2002年1月2日、横浜基地前の桜並木
白銀武はこの世界に最後の別れを告げるためにそこにいた。
人類の命運を賭した『桜花作戦』は、多くの犠牲を払いながらも、その目的を達することができた。
オリジナルハイブ最奥にて「あ号標的」を撃破。くわえて当該標的より得た情報は人類に確かな未来をもたらすだけの価値を持っていた。夕呼先生の言葉を借りれば、10年以内に確実に滅亡していたであろう人類が、今後30年間は存続できるのである。
「あ号標的」がいなくなったといっても、いまだBETAの脅威はのこる。人類同士の確執だって、解決できたわけじゃない。それでも人類は、BETAによる不可避の滅亡という最悪の未来からは逃れられたのだ。
武は思う。数え切れない犠牲の上でようやくつかみ得たものは、それだけだったんだ、と。
『因果導体』としてループを繰り返す中、多くの人々に助けられた。多くのことを学んだ。そして、多くのものを失った。守れなかった仲間、守れなかった恋人、護れなかった未来。
そして、曖昧なものではあったが、そんな未来を見据えた上で、それを避けるために戦い抜いた今回の戦い。
握り締めた拳が小刻みに震える。
ふたたびめぐり合った仲間と、ようやく邂逅をはたした愛する少女。
<SIDE:武>
繰り返される希望と絶望の果てにようやくつかみ得たものは、これまでで最上の未来。それがどれだけつらくとも、どれだけ悲しくとも、きっとこれ以上はのぞめない、そんな結末。
「神宮寺軍曹、伊隅大尉、そしてみんな・・・オレがこうして生きていられるのもみんなのおかげだ・・・」
「あらためてお礼を言わせてくれ・・・ありがとう・・・」
「白銀・・・」
振り向くと、夕呼先生と霞がいた。
「―――というわけで、あんたたちが残してくれたXM3と理論、及び数式があれば後30年は
人類は持ち堪えられるわね」
「……あんたは、あんた達は間違いなく『この世界』を救ったのよ」
夕呼先生の言葉に、知らず、握り締めた拳の震えが止まった。
そう、自分は世界を救った。みんなは世界を救った。
それでも、救えなかった人がいた。守れなかった夢があった。果たせなかった約束があった。でもそれは、たとえこのループが何度繰り返されようと変わらない、変えられないこと。未来を知ったがゆえに乗り越えられた選択があったように、未来を知ったゆえに閉ざされてしまった選択もあるのだ。
そんな選択を繰り返し、それでも『この世界』を救えたのならば、それがきっと最上の未来(ハッピーエンド)。
「たぶん、もうすぐあなたも元の世界に戻れるはずよ・・・お別れね」
「そうですか。でもオレはみんなが守ったこの世界を守りたいですっ!」
「あんたを因果導体にしていた原因が取り除かれたのだから、確立時空世界の安定のためにもこのままでいることはできないわ・・・」
「ただ、あんたがそれを強く望んだならば、もしかすると・・・奇跡がおこるかもしれない」
「先生っ、本当ですかっ?」
「何度もループを繰り返し、世界間の移動までもできた、あんたなら・・・。でも、それはあんたにとっては険しい道じゃないの?」
「甘い考えですがオレに関わった人たち・・・神宮寺軍曹やA-01部隊のみんなを今度こそ助けたい…そして世界を守りたいんですよ」
「わかったわ。じゃあ、奇跡を信じて、この世界に戻ってくることを強く意識しなさい」
夕呼先生が、言っている途中でオレの周りから白い光が溢れてきた。
「パラポジトロニウム光よ、いよいよね。白銀っ、がんばりなさいよ」
「はいっ、先生ありがとうございました」
「白銀さん・・・」
霞がためらいがちに声をかけてくれた。
「霞も元気でな。みんなのことを誇らしく語り継いでくれよ」
霞は泣きながら応えてくれた。
「はいっ、私は決して白銀さんのことは忘れません。誰もが忘れても私は忘れません!」
「ありがとう霞。では、先生もお元気で・・・」
パラポジトロニウム光が視界を覆うように瞬きはじめる。夕呼先生の姿が、霞の姿が、靄の中に消えていく。
オレはこの世界のことを強く思った。この世界・・・そしてみんなのことを強く思い描いた。
その先に見えるのは、かつて当たり前のように享受していた平穏な日常だ。純夏がいて、冥夜がいて、委員長がいて、たまがいて、彩峰がいて、美琴がいて、柏木がいて、悠陽がいて……む、途中の人名にちょっと違和感があるが、まあ、そんな日々だ。おや、伊隅大尉や速瀬中尉、涼宮中尉の姿も見えるか? 波乱万乗、ジェットコースターみたいな、それでも限りなく平和な日々が待っている。
ああ、そうだ。きっとこれこそハッピーエンド。みんな無事で、世界も平和。どちらか一つしか選べない、そんな理由は見当たらない。そんな理屈は認めない。あっちの世界もこっちの世界も、そんなものは関係ない!
