすいように改竄して量産するというプロジェクトよ」

その言葉を聞いた全員の目の色が変わる。何せ今此処に居る一部の者達は明星作戦でその力を間近で見て、更に孝之の乗機『エタニティ』の力を分かっているので、それが量産されるということに驚くが…

「副指令」

「なに、伊隅」

伊隅などの古参は疑問に思ったようだ。

「副指令、オルタネイティヴ4はどうなるのですか?」

その言葉を聞き他の皆もはっとなる。

「流石ね、伊隅、でも大丈夫よオルタネイティヴ4は相応の成果が出ているわ、だから今はオルタネイティヴでは出来ないことをしているのよ」

「分かりました」

その言葉に伊隅は納得する。

「話を続けるわね、先日ようやくプロトタイプが一機完成したわ、それがこの機体『震電』よ」

モニターが切り替わり、一機の戦術機が映し出される。

姿は現状の戦術機との違いは余り感じられないが、やはりどこか違う所がある。

「ホントの所は後二機作る積りだったけど時間が足りないから今回は二脚だけ実戦テストを行うわ、じゃっ、クレズ博士、後はお願い」

「ひっひっひっひ、引き受けた」

そう言ってクレズは夕呼と変わる。

「ひっひっひっひ、まず言っておくが、この『震電』はまだ完成形じゃない、本来のスペックじゃないと言うことを頭において置いてくれ」

クレズは挿し棒を持ちながら説明を始める。

「まずこの二脚型は汎用性を重視して設計されている。どちらかと言うとそうだな、第二世代型の戦術機に近い図体だ、だが機動性は全然違う。またOSもXM3に態様しており諸君等なら戸惑いは少ないはずだ。……と言っても量産には暫く時間が掛かるがな、武装の方も従来の武装は問題なく使えるから安心しろ」

そして飛翔ユニットとエネルギー関係の話をして全員が理解したところで今度は新しい武装の説明をする。

「武装の方は諸君等が今使っているもので順次改良できるものはしているが、矢張り新しい風を吹き込まねばな」

ちなみにA-01は現在改良した突撃砲と支援突撃砲と長刀と短刀を使っている。

突撃砲と支援突撃砲はそれぞれ三十六mm弾をリニア機構で撃ちだすようになった。有澤重工がレイヴンズネストから預かったリニアライフルを参考にして改良したもの、但しリニア機構にしたお陰で攻撃力は上がったが弾数は減少した。減少した弾数は2000から1500。

長刀はレイヴン達が使っていたZANGETUを参考にしてより日本刀に近い形にした。そのお陰で切れ味は更に増し、また、よりスマートになった為重量も今のやつよりかは多少減っている。ただその所為でより玄人向けの仕上がりで耐久性に難がある。勿論それは剣術が得意な者には気にならないもので、帝国軍や斯衛軍には三十六mm併せて好評である。

短刀に付いても特殊な改良が施されており、此方は夕呼監修の元開発され、特殊機能として短刀内部に電磁熱機能を追加して、その機能を使うと刀身が熱を帯びてその能力によりBEATを焼き切るというものである。勿論短刀の中にそんな機能があれば故障を起こすかもしれないが、例え故障が起きても通常の短刀としても使える。

そして新型の兵器は

「まずこれだ」

モニターは切り替わり一つの武装を装備した吹雪を映す。

ちなみにこの装備を試射しているのは有澤社長で彼は試作兵器は自分で使わないと気がすまないらしい。但し戦術機は今まで有澤重工が作らなかった為、社員達は必死になって社長が『震電』に乗るのを止めた。

「これは三十六mmチェーンガンに変わる新たな兵器、ガトリングガンだ、弾数は3000で、破壊力も申し分無し、更に片手での装備も可能、但しそんな事をすれば照準はズレまくるから気を付けたまえ、また『コアプロジェクト』で作られる機体は各種ハードポイントがオリジナルの同じ部位だからそれに態様した箇所への設置も可能だ、その場合銃身の延長も可能」

