幼少の頃から私は誰よりも優れていた。父も軍では高官として手腕を振り、また初期の戦術機開発プロジェクトのスタッフだった、私はそんな父を尊敬しそして私も軍に入った。
そしてそこでも私は誰よりも優れていた。部隊内の成績は誰よりも良く、模擬戦でも負けたことは一度も無かった。
そして戦術機のパイロット・衛士となった。
だが、初めてのBETAとの戦闘は実につまらないものだった。
確かにあの物量は脅威だ、だがそれだけでしかない
奴等には戦術という物が存在しない、だから詰らない、ただ目前に迫るBETAの攻撃をかわしそこに攻撃する。なんとも単純な作業だった。これならまだ対人などの模擬戦、いや人間同士の戦争の方が楽しめそうだ。
その事を父に話したら大笑いされた、何故笑うのか尋ねたらこう返された「過去も現在でもそんな事を言ったのはお前が初めてだ」との事
1999年4月 エドワーズ基地
「明星作戦?」
父のその言葉にもう一度問い返す。
「そうだ、日本にある横浜ハイヴの攻略作戦を帝国軍、帝国斯衛軍、大東亜連合、そして国連軍と我々米軍が参加することになっている」
ハイヴ攻略作戦か、ただのBETAとの戦闘よりかはマシか、だが
「それで、私に話とは」
「うむ、お前にはその明星作戦で我々が開発した新型爆弾、通称『G弾』の運用テストを行うのでその観測と国連軍のオルタネイティヴ4の最高責任者の香月夕呼博士の直属部隊A-01の監視だ、これは我々オルタネイティヴ5の総意だ」
G弾か、確かBETA由来の新種の元素『グレイシリーズ』を使った兵器でその威力は核弾頭以上の理論だった筈、今回の作戦でその実戦での性能を確かめようというのか、とりあえず一つずつ確認するか
「そのG弾を使用することに付いて各国はどのように?」
「G弾の存在は我々しか知らない」
なるほど、恐らくは何らかの問題があるのだろう、まあ私の知ったことではない、そしてA-01か……確かその部隊は連隊規模だったが度重なる激戦で今や二個中隊しかいない部隊だったな、そういえば以前国連の本部に行った時その香月博士と一人の衛士に会ったな、確か草薙という名前だったな
「なにを考えているのか分かるが、A-01とは戦闘するなよ、勿論他の軍ともだ、香月夕呼という女は侮れんからな、一歩此方が間違えれば此方の首が飛ぶ」
「分かっていますよ、非常に残念ですが」
「お前というヤツは…」
そういえば確か極東にはA-01の他にも斯衛の紅蓮醍三郎などのエースがかなり居たな、これは楽しみだ…
私の今の楽しみは世界中にいる言わばエースと呼ばれる者達の事を調べることでいずれはその全員と戦ってみたいと思っている。
今興味があるのは、先の斯衛軍の紅蓮醍三郎にソ連のオルガ・テレンティアや紅の姉妹、EU軍の不退の騎士と呼ばれるレオス・K・シュバリエ、イギリス王室騎士団の海外派遣部隊の指揮官でヴァルキュリアと呼ばれるグロリア・ファーロング、国連のA-01の隊長の草薙賢吾にアフリカ方面のアーロン・バルドゥーインなど等世界中捜せばかなりの数
「それでA-01を監視する理由は?」
「ああ、A-01は秘匿部隊だがその戦績は相当な物だ、全部隊が参加するかは分からんがそれでもその部隊の実力をしっかり見定めてきてくれ」
「了解、では失礼します」
「アレス」
執務室から出て行こうとしたとき父が軍人としてでなく父親として声を掛けてきた。
「なんです」
「お前は今の戦争がまだ不服か」
なんだそんなことか…そんな事は当然
「不服ですよ今の戦争は、昔も言いましたがBETAとの戦争など詰らない、やはり同じ人間同士の戦争の方が面白い」
そう言って今度こそ部屋から出る、そしてそのまま格納庫に向かう、恐らくそこに部下たちも居るだろう。
格納庫には私の乗機であるYF-23ブラックウィドウⅡと部隊員達の乗機の高機動用にカスタマイズされたF-15Eが置いてある。
