今、この瞬間は・・・

 

その場にいた誰もが言葉を無くし今ある光景が現実ではなく夢ではないのかと思った。

HQからの行き成りの後退命令、空から高速で飛んできた謎の戦術機部隊、それらが放った大量のミサイル、そしてあの破壊力、何から何まで有り得なく異常だった。

「クッ、やってくれるじゃないあいつ等ッ!」

香月博士も流石にこのようなことになるとは思いも付かず、思わず悪態を付く。

「……香月博士…これは……彼等は!?」

小沢提督も言葉を無くし呆然としている。

いや、それはこの場に、この戦場にいる誰もがそうだろう。

「それは…私にも、正直今の現状に着いて行けません…」

艦橋にいる全員が驚いた。あの極東の魔女と謳われる香月夕呼ですらこの状況に着いて行けないと

 

『紅蓮大将……アレは?』

「むう……」

流石に紅蓮もこの状況に着いて行けなかった。

精鋭と呼ばれる斯衛も今の状況に困惑していた。

戦術機よりも小型の機体それらが今目の前に立っている。

 

「少佐…あれって」

『ああ、鳴海の機体と似ている。恐らくアレが博士の雇った傭兵なのだろうが…』

ブリーフィングで聞かされてはいたが、全く理解できなかった。

今、自分達の目の前に立つ部隊に…

その内の三機が飛び出す。

そして、白い機体と蒼い機体の背部から莫大な炎を吹き出し、BETAに突撃する。

それは光輝く翼のようにも見える。

その二機に続いて紫色の機体が緑の炎を上げて追従する。

「オーバードブーストッ!」

『あれが』

孝之は見たことが有る。いや、使ったことがあるその機能の名前を言った。

轟音がまた一つ、今度は何だとそっちを見ると四足と海神のような重装甲の機体が足を広げ背中の武器を展開する。

そして、四足の機体が発射、続いて重装甲の機体が発射

「冗談だろ…」

『有り得ない…』

『確かに非常識だな…』

四足からは極太の青い光線が一本、だがその一撃は多くのBETAを消し飛ばす。

重装甲の機体からは紫色の光線と青色の光弾、左手に持つ銃器の弾、いや砲弾が複数飛んでいく、それらもまたBETAを消し飛ばす。

さらに今度は、青い鳥のような足の機体と漆黒の機体が背部から青い炎を上げ前進する。

青い鳥のような足の機体と漆黒の機体も背中のモノを展開する。

青い鳥のような足の機体の背中の武器からはオレンジ色の光線が一本、さらに肩の辺りから二つの何かが飛び出し攻撃を行う。

漆黒の機体の方も更に異常だった。背中と左腕の筒のような物から轟音

「おいおい、あの黒ヤツなんつうモン装備してんだよッ」

『大口径榴弾砲でしょうか少佐? …』

『ああ、恐らくな、それにしてもあいつ等…一機一機が戦艦並の攻撃力だな』

『確かに非常識だな』

野太い声が聞こえ、その声が聞こえた方に向くと大隊規模の戦術機が傍に来た。

『貴官等はあれを知っているようだな』

『その声は斯衛の第一大隊の将、紅蓮醍三郎大将と見受ける』

『いかにも』

その名を聞いて孝之と慎二は驚いた。まさか極東でも最強と謳われる人物と出会えたことに

『して、貴官等はあれに付いて何か知っておるのか?』

『一応は、私も詳しくは知りませんが香月博士が雇った傭兵達としか』

『そうか』

 