またモニターが切り替わる。

「そしてこれはショットガンだ、聞くところによると現在でもショットシェルは使われているらしいな、もっともそれは極一部らしいが、話を続けよう……ショットガンは当たり前だが散弾を発射する武器だ。これは特に前衛組みが重宝することになるだろう。諸君等も知っていると思うがレイヴンズネストに現在一人だけショットガンを使っているヤツがいる。弾数は150だ。決して無駄撃ちはするなよ」

更に説明は続く

「こっちはスラッグガンだ、これは手に持つ武器ではなく、諸君等が何時も乗っている戦術機なら背部パイロンに取り付ける。『震電』なら背中のハードポイントに取り付ける。弾数は100だ」

「あの~」

「なんだ」

水月が手を上げて質問する。

「ショットガンとスラッグガンの違いって何ですか?」

「違い? そんなもの破壊力と同時発射数が違う、具体的にはショットガンの散弾の数は7、スラッグガンは18だ」

「へ~」

「分かったかね?」

「分かりました」

「よろしい」

そこで話は途切れた。

「続けるぞ」

次の映像には肩に砲門のような物を装備している。

「これは投擲砲だ、投擲砲が撃ちだす弾は弧を描きながら飛ぶ。その為この武器は前衛向けじゃなく後衛向けの武器だ。また発射する弾にも複数種類がある。一つは榴弾砲、もう一つは設置型の地雷で、これはBETAに直接取り付けるも良し適当に撒いて罠として使用してもいい。ふむ……こんな所か、では香月博士、後は頼む」

 モニターの映像は消され、再び夕呼が前に出る。

 「アンタ達は今説明された兵器の実戦テストを行って貰うわ、場所はアフリカのエジプト国連軍基地でレイヴンズネストとの共同作戦よ、仲良くしなさいよ~」

『は~い』

夕呼も夕呼もだが全員がこんな感じのノリで流石に伊隅は頭を抱えたくなった。

取りあえず伊隅は立ち直り、夕呼に質問をした。

「それで副指令、その新型機には誰が乗るんですか?」

「新型機じゃなくてプロトタイプよ伊隅」

「はあ」

「乗るのは草薙、アンタよ」

「やれやれ、A-01は何時から試験部隊になったのやら」

「文句言ってないでアンタはアタシの指示に従いなさい!」

「フッ、イエス、マム」

「草薙、アンタは決して死ぬことは許されないわ、『震電』は何度も言うようにまだプロトタイプ、何時問題が起きるか分からないしエジプトは只でさえクソ暑い土地なんだから気を付けなさい。あと『震電』にはベイルアウト機能もまだ搭載していないからその辺りも頭に入れときなさい。それと伊隅と鳴海」

「「はっ」」

「伊隅は今あるアーマード・コアのパーツを使って自分の機体を組み立てなさい、但し鳴海が二脚タイプの機体を構築しているから伊隅はそれ以外の脚部を使いなさい。クレズ博士の話だとレイヴンズネストの機体はいまのところ殆どパーツの換装をしないようだからね、鳴海、アンタも今の内に自分の機体のパーツを変えときなさい」

「「はっ」」

「出発は五日後よ、それまでは各自新兵器の性能をシミュレータで確かめておきなさい。もうシミュレータにはデータの入力は済ましてあるから、草薙と伊隅に鳴海はアタシに付いて来なさい」

『了解』

何人かが敬礼しようとするが夕呼は視線でそれを止めさせ自身はそのまま部屋を出て行く。孝之やクレズ達はそのまま付いて行き、他の者は我先にと強化装備に着替える為ドレッシングルームに走り出す。

 

 

 

後書き

第三章第五羽終了

今回はもう中二病満載のお話です。どうか温い目で見てやってください。

H08 9/16 掲示板の指摘によりショットガンとスラッグガンの説明を一部改定

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