YF-23は1990年にアメリカの次期主力戦術機の座をYF-22と競争、当初は総合的な性能はYF-23が高く優勢だったが我が国の戦術は中遠距離からの砲撃戦が主体で今まで開発してきた戦術機のどれもがそうしてきた。
だがYF-23はBETAとの近接戦闘を主体とした機体で他の米軍機とは違ったが、国はG弾の運用を主目的にした戦術が取り易いYF-22を選んだ、だが今から5年前に私がこの機体を見て父に譲って欲しいと頼み、オルタネイティヴ5の権限で接収して、それ以来私の乗機となった。
このブラックウィドウⅡは他の機体と違い全距離で万能に戦えることから私は気に入っている。
「大尉どうしたんですか?」
私が来たことに気づいた部下の一人が声を掛けた。
「丁度良いところに来た、今から次の作戦の確認を行う、全員を集めろ」
「はっ」
オルタネイティヴ5特殊部隊【エグザイル】それが私の指揮する部隊で規模は中隊ほどの人数で殆どの人間がCIAの人間やオルタネイティヴ5に関る人間に腕の立つ衛士が集まる。
「全員集まったな、では次の我々の任務を言う、内容は極東の日本で行われる横浜ハイヴ攻略作戦、通称・明星作戦に参加する」
「隊長なぜ俺達がハイヴ攻略作戦に参加するのですか?」
「我々はその作戦で使用される新型兵器・G弾の実戦運用テスト及び観測、そしてオルタネイティヴ4の最高責任者である香月博士の直属の部隊A-01の監視を行う」
『了解』
そのまま解散しようとするが、一人の部下が
「そう言えば隊長、極東には凄腕の衛士がそれなりに居るんですよね?」
「そうだ、斯衛の人間などは腕の立つものが多いと聞く、それにA-01の隊長の草薙という男もかなりの実力者だとの話だ」
「へえ~、そいつは隊長にとっても楽しみなんでしょうね」
「楽しみ?」
「だって隊長、顔がにやけてますよ」
その言葉に部下全員が頷く、なるほど確かに楽しみなんだろう、強い衛士と会えることが…それに何故かいい予感がする。
1999年8月5日
『戦術機部隊は発進せよ』
「『了解』」
遂に始まった明星作戦、宇宙の軌道爆撃艦隊の爆撃に始まり、各艦隊からのAL弾による砲撃など、今作戦はかなりの大規模なモノだ。
戦術機輸送艦から発進し、そのまま他の部隊に混じって進軍する。
陸に上がりBETAと対峙する。
突撃級がバカ正直に突っ込んでくるがそれをいつも道理にかわし背後の柔らかい臀部を36mmで撃つ、更に迫ってきた戦車級をまた36mmで撃ち抜く、そしてやって来た要撃級には両腕に持つ突撃砲に付いているバヨネット(銃剣)で刺しそこから36mmを撃つ。
部下達と共に暫くBETAの相手をしていると、色鮮やかな戦術機群がBETAと戦ってるところを確認した。
「あれが斯衛か」
『あれがサムライってヤツですか』
部下の一人がそう言うがその表現は間違っていない、あの集団は間違いなくサムライと呼ぶに相応しい、どの部隊の殆どが装備している突撃砲などと共にその手には長刀が握られ、その刃でBETAを斬殺していく。
特に特徴的なのが赤い機体でその手には戦術機程の大きさがある巨大な長刀が握られていた、各資料で調べたが恐らくあれが紅蓮醍三郎の機体。
赤い戦術機は巨大な長刀で多くのBETAを倒していく、その様はまさに一騎当千の名に恥じぬものだ。
更に別の方角では何かが光っているのが見えた。
最大望遠で確認してみると……なんだあの機体は?
日本が開発した第三世代機のType-94と一機のその改良型に混じって一機だけ戦術機よりも一回り位小型の戦術機が居た。
恐らくあれがA-01、極東国連軍の戦術機は蒼穹のカラーで一個部隊だけType-94が配備されていると聞いたことがある。大抵の国連軍機はF-4ファントムやF-15系統が使用されている、今回作戦に参加している国連軍機の殆どはそれらの機体だ。
しかしあの機体は何だ?