『攻撃を開始する』

フェイトのその一言を聞いたジャックも行動を開始する。

フェイトは両肩のハイ・レーザーキャノンを構える。砲身に莫大なエネルギーが集まり、そのエネルギーの塊を発射する。

先ほどのミサイルによって地表に出ていたBETAの大半は殲滅したが再び地面から大量に出てきた。それらをまた刈り取っていく

アラエルの隣に並んだフォックスアイも攻撃を開始

左肩のハイ・レーザーキャノンを展開し両腕の武器を構え発射する。

アラエルの攻撃に比べフォックスアイの攻撃はもはや暴虐とも言えるほど強烈だった。

ジャックの普段の戦い方は両手の武器を併用しての戦い方であるが、レイヴンズネストを作り、BETAと戦うためにポジションを決めた時彼は自らの戦い方を変えた。

彼も他のレイヴンと同じで本来は複数の僚機と共同しての戦いなどした事が無かった。

そんな彼が世界の隠された真実を知り、彼は自ら道化を演じた。武装組織バーテックスを組織し、目的の為とは言え多くの人間を欺き裏切りその果てに目的を果たさんとした。

だがジャックは思った。「自分は何処までもレイヴンで居たい」と、だからその想いを果たした。

本来ならインターネサインを破壊した後、逃げても良かった筈、だが逃げなかった。

それは一重に彼の戦士としての気質が主張したから、人々に憎まれるのならば最後に一人の戦士としてレイヴンとして戦い死にたかった。

そして戦った。彼と、ドミナントの可能性を持つ彼と、そこで満足できれば良かったかも知れない

だが、久しぶりの全力での戦いでジャックはただ満足できなかった。

もっと昔のようにレイヴンとして何処までも戦場で戦いたい思ってしまった。

だから今、この世界に来れた事にジャックは感謝している。

「私に戦場をくれた事を感謝する」

その心の内は誰よりも燃えているのかもしれない。

でもそれはジャックだけではなかった。

『ジャック、それは私も同じだ』

『そうだ、お前だけではない』

「そうだな、では今この瞬間を皆で味わおう」

それに応えたのはエヴァンジェとジナイーダ

エヴァンジェとジナイーダは自分を倒した男を超える。その想いが強かった。たとえ今度は味方でもやはり彼等も生粋の戦士だった。

自分を負かした存在を更に超える。誰よりも強くある。という思いがそれぞれにある。

エヴァンジェは同じ時期にレイヴンになったフェイトに負けた時、自分では最強という存在に成れないのかと思った。

けど特攻兵器の襲来でフェイトが死んだという報告を聞いて今度は自分こそが最強だと夢想した。だが、その考えはその男の弟であるゼロに打ち破られた。

されどエヴァンジェは誰よりも気高かった。この世界に来て再び出合ったかつての知り合い、そして自分を倒した男に、だからエヴァンジェは心に決めた以前は負けたが今度は必ず勝つと、だから自分が勝つまで同じ高みに立つまで負けることは許さないと

ジナイーダは自分を倒した男を認めた。真に最強であると、

名に、名声等に拘らないがそれでも彼の存在を尊敬した。

だからこそこの世界に来て彼と再会したとき次は勝つと心に誓った。

自分と同じような存在の彼をジナイーダは戦場で誰よりも知っているし誰よりも信頼している。

そしてこの男もまた

『そうだな…今この瞬間、戦場ではッ、力が、想いが全てだッ!』

以前ジノーヴィーはフェイトに言った。力が全てだと、だが力だけではどうしようにもならない事がある。

想いは時にあらゆるモノを凌駕するときがある。

それをジノーヴィーは知っている。

だからこそ誰もが戦う、『何』かを護るために、守るために、それはどの世界でも変わらない戦う者の共通した想い

『この程度ッあの時に比べればどうって事は無い!』

『そう、誰もが生きるために戦っている!!』

『てめえらに負けねえッ、未来を掴むのは俺達だッ!』

フェイトは憶えている。いや、忘れない、あの悪夢のような光景を

BETA以上にとどまる事を知らないあの無数の特攻兵器の雨を

ゼロは記憶している。あの一日を、多くの人が死に、生きようと足掻いたあの怒涛の一日を

あの滅びに向かっていた世界に生きていた人達は誰もが生きようとあらゆるものと戦っていた。

武は知っている。

かつて他の『シロガネ』たちは未来を護ろうと必死に戦ってきた。だが理不尽にそれらは奪われ蹂躙された。

唯一救われた世界でも、それは沢山の犠牲によるものだった。

自分が欲しかったのはそんな未来じゃない、もっと明るい、優しく楽しい未来を

彼等は誰よりも生きることに願いを目的を果たすことに貪欲だった。

その想いが力となり、それを阻もうとする全ての敵を滅する。

 

「すごい…BETAの損耗率が飛躍的に上がっています。尚も止まりません!」

オペレータの声は驚愕し弾んでいる。

「見や誤っていたのはアタシの方ね…」

「博士?」

「何でもないわピアティフ、それよりも他の部隊は何しているの」

「はっ、それが彼等の戦いに……」

ピアティフの言うことも尤もだ、あれだけのを見せ付けられて呆然とするなと言うのが無理な話だ。

「そう…ピアティフ、直にラダビノッド准将に通信を繋げて」

「はっ」

 