『因果導体』のしばりがないのなら、10月22日は通過点だ。すべての時を逆のぼり、悲劇そのものを巻き戻す。
そしてたどりついた先は、白銀武という存在の起源。『この世界』の始まりの場所・・・
そして・・・光は消え去り、その場には何も残っていなかった。
<?>
そこは何も無い空間だった。
「ここは?」
『よう』
「!?」
突前後ろから声を掛けられて振り返ってみれば其処には、無数の『シロガネタケル』がいた。
「俺・・・なのか」
『ああ、シロガネタケルという存在の一つだ』
その中の一人の『シロガネタケル』が答えた。
「それで、何で俺はここに来たんだ?」
純粋な疑問だが何故か武にはその答えが解っているような気がした。
『まあ、簡単に言えばお礼を言いに来たんだ』
その中の一人がまた答えた。
「別に俺自身なんだから礼なんていらないだろ、それに俺は結局みんなを助けれなかったんだから」
『確かにそうだがそれでもあの世界は救われたんだ。そう言わずに貰っておけよ』
「どーいたしまして」
「『くっ、あっははははははははははっ」』
そう言って全員の『シロガネタケル』が笑った。
「あーっで、それだけなのかそれともまだ他に何かあるのか?」
そう言うが武には何となく彼らが何を言いたいのか解る気がする。
『ああ、実はなもう一度あの世界にもっどてみないか?それも今度は俺たち全員の記憶をプラスに、そして取って置きをなっ』
ほらみろ・・・・・って!?
「マジか、ってそんな事したら大丈夫か『俺』の体?それに取って置きってなんだ?」
『そんなに焦るな、まず順番道理に説明する』
『まず記憶の受け渡しなんだが、たぶん問題ないはずだ』
「どこからそんな根拠が出てくるんだよ」
それは、誰だってそう思うだろう何せ自分だ
『なに、たぶん大丈夫。純夏が耐えれたんだ、なら俺が耐えれんでどうする』
「じゃあ、もう一つの取って置きってのなんだ?」
『そっちはな、実は純夏の奴が因果の向こうでスゲェ奴らを見つけたって言ってきたからな』
「スゲェ奴ら?」
『ああ、何でも傭兵らしいんだ』
傭兵?使えるのかそいつ等。
『まあ、純夏はアホだからな』
「そうだな、純夏はアホだからな」
みんなが「うんうん」と頷いていた。さすが俺。
「た~け~る~ちゃ~んの~」
「『!!!!?』」
全員の背中に冷たい汗が流れた。
「『純夏君落ち着きt』」
「あほーーー」
どりるみるきーぱんち
「『エアバーーグ』」
虚数空間にいる全員の『シロガネタケル』が吹き飛ばされそのまま意識を失った。
さあ、新しいそして最後の物語を始めよう
後書き
プロローグ「武」が終了しました。
最初の因果から開放されるところは他の方々が書かれた所を参考にしました。パクリなんて言わないでください。マジで
とりあえず、これから長い間よろしくお願いします。
ちょっと改良
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