そう考えている内にHQから通信が入った。内容は直に中央戦線から離脱しろとの事
「どういうことだ、G弾の投下はまだだった筈だ」
『隊長これは…』
「分からん、CPこれはどういうことだ」
こちら側のCPに理由を問い詰めたところ
『現在こちらも確認中、しばしまて』
ちっ、使えない
「仕方ない後退するぞ」
『良いんですか隊長?』
「知らん、だが何かあるはずだ」
『了解』
全軍が一旦後退すると光線級が何故か上空にレーザーを放つ
「なんだ?」
上空を確認すると一機の戦術機が降下している、そして何故かレーザーはその機体の前で掻き消えた、更に六機の戦術機が上空から飛来してきた。
そしてその部隊は大量のミサイルを降らせてきた、光線級は先にレーザーを撃った為ミサイルの迎撃ができない、更に先程光線級に狙われた蒼い機体が降下してきてまたミサイルを撃つ、一目見て分かったあのミサイルが本命だと
蒼い機体が放ったミサイルが命中、そして破壊の力を振るう
幾つモノ爆発が戦場に居るBETAを飲み込み消し去っていく
『なんだ…アレ……』
七機の戦術機は地上に降り立ち眼前の戦場を見渡す。
地中からは新しいBETAが大量に現れ迫る。
降下してきた内の三機が飛び出す、内二機は背部から跳躍ユニット以上の炎を上げBETAに突撃していく
私はそれをただ見ているだけだった、いやこの戦場に居る誰もがそうだろう。
更に他の戦術機も攻撃を開始する。
それは圧倒的な暴力であり究極とも取れる破壊の力、何時しか私はそれを見ている内に頬が染まり顔は恍惚していた。
「ふふ、くっははははははハハハはっはははハアハハハハハハハハハアッハハハハハハははははハッハハハハはっははっははっははははっハハハハハはっはははハッハハハハハハハ八ははは」
『隊長……』
素晴らしいすばらしいスバらしいスバラシイ
「惚れたよ」
『・……』
あの機体!! あの操縦技量!! 何もかもが違う!! 既存の戦術機の性能や衛士の力量全てが他とは違う程の別格だ!!
「CP彼等は?」
『あっはい、いえそれがなにも情報がありません』
「そうか」
だがそんな事はどうでもいい、と、そこで通信が入る。
『貴君等は何をしている。貴君等は何の為にこの戦場に来た。彼等ばかりに戦わせてどうする!』
するとその声を聞いた多くの部隊が戦闘を再開する。
だがやはりそんな事はどうでも良かった、今の私は彼等に釘付けだった。
暫くの間私は彼等の戦いに見入り、部下たちは命令が無いため当初の作戦どうりA-01の監視をしている。
そして暫くして通信が入った。
『アレス大尉、まもなくG弾が投下されますので至急安全圏まで退避を』
!?ッとそうだったな私の当初の任務はG弾の観測とかだったな、つい彼等に見入ってしまっていた。
「りょうか……!!」
『隊長!!』
クッ次は何だ!
『隊長ッ地下からBETAの反応がッ』
「なにッ」
『エグザイル、直に帰還せよ』
仕方ない離脱するか
「全機離脱す…!?」
『隊長どうしたんですかッ?』
『急がないとG弾が落ちてきちまう』
更に地中から巨大なBETAが出て来た、今までに見たことも無いタイプだ。
彼等の方を見るとまだ退避していなかった、いやまだBETAと戦っていた、まさかG弾が落ちるということを知らないのか?
『隊長!?』
部下の声を無視し彼等の元に向かう
彼等の元に来た私は即座に警告した。
「急いで後退しろッ、まもなくG弾が投下されるぞ!」
だが向こうはとんでもないことを言ってきた。
『投下までの時間は?』
「何?」
『G弾投下までの時間を聞いているんだ』
「あと13分だ」
『撃破は無理か…仕方ないあのでか物はG弾で仕留めるか』
そんなことを言ってきたが正気か!? 向こうはなにやら話し込んでいるが
『ああ分かったよ、エヴァンジェさん、G弾を落してアレを倒します』
『そうか、分かった』
なッ!?