「すげぇ」

もはや前線にいる衛士の殆どは目の前の光景に見入っている。

だが無理も無い、彼等の戦いは口にできないほど凄まじいものであった。

四足が放つ青い光はBETAを大量に吹き飛ばし、的確に右手の武器で光線級の照射膜を打ち抜き、接近して来た小型種は左手の火炎放射器で焼き払う。

重装甲の機体は先程と変わらず両手の武器と左背の武器で圧倒的な制圧力を見せる。近づいてきたBETAは右肩の散弾砲で纏めて撃ち抜く。

青い鳥のような足の機体は左背からオレンジ色の光を放ち四足や重装甲ではないにせよ複数のBETAを吹き飛ばし、右手の武器から高速の弾を撃ち要撃級を倒す。さらに右手に長刀のような刀を持ち左手に青白く光り輝く剣のような武器を振るう。

漆黒の機体は背中にある二つの榴弾砲と左手の榴弾砲を巧みに使いその破壊力は多くのBETAを撃破する。さらに空中に飛び上がり右手に持つ銃から紫色の光を連続で撃つ、光線級のレーザは肩に付いているユニットから炎を出し回避するなど技量は凄まじい。

紫色の機体は右手の三又に分かれた銃からは青い光が飛び出し地面に着弾するまで止まらない、光に貫かれたBETAはその身を引き裂かれる、更に左背に折りたたまれているモノからは緑色の光が打ち出され多くのBETAを吹き飛ばす。右背と両肩からはミサイルが撃ち出されるその内の右背から撃ちだされたミサイルはある程度進むと破裂しそこから下にいたBETAを倒す。左手の銃からは散弾が放たれ、小型種は複数纏めて撃ち抜かれ要撃級などは至近距離で撃たれ地に沈む。

蒼い機体は両手の銃で的確に周りにいるBETAを撃ち抜き、時には36mmのような弾と散弾を巧みに使いBETAを下していく、なにより、背中にあるまるで天使の羽のように広がっているモノを前面に展開したときに放たれる八本の光は多くのBETAを薙ぎ払っていく。

白い機体は他のに比べ特筆すべき動きではないものの右手の銃でBETAを次々と沈めて行き、要塞級の上に乗り肩から放たれる焼夷弾で焼き尽くす、そして青い鳥のような足の機体と同じように両手に刀と青白く輝く剣を使いBETAを切り裂いていく、その姿はまさに修羅の如し。

『しかし、こいつら一機一機に光学兵器を装備してやがる』

『なッ、少佐本当ですか!』

「よく見ろよ慎二、光に撃たれたBETAを」

『全部熱でやられた跡ですね』

答えたのは慎二じゃなく斯衛の青の試作機『Type-00』に乗った刃

『それに、紫の戦術機が右手に持つ武器はレールガンだな』

『本当ですか紅蓮大将ッ』

『ですがあれはまだ実用段階ではない筈、現に帝国の技術廠ではまだ実験段階のはず』

『さあ、それはワシにも解らん…』

全員が顔を顰めて話す。

と、そこに通信が入る。

『貴君等は何をしている。貴君等は何の為にこの戦場に来た。彼等ばかりに戦わせてどうする!』

それは今作戦の指揮を取るパウル・ラダビノッド准将の声だった。

『と、そうだったな、俺達はなにを呆然としているのやら、貴様等ッ傭兵ばかりに戦わせるな!これはあいつ等だけの戦いじゃないのだからな』

『了解』

『全軍ッ、進撃再開ッ』

『承知ッ』

その声を聞いた全軍は再び戦闘を再開する。

 

『香月博士、申し訳ない』

「いえ、あの状況では仕方ありませんし、私もまだ困惑しています」

『そうかね』

「はい」

先程、ラダビノッドに全軍に攻撃を再開させるように通信を行ったが、それでも現状を把握しきれないでいた。

「化け物ね…」

 

 

 

後書き

第二章第四羽終了

今回も長くなりました。レイヴン達は大暴れです。

そしてそれを指を銜えて見ている人達(違う

たぶん次にはG弾を落すはずです。

それとジャックの戦い方ですけど、簡単に言えばラストレイヴンのOPの四脚が行ったような右手と右肩の同時撃ちみたいなモンです。

考え方としては、全武器を一斉に展開することはできるけど操縦がより複雑なのでブースト中などはそういった行為はできないということです。でも移動せずに居れば固定砲台のようにできる。

ということです。

あと文中の背中武器とか肩武器ってごちゃっとしているところがありますが、あれはレイヴン達と衛士の感じ方の違いです。

レイヴン達にとっては背中に当たる武器のことは肩武器と言われますから。

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