「本気かッ!? お前達ッ」
『悪いが本気だ』
そういって向こうは作戦を話し始めた。
私は直にCPに通信を繋いだ
『アレス大尉、急いで退避してください』
「至急あの未確認種のBETAに支援砲撃を行ってくれ」
『なっなにを言って』
「早くしろッ」
『りょ、了解しました』
もう一度彼等に通信する
「支援砲撃の要請をしておいた、それとBETAは幾らか此方で引き受けよう」
跳躍ユニットを吹かしそのまま部下たちの下に戻る。
『隊長』
「これより彼等の援護をする」
『なッ、本気ですかい隊長!』
「ああ、行くぞ」
『ちょっと待ってくださいよ隊長ー』
『畜生行くぞッ』
彼を死なせたくは無かった、それは正義感だとかそんなのじゃない彼等と戦いたいのだ私は…
そのまま幾らかBETAの相手をしながら彼等を見る。
『とんでもないっすね』
「ああ」
蒼い機体と白い機体が巨大BETAを惹き付け攻撃し後方からは他の5機が攻撃を行いBETAを相手する。
先にも彼等の内の一人が言ったとおり時間があればあの巨大なBETAすらも倒せるかもしれない。
そして時間が残り8分になった
「さすがにこれ以上は無理か…撤退するぞ!」
『了解』
この場を彼等に任してG弾の被害範囲から離脱する。
そこから6分後、白い機体が一つのビルに隠れる姿が視界に入った。
それが見えた直後、跳躍ユニットを最大に吹かし、その機体に突撃する。
G弾が落ちて爆発による爆風が機体の制御を奪うが構わず接近する。
そして爆発と爆風が収まった直後、背部のパイロンから長刀を抜く、相手はそれに気づき手に持っていた銃器のような物を手放し腰から長刀のような物を抜く、途端、刃が合わさり摩擦による火花が散る。
そして向こうから通信が入る。
『何の積もりだ!』
そう言われた私の答えは
「私はずっと求めていたッ、君達のような存在を!」
『何を言って…ッ』
「君達のあの技量! そしてその機体の力! どれを取っても素晴しい! 私は心の底から君達に惚れたよッ!」
だがそれを言った次の瞬間YF-23の長刀が真ん中から折れた。
「!?」
これは!
「なッ!!」
『おおぉぉッッ!』
「クッ」
その叫びが聞こえた瞬間、次の長刀を引き抜くが打ち合わされた瞬間、再び長刀が折れる。
すぐさま折れた長刀を破棄して――突撃砲を抜く――撃つが向こうはそれを避ける――機体の全高が低い分被弾しにくい――それならばと接近して突撃砲のバヨネットで突きを放つ――が避けられる――あちらは手放した銃器を拾う――砲身に光が集まる――危険と判断して直に36mmを撃ちながら回避行動に移るが青い光はYF-23の左腕を吹き飛ばす。
「クッ、これは……まさかここまでとわな、素晴しい、まさかブラックウィドウⅡがこうまで歯が立たないとわな」
私がここまで押されたのは初めてだ、いや、恐らくこのまま続けても死ぬのは私のほうだ。
「ふむ、すまないが名前を教えてくれないか」
『は?』
向こうが困惑した声を発するが、まあそうだろうな普通は行き成り攻撃してきた相手に名前を名乗れと言われれば誰であれ困惑するか、すると向こうがたどたどしくはあるが名を名乗った。
『…白銀武』
「白銀武か憶えたぞ、その名前!」
『こっちが名乗ったんだからそっちも名乗ったらどうだ』
そうだったなあちらが名乗ったのに此方が名乗らないのは紳士にあるまじき行為だ。
「おっと、これは失礼、私は米軍オルタネイティヴ5派特殊部隊【エグザイル】の隊長を務めているアレス=F=カーライル大尉だ、この名をよく憶えていてくれよ白銀武!」
白銀武という男にそう言って私は帰還した。
ああ、このBETA大戦は面白くなるかもしれない、いや絶対面白くなる。
彼等と次に戦場で会うのが楽しみだ、だが今の機体では彼等に勝てない。
「さてどうしたものか、まあこれから考えていこう……クククッフハハハハハハハッ」
後書き
第二章外伝終了
さて、なんだこの狂人は(爆
当初のプロットには考えていませんでしたが、やはりどの世界にも一人くらいこんなイカレタ人が居てもいいかなと思い作り出しました。
ちなみにアレスの元ネタは有名な「阿修羅をも凌駕する」の人です